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「IT/イット "それ"が見えたら、終わり。」感想ネタバレあり!!「スタンド・バイ・ミー」+「ミスト」+「シャイニング」友情とバケモノとショッキングが混在する、極上のホラー映画。

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傑作キング・ホラーの誕生

 

まず最初に申し上げますと、本作はホラー映画として傑作と言っていいと思います。

 

あえて「ホラー」とジャンル分けします。そうでなければ、ホラーに弱い人が本作を見た場合、怖くて卒倒してしまうかもしれないからです。

 

しかし、単純に「ホラー」と一言で片付けられない奥深さが、本作にはあります。

 

そう、キングの小説は全てそうなのです。単なる恐怖だけではない。

 

スティーブン・キングが登場するまで、ホラー小説とは一部の例外を除き、ポルノ小説と同じく、人間の原始的感情に訴えるだけの、取るに足らないジャンルだと見下されていました。

 

しかしキングはホラー世界に人間の愛を持ち込み、愛の力で超常的恐怖を乗り越える人々の姿を感動的に描きました。

 

そうしてホラーの地位を確固たるものにしたキング。彼のホラーはすべからく、人々の愛に満ちた作品なのです。

 

しかし映像化する際に、そのあたりをうまく表現できた作品は少ない。

 

特にキューブリックの「シャイニング」は、ホラー映画としては一級品ながら、妻と息子を救おうとする父の愛が全く描かれてなかったのでキングが激怒したことは有名です。

 

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本作は、ホラーとして一級品ながら、少年の友情、甘い初恋など人間の美しい側面も丁寧に描き、また、肉親による性的虐待などリアルな恐怖も描き、さらに超常的怪物による恐怖、と、あらゆる側面からキング作品の持つクオリティを十分に映像化しています。

 

キング最高傑作「IT」、映像化が難しかった理由

 

スティーブン・キングの数ある長編小説の中で、ナンバー1は何か、とはよく話題になる問いです。

 

日本のファンの間では、「ザ・スタンド」と言う、ウイルスで人類の99パーセントが死滅後の、神と悪魔の戦い描く作品が選ばれるのですが。

 

ザ・スタンド(1) (文春文庫)

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アメリカやヨーロッパでベスト・オブ・スティーブン・キングといえばこの「IT」が選ばれます。

 

まさにキングの最高傑作の1つ、「IT」。

 

 

 

しかしこの作品の世界は極めて複雑で、映像化には向いていません。

 

小説「IT」の複雑な世界

 

もうすっかりオッサンになってしまった7人の大人たち。かつて彼らは全員、人知れず悪魔から街を守りました。

 

しかし、彼らには27年前のその日の記憶がほとんどありません。悪魔が彼らの頭からその日の記憶を消しているのです。

 

その悪魔が27年ぶりに現れました。もう一度、悪魔を倒さなければならない。今度こそ完全に。

 

彼らは再び、故郷に戻って、悪魔と戦います。少年時代の彼らと27年後の彼らが交互に描かれ、同じ方法で悪魔を倒して行く様子が描かれていきます。

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しかし映画で2つの時代の物語を同時に描くことは、上映時間も長くなり、物語が複雑になり観客がついていけなくなる恐れがあります。

 

過去、テレビシリーズとして映像化されている

 

かつてテレビシリーズとしてこの「IT」はいちど映像化されています。

 

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ずいぶん前に見た記憶があります。テレビだと映画の2時間にこだわらず、長い尺で物語を描けます。

 

テレビシリーズとしては面白かったですが、クライマックスの悪魔との戦いは、やはりまだCG技術が発達していない時代の作品でしたので限界を感じました。

 

本作が成功した理由

 

そこで本作は、時代を1989年に限定し、少年時代の彼らのみを描くと言う形式をとりました。

 

そうすることで、本作は恐怖映画と言うだけでなく、少年たちの友情と成長を描いたロードムービー的な要素も加わり、単なるホラー映画の枠を超えた、より深い味わいのある作品になりました。

 

さらに本作はピエロが怪物に変貌する様子をCGで巧みに映像化し、悪夢のような恐怖を見事に演出しています。

 

友情と恐怖。この2つを見事に両立させたと言う意味で、本作は唯一無二のホラー映画と言えると思います。

 

似たシチュエーションを描いた作品で、「ドリームキャッチャー」と言う作品があり、これも映像化されてはいますが、あまりお勧めできる作品ではありませんでした。

 

ドリームキャッチャー [DVD]

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「スタンド・バイ・ミー」の友情物語と、「ミスト」の化け物たちと、「シャイニング」のショッキングが合わさったような作品。

 

それが「IT/イット "それ"が見えたら、終わり。」です。

 

物語の最後で、「第1章終わり」のクレジットがあります。と言うことは、大人になった彼らを描く「第2章」が続編として公開されるのでしょう。

 

甘酸っぱい少年物語から、中年になってしまった彼らを第2章はどう描くのでしょう。

 

今からとても楽しみです!!

