ランナーなら、森脇健児さんの
「走る男」
という番組をご存知の方も多いと思う。
そして走る男ファンなら、福島・会津中央乳業さんは訪れなければいけない聖地ともいうべき場所だ!
2008年「走る男」では、森脇さんが北海道から沖縄までひたすら走りながら、出会った人との交流を綴った、唯一無二の旅番組。
福島県に入った際、福島の皆さんの県民性なのか、引っ込み思案な方が多く、番組があまり盛り上がらない。
その時、ここに立ち寄り、アイスを食べていると、現れたのが、この会社の若旦那ともいうべき二瓶さん。
二瓶さんが知り合いの新聞記者に電話すると、すぐに2紙が取材に来てくれて、森脇さんの活動が県下に知れ渡ることになる。
翌週、続きを撮影するために再度、福島を訪れた森脇さんは、先週とは大違いになった、福島の皆さんの歓迎ぶりにびっくりする、という展開になる。
さらに2009年「走る男Ⅱ」、各都道府県で地元ランナー100人と走るという企画でも、福島県は集まりが悪く、再び二瓶さんの元へ。
二瓶さんの電話一本でたくさんのマスコミが集まり、取材を受ける。それが夕刊に載り、翌日、たくさんのランナーが会津中央乳業に集結する、という流れになる。
会津中央乳業の二瓶さんは、走る男のファンなら誰でも知っている有名人となる。
さて、福島に来たならここによらないわけにはいかない。
会津中央乳業のブランド、「べこの乳」。
実は、わが町・八尾にある百貨店の地下の食料品コーナーで、この「べこの乳」ブランドのヨーグルト
「会津の雪」
は、以前までは買うことができた。
だから僕たち夫婦は、
「二瓶さんとこのヨーグルトや〜(╹◡╹)」
と言って、喜んで食べていた。
しかし。
ある日を境に、売り場からその商品が消えた。
ある日がいつなのか、誰もが容易に想像がつくだろう。
2011年3月11日。
東日本大震災以降、その百貨店に、べこの乳ヨーグルトが置かれることはなくなった。
僕たち夫婦は、会津中央乳業さんそのものが震災の大きな被害にあい、商品の出荷ができなくなってるのではないか、と危惧した。
その後、ネットなどで調べたところ、会社そのものに甚大な被害があったというわけではなさそうであることはわかった。
時が経てば、また、あの百貨店に商品が戻るかな。
僕たちの淡い期待もむなしく、棚にあの白と青のガラス瓶が戻ることはなかった。
だから、僕たちはここに来た!
500km離れたこの地で、再び食べることができた、べこの乳ヨーグルト「会津の雪」
その味は…
大阪で食べていたものとは、比較にならないくらい美味であった。
もちろん、同じ商品なんだけど。
やはり、500km移動してくるうちに、商品に酸化が進んでしまって、本来の風味が失われていたのだ。
できたての「会津の雪」。
濃厚で、それでいてあっさりしている。ヨーグルトの酸味は一切なく、下の上で何の抵抗もなくとろけていく。
こんなに美味しいものだったのか…。
さらに僕はソフトクリームも食べた。
なんて濃い味!!
舌を覆うような滑らかな甘み!!
牛乳の旨味が凝縮したかのような味だ!
ヨーグルトもソフトクリームも、このアイス牧場に来なければ味わえない味だ。
まさに旅の醍醐味だった。
あまりに美味しかったので、嬉しくなった僕たちは、少々調子に乗りすぎた。
来場者の雑記帳に、会津中央乳業さんのキャラクターの女の子の顔を描いて、
「このキャラクターは何て名前なんですか?」
と、売店の女性に尋ねたところ、
「名前はないんです」
との返事。
そうなんだ、と思って、僕たちはふざけて、勝手に
「二瓶子」(にへこ)
と名付けてノートに書いた。
さっきの売店の女性は、少し寂しそうに、続けていた。
「…実は、社長のお姉さんがモデルなんです。社長のお姉さんは、戦争で、食べるものがなくて、栄養失調で亡くなってしまうんです。社長のお父さんは、二度とそんな悲劇を繰り返したくないから、この会社を作ったんです…」
…。
そうだったんですね…。
ノートにふざけて、勝手に名前をつけてしまって、申し訳ないことをした…
でももう書いてしまったので、破るわけにもいかず…
お詫びの印に、小さなカバンを買った。かわいいお姉さんのイラストが印象的。
会津中央乳業さん。
美味しい乳製品は、社長の強いこころざしに裏打ちされて、丁寧に美味しくできていた。500kmの距離を超えて、旅人が食べにくるほどに。