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心房細動を、ちゃんと治そう。心臓カテーテルアブレーション手術。入院日記・1日目 2016年9月12日月曜日

 

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【入院1日目】


14時までに入院手続きを終えてください、と病院に言われている。13時20分に家を出る。頭の中をほんの少しだけ、「また、この家に戻ってこれるのかな」などと縁起でもない考えがよぎる。頭を振って、そんなアホな考えを振り払う。


お方さまの運転で、八尾市立病院。家から15分。


受付の1番窓口で、簡単な書類を記入。同じような人たちが4〜5人いる。僕と同じように、不安そうな顔をしている。おそらく僕と同じく、今日から入院する人たちだ。


2時きっかりに、小柄な、若い看護婦さんが現れた。


「7階西病棟担当の梅野と言います。お待たせしました。病室の方にご案内いたします」


4〜5人のおっさんたちが、その若くて美人の梅野さんの後ろを、引きずるような重い足取りでついて行った。みんな、できることなら家に帰りたい!という雰囲気を漂わせていた。


4人部屋、窓際の右。


部屋着に着替える。きょうのメインイベントは胃カメラ胃カメラで心臓を裏側から覗き、手術時の障害となる血栓等がないかを確認するとのこと。


が、今から6年ほど前、僕は胃カメラを受診したが、どうしてもできなかった。喉にあの異物が差し込まれると、激しく喉が反射し、とめどない吐き気に襲われた。「鼻で呼吸してください!」6年前の先生は言ったし、その理屈は分かるが、とても指示に従えない吐き気。呼吸がまったくできない。


6年前、結局、胃カメラはできなかった。


今回の主治医、渡部先生にもそのことは伝えていた。


「池田さーん。呼ばれましたよ。胃カメラお願いします」梅野さんではない看護婦さんに言われた。


教えられた道順を、病院内をグルグル回り…。


胃カメラ室に到着。


麻酔を喉近辺に留まらせ、喉の反射を起こしにくくする…


が、これも6年前にやっていた。


そこに、渡部先生登場。主治医がわざわざ胃カメラやってくれるのか。


しかし…


まったくダメだった!先端が喉を通った直後、激しく反射が起き、とてもそれ以上通過できない!!オエッ!オエッ!オエーーッ!!


事前に僕からこの話を聞いていた渡部先生は、拍子抜けするほどあっさりと諦めた。


「無理ですね〜。ものすごい力が入ってますわ。喉に」


はやり今回も胃カメラは無理だった。「明日、大丈夫ですか?」不安になり僕が聞く。


「大丈夫大丈夫。よくあることですわ」


渡部先生はクールにそう言うと、手袋を脱ぎ立ち去った。


部屋に戻ると、「もうひとつのメインイベント」が待っていた…。


『剃毛』!!


チ○ン毛剃りなど、中学生のころふざけてやって以来だ!今は剛毛にもほどがある状態だ!!


美人の方の梅野看護婦が立っていた。


「はい、じゃあ池田さん。ベットの上で〜。パンツまで脱いでね〜。お尻の下に、このシートを敷いてくださいね〜」


オムツがシート状になったかのようなシートを、尻の下に敷く。


その上で、カエルみたいに足を開く…。


うら若き美人看護婦の前で…。


なんというカッコウを、オレはしているのだ…。


「ええっと、奥さん、どうされます?作業の間、外に出られてる方が多いですけど?」


作業て…


「いえ!ここにいます!」食い気味に答えるお方さま。興味津々、の目をしている。というか、すでに半笑い状態だ。


「じゃあ始めますね〜」作業の手元を見る勇気はないが、お方さまによれば、T字型の特殊な電気カミソリを使用しているらしい。


景気よく聞こえるジョリジョリ音。お方さま、笑いをかみ殺している。


看護婦さんが言う。「屈辱的でしょ?患者さんによっては、どんな手術より、この剃毛がイヤ、ってゆー方もいるのよ。屈辱的でしょ?」


「屈辱的でしょ?」って、それは僕に聞いているのか?としたら、どう答えるのが正解なのだ?「はい、女王様!」か?