 

STORY

 

弟・ジョージの死

 

吃音癖のある少年・ビルは弟のジョージのために折り紙で船を作るが、自分は風邪で熱がある。雨の中、外に遊びに出たのはジョージだけ。紙の船はスピードを上げて側溝を流れていき、小さなジョージの足で追いつかない。

 

船は溝の穴の奥に入り込んでしまう。

 

ジョージが取り出せないかと穴の奥を覗くと…。

 

穴の奥から、ピエロが船を手にしてこちらを覗き返していた。

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ジョージが穴に手を入れると…。

 

ピエロはバケモノのような歯でジョージの右腕を食いちぎり、穴の奥の奥まで、ジョージの体を引きずり込んだ。

 

ルーザーズクラブの7人

 

1年後。

 

ビルはユダヤ人のスタン、メガネのリッチー、ぜんそく持ちのエディ、とともに「ルーザーズ(負け犬)クラブ」なるチームを作っていた。いつも一緒にいて、いじめっ子から身を守っていたのだ。

 

いじめっ子の1人、ヘンリーは常軌を逸していた。デブのベンはヘンリーたちの標的になり、服を脱がされ、ナイフで腹に傷を入れられた。

 

必死に逃げたベンは、下水道を探検していたビルたちルーザーズクラブに助けられる。彼らはすぐにその場から立ち去ったのだが、ヘンリーのグループの1人・パトリックはベンが下水道の奥に逃げ込んだと思い、深追いをする。

 

そこはデリーの街に巣食う悪魔の巣窟であった。パトリックは引き摺り込まれ、2度と帰っては来なかった。

 

ベンの治療のため薬局に入ったビルたちはお金がないことに気づく。そこに、生理用品を買いに来たベバリーと出会う。いろんな男とキスをしている、と町中で噂になっている早熟な少女だ。

 

事情を聞いた彼女が薬局の店主の気を引いているうちに、ベンたちは薬をかっぱらう。べバリーは噂とは違う、優しい少女だった。

 

こうしてベンとベバリーも仲間に入った。

 

数日後、彼らはあの常軌を逸したいじめっ子・ヘンリーが黒人の少年を半殺しにしている現場に遭遇し、少年を助けるためヘンリーのグループに立ち向かい、勝利する。こうして黒人少年・マイクもルーザーズクラブの一員となった。

 

全員が恐怖体験を

 

ルーザーズクラブは全員が、超常的な恐怖体験をしていた。

 

ビルは死んだはずのジョージが現れ、追っていくとバケモノピエロに食い殺されそうに。

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ベバリーはバスルームの洗面台から大量の血液が逆流し、毛髪が触手のように巻きつき、洗面台の中に引きずり込まれそうに。

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スタンは壁の絵画に描かれた、曲がった顔をした女が絵から飛び出し、彼を食い殺しそうに。

 

ベンは図書館の奥の部屋で、大昔の爆発で死んだ頭部のない死体に追いかけられた。

 

マイクは鍵のかかった小屋の奥から無数の手が伸びてきて、鍵が外れた奥にはピエロがこちらを睨んでいた。

 

エディは町外れの廃屋の前で、身体中が腐った死体に追いかけられ、その庭でピエロを目撃した。

 

デリーに巣食う悪魔

 

本が好きなベンが調べたところ、このデリーの街の犯罪発生率が平均の6倍も高いこと、大量に子供が死ぬ事件が27年ごとに発生していること、などに気づく。

 

ビルの弟・ジョージ、ヘンリーのグループのパトリック、他に何人も、次々と失踪している。

 

今がその27年目なのだ。

 

悪魔との対決

 

エディが恐怖体験をした廃屋こそ、悪魔の住処であることを突き止めたビルたちは、街を悪魔から救い、ジョージを取り返すため、廃屋に乗り込む。

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しかし悪魔は巧みに彼らを1人、また1人、と引き離し、彼らの力を分散させる。

 

リッチーはそこで自分を探すビラを発見する。自分も失踪するのか?パニックに陥るリッチー。

 

