東京マラソンロスに陥っている皆さんも多いのではないでしょうか。
かくいう僕も、東京マラソンロス状態です。
2013年から(笑)
あの日の思い出は忘れられようはずもなく…
この日からずっと、僕はもう一度、東京を走れる日を恋い焦がれています。
これは2013年2月26日に、フェイスブックに投稿したものを、加筆・修正したものです。
うちの会社は、こじんまりしたオフィスビルの10階。そのフロアに5社、入ってるうちのひとつ。
東京マラソンで留守にしてた分、溜まってた仕事を片付けて、ちょっと遅くなった21時。オシッコしたくなって、事務所のドアを開けた。
薄暗い廊下。グレーの、無機質な壁。トイレはすぐ先、5メートル。
トイレまで、まっすぐな廊下。
まっすぐ。
銀座の、あの道みたいに。
ほんの、ほんのちょっとしたイタズラ心で、トイレまで走った。
と、突然…!!
無機質な壁は、極彩色に彩られた!
あの日の輝くばかりの太陽が、世界を照らした!
無数のランナーのリズミカルな、足音と呼吸音!そしてなにより、沿道で僕らを見つめる、何万もの人たち!
あの日が蘇った!
左手を見る!ラン友の幟が誇らしげに空に舞っている!
石切山さんのピエロの帽子が、ひときわ目立っている!
キムさんが僕に叫ぶ!
「ヒロシ!ヒロシ!ヒロシ!」
カメラ片手の鳥海さんのハイタッチは誰よりも熱い!
「よーしラン友!ラン友!」
カラフルなアフロの髪のビューティズたちがキャーキャー叫んでハイタッチ!!
右手を見る!妻が「博」と書いたプラカードを、必死に掲げて叫ぶ!
「ここやで!ここやで!」
いとこの寿子と寿子ママも、満面の笑みだ!
きのうまで着物きて琴を弾いてたNaomiさん、東京のドン・Chieさんが僕を見て叫ぶ!
「うわー来たあ!来たあ!」
「池田さん!池田博さん!頑張って!」
たった一人で僕を見つけてくれた赤いコートの山口洋子さんも、声の限り叫んでくれた!
五年前に引退した、うちの会社の元・社長の廣瀬のジーサン、チャリンコで必死に僕のあとを追いかけてくる!
「池田ぁ!池田ぁ!がんばれぇ!」
陽光がさんさんと降り注ぐ、整然と美しい東京のビルのあいだを、僕たちの足音と大歓声が巨大なうねりとなって轟いた!
僕は笑顔で、両手を拡げる!足は死ぬほど痛いけど、この上ない幸福感に包まれている!
みんな、みんなありがとう!!
そして、現れた時と同様に突然!幻は消え去った…
やはり、目の前には、薄暗い照明の廊下、陰鬱な色の壁しかない…
終わってしもうたんや…夢のような時間は、終わってしもうた…
しばし、僕は呆然と、廊下にたたずんだ。
そして僕は思った。明日から、また走り始めよう。どうしてかって?
来年もまた、同じ夢を見たいんや。