「はい!終了です!あとはお風呂に入って、洗い流しておいてくださいね!」


女王様、いや梅野看護婦はそう言い残し消えた。お方さまに何がそんなに面白かったのか尋ねた。


「だって…(笑)ヒロシの剛毛が…(笑)見る見るうちに…(笑)剃られて、お尻の下に溜まっていくんやけど…(笑)あまりの量の多さに…(笑)『カツラ』が1人前分作れる量やってん…(笑)」


失礼なヤツだ。風呂に行こうと立ち上がった僕の背中に追い打ちをかけるよう、お方さまが言った。


「その1人前のカツラ、薄くなったヒロシの頭にチョコンと乗せたとこ想像したら…(笑)笑けて笑けて…(笑)」


初めての病院風呂。毎日、午前中は男性、午後からは女性で、ひとり20分で区切られている。自分の入りたい時間を各自が記入するノートが入り口にある。時間は、早い者勝ちだ。


午後4:20からの20分間が僕にあてがわれた時間だった。本来、午後は女性時間だが、剃毛した僕のため、剃毛担当梅野さんが、空いていた時間を特別に僕のためにとってくれた。


お風呂に入って驚いた。民宿旅館なみのお風呂だ。人間ひとりが入って思う存分、手足をひろげられる!


洗い場も2つある!お風呂好きには嬉しい風呂だ!!


が!いかんせん、たった20分。着替えの時間ももちろん含まれる。大急ぎで頭、カラダ、を洗い、大きな湯船に浸かる。


さて着替えだ。僕は汗かきのため、拭き取りに時間がかかる。着替え開始は16:35。ギリ、間に合うな。


ガラガラ。「失礼しまーす!」見たことない看護婦さんが入ってきた!


「あっ!まだ入ってます!」大慌てて前を隠すが一瞬遅く、局部を見られた!


「あ、ごめんなさーい」事務的に閉める看護婦さん。


しかし、その看護婦さんはこう思っただろう…。


誰やアイツ?いま女性時間やのに男が入ってるってどーゆーことや?


しかも変に小太りで、チ○ン毛ツルツルやがな!!


ヘンタイやん!!


再び看護婦さん、堂々と入場。「失礼しまーす!」


オレ:いやぁーん?!


看護婦:すみません、お名前なんですか?

 

オレ:いい、池田です!看護婦の梅野さんに特別にこの時間をもらいました!


看護婦:あー。そーですか。


看護婦、納得して退場。


18時、夕食だ。メニューは、ご飯150g、ミートローフ、ほうれん草のソテー、ひじきサラダ。

 

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どれも、ほとんど味がついていない!


お方さまにほうれん草ソテーをひと口、食べさせてみる。


「うわぁ〜。ほとんど味、ないね!」


そんな「病院あるある」をひと通り経験し、夜はふけていった。20時、面会時間の終わり。


夫:そろそろ帰らなあかんで。


妻:うん…


お方さまは目を伏せた。僕の指を、ずっと握っていた。


僕はお方さまを、1階の出口まで送った。貴重な3連休を、僕のためにあてがってくれている。


妻:ほんだら明日、10時に来るわな。


夫:う、うん。ありがとう。


明日は生まれて初めての手術。


カテーテルアブレーションなど、いまや手術と呼ばないよ!という人もいる。


でも、鼠蹊部と首の大動脈から管を通し、左心房に届け、悪さをしている心臓の神経を人工的に発生させ、それを焼き切る。


手術未経験の僕にとって、それは十分過ぎる手術だ。


明日、上手くいきますように。


病室に戻り、FBを開いた。たくさんの友達が、僕にエールをくれていた。


涙がにじんだ。

 

2日目・前編はここです。

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