エディは仲間と引き離され、2階から1階に転落する。

 

ピエロが大口を開けてエディを飲み込もうとする寸前、ビルとリッチーが彼を救出する。

 

ピエロは異形の姿でビルたちを襲う。

 

外にいたべバリーが鉄の棒でピエロを串刺しにしても、ピエロはさらに巨大化し彼らに襲いかかってくる。

 

しかしピエロも不死身ではなかった。少年たちの反撃で傷を負ったピエロは姿を消す。ビルはピエロが廃屋の奥にある井戸に姿を消すのを見届ける。

 

悪魔の罠

 

エディは腕を骨折していた。エディの母親は彼らとの絶交を宣言。

 

あまりの恐怖体験に、スタンも引きずり込んだビルをなじる。

 

べバリーだけ、この仲違いこそ悪魔の仕掛けた罠なのだ、と彼らを諭すが、耳を貸すものはいない。

 

ルーザーズクラブは解散してしまう。

 

悪魔の本領発揮

 

それから1ヶ月。

 

常軌を逸したいじめっ子・ヘンリーは父親からひどく叱られ、激しい憎悪を父に抱く。ちょうどその時、差出人不明の小包で、失くしたはずのナイフが届く。

 

テレビの登場人物が全員、「親父を殺せ、親父を殺せ」とヘンリーにけしかける。

 

ヘンリーは父親の頸動脈をナイフで深々と刺し、殺害する。

 

べバリーは逃げ込んだバスルームで父親から性的虐待を受けそうになり、鈍器で殴りつける。その直後、巨大なピエロが彼女を連れ去る。

 

胸騒ぎがしたビルがべバリーの家に行くと、頭から血を流している父親を発見するがべバリーはいない。バスルームの壁一面に、

 

「はむかう奴は殺す」

 

と大きく血文字で書かれていた。

 

ついに悪魔がべバリーをさらってしまった!!

 

ベバリーを救え!!

 

ビルは全員に電話をかけ、あの廃屋に集合する。エディでさえ、止める母親を振り切ってべバリー救出にやってきた。

 

ビルが最後にピエロを目撃した、廃屋の奥の井戸の中に全員で入る。

 

「べバリーが言っていた。1人じゃ勝てないが、皆で力を合わせればきっと勝てる」

 

皆でロープをつたい、井戸の横穴に入る。最後の1人、マイクが入ろうとした時…。

 

完全に悪魔に取り込まれてしまったヘンリーがマイクに襲いかかる。もはや理性のかけらもない。

 

マイクは必死に反撃し、ヘンリーは井戸の奥底へと落下して行った。

 

弟の姿を見つけるビル。1人でジョージを追って迷路のような下水の中を進むと…。

 

巨大な空間が広がっていた。そして、さらわれた子供達の亡骸が、宙に漂っていた。

 

べバリーはまだ手を伸ばせば届くくらいの位置を漂っている。

 

ジョージが泣きながら、ビルに訴える。「家に帰りたいよ。パパとママに会いたい」

 

ビルも泣きながら答える。「お前をずっと探していたんだ。家に連れて帰りたいよ」

 

泣きながら、ビルは銃をジョージのひたいに当てて、引き金を引く。「でもお前はジョージじゃない」

 

べバリーは他の仲間が救出するも、魂が抜けた状態だ。ベンはいても立ってもいられず彼女にキスをする。ベンはずっとべバリーが好きだったのだ。ベンの力でべバリーは正気を取り戻す。

 

頭に銃弾を食らったジョージは、あっという間にピエロの姿になる。ピエロはビルを捕まえ、他の子供達に言う。

 

「オレはこいつを食ったら27年、眠る。お前たちは家に帰って大人になればいい」

 

しかしピエロの目論見とは裏腹に、誰1人、ビルを見捨てるものはいなかった!!

 

全員でピエロに反撃を試みる。

 

激しい痛手を負ったピエロは、井戸の奥底へと消えて行くのであった…。

 

消える記憶

 

そして、さらに1ヶ月が過ぎた。

 

7人はとてつもない恐怖と戦いながら、悪魔から街を守った。しかし、なぜか彼らはそのことをほとんど覚えていなかった。

 

悪魔が彼らの頭から、あの日の記憶を消しているのだ。

 

27年後、再び悪魔は現れるだろう。

 

彼らは薄れゆく記憶の中、再び街に悪魔が現れたなら、またここに集まろう、と誓いを立てるのであった。