前回まで:
芋煮!
昨日、山形じゅうを走り回ったのに