前回まで:
埼玉県W市に来た目的のひとつが「ドク塾」だ。
ランニングに関して独自の研究・理論を構築している、ドクによる直接指導。
ドクの、ランニングフォームに対する研究熱たるや!
現在のドクの、ランニング指導のノウハウはすでに授業料がとれるレベルだ。
僕自身は心臓手術あけ、2日前にやっと主治医から軽度の運動の許可がでたばかり。
しかも、前日の疲れで早朝、やや血圧に乱れがあったため、断腸の思いでドク塾を休んだ。
早朝6:30。やる気マンマンで現れたランニングウエアの科学者は、お方さまを連れて、
W市の公園へと走り去っていくのであった…
▼朝もやの中、消えていく2人…
約2時間のドク塾後、帰ってきたお方さま。
ドクの撮影による、ドク塾「後」のお方さまのフォームを見て、僕は心底驚いた!
ドク塾「前」のお方さまフォームは、「ティラノ走り」と呼ばれ、ティラノサウルスのような手の振り方で、さらに、激しく上下に振動しながら走る。僕がずっと矯正しようとしていたが、まったく治らなかった、この「ティラノ走り」が…。
ドク塾後の動画を見ると、なんと劇的に治っている!それどころか、「美しい」といってもいいくらいの、スムースなフォームになっている!!
もうマジびっくり!超ビックリ!!
▼これがドク塾「前」のお方さま。上下のブレや、ティラノっぽい手や、ツッコミどころ満載。
▼そしてこれがドク塾後。スムースな走りに驚愕せよ!
「ドクな、『違う!脚を引き上げる筋肉は腓骨筋じゃない!前後の大腿筋を!』て言うねん!なんで、見ただけで、腓骨筋を使ってるかわかるんやろ?!」
お方さまは上級シューフィッターなので、脚の筋肉には詳しいから、こんな会話が成立するのだが、とにかく走っているランナーがどの筋肉で走っているか、見ただけで瞬時に解り、それを矯正させる方法を伝授できるのだ。
もう完全に、プロのランニングコーチだ。
その他、手製のチューブゴムにより、極めて複雑な手法で上体を矯正したり、片足を吊り上げて踵の位置を矯正したり。
疲れ果てた練習後、さらにトラックを走り公園を走り、休むことを許されず。
これぞドク塾、プロのコーチングとスパルタ!!
まさにランニング界のライザップ!!
たった2時間の練習で、お方さまのフォームが劇的に美しくなった!!
ちょっと興奮気味に朝食をぱくつくお方さまに対し、前夜あまり眠れず、やや体調不良だった僕は、次の約束・「2時に目黒」まで、どこかで仮眠をとりたいと思った。
スーパー銭湯ならば仮眠室があるのでは、とお方さまのグッドアイディア。調べるとクルマで10分の距離にスーパー銭湯。
朝練で汗をかいたお方さまは入浴し、僕は仮眠室で仮眠。
2時間後…。
仮眠で回復した僕が待合所に行くと、お方さまが…。
何やら様子が変だ。
こちらに背を向けて、腰をかがめ、猫背になってお腹の前で何やらモゾモゾしている。
「どうしたん?」声をかける。
顔を上げた表情は、必死の形相がみなぎっていた。
「なんか、iPhoneがおかしいねん!!」
聞けば、充電口に異物が詰まっていたらしく、それに気づかず、充電しようとモバイルバッテリーに繋いだケーブルの先端を、強引に押し込んだがために、その異物が充電口の奥深くまで侵入してしまい、充電コネクト部の奥深くでガチガチにかたまってしまった様である。
▼ポケットのティッシュくずが、iPhoneをポケットに入れた際に充電口に侵入、それに気づかずにケーブル先端をねじ込んだため、ティッシュくずが奥の奥でガチガチに固まってしまった。
どこかで手に入れた爪楊枝を充電口にねじ込み、ホジホジ、ホジホジ、と異物を取り除いているのだが、よほど強い力でねじ込んだと見え、異物はかなりガッチリとコネクタの最深部でへばりつき、爪楊枝などでは全く取り除けなかった。
「ボーッと見とかんと!はよ、受付に行って、掃除機かりてきてや!」
お方さまのゲキが飛ぶ。
掃除機なんか何に使うのだろう…と思いつつも、言われた通り、僕はスーパー銭湯の受付の女性に、事情を説明した。
「いますぐ掃除機もってきます!」受付の女の子はすぐに対応してくれた。
お方さまが爪楊枝で作業をする場所へ戻る。「いまもってきてくれるから」
爪楊枝の手を止めず、熟練職人のごとく、無言でうなずくお方さま。
掃除機が来た!
掃除機の口は直径約4センチだ。それに対し、iPhoneの充電口の直径は約8ミリ。
掃除機の口を直接あてても、ほとんどスカスカで役に立たない。なぜ掃除機を所望したのだ?!いったいどのようにして、掃除機でこの問題をクリアする気なのだ?!きっと、常人には思いつかないアイデアがあるんだ!
しかし!アホはどこまでもアホだった!
ただ単に、掃除機の口を、直接、iPhoneの充電口に当てるお方さま!!
スカー!!
スカー!!
スカー!!
スカー!!
「やっぱりアカンかっ?!」
そらアカンやろ?!
アホかっ?!
ガックリと肩を落とすお方さま…。
アホすぎる…。
アホすぎる失敗と、アホすぎる解決案…。
でも…。
旅先でケータイが壊れるほど不安なことはない。肩を落とし悲嘆に暮れるお方さまを見ながら僕は思った。
アホだ。アホだが、可哀想だ。オレが解決してやるしかない。
僕自身のiPhoneで、「iPhone 修理 W市」で検索すると、W市駅前のiPhone修理屋さんがヒット!
そこにTELし、事情を説明。修理屋さんの見解として、修理方法は2種類。
①充電口を清掃し、異物を取り除く
② ①が不可の場合、充電口部分の部品交換。
実は、iPhoneでヒットしたW市駅前店は少し前に閉鎖されている。しかし、新宿にある本店なら部品もスタッフも揃っているので、①②どちらでも対応可能、作業時間も20分。
①なら4800円。②なら7800円。
背に腹はかえられぬ、クルマを預け、電車ですぐに新宿へと向かうのであった。
お方さまのiPhoneは5S、そろそろ買い替えようと思っていたが、この状況は仕方ない。
新宿三丁目駅前のiPhone修理屋さんへ行き、まつこと20分。
みごと!お方さまのiPhoneは復活!充電可能な状態に戻った!!
やっとお方さまに笑顔が戻った^_^
ゴメンな、ゴメンな、と謝るお方さま。
余計な出費かも知れない。が、この失敗をしていたのは僕かも知れない。誰にでも起こりうる失敗だ。
「気にせんでええよ!治ってよかった!」
メガシティー・新宿に降り立ちながら、我々は駅前の雑居ビルの一室に寄っただけで再び電車に飛び乗り、旧友・ナオミ・ミカミとの待ち合わせ場所である
へと急いだ。
(旅日記・2日目 後編、に続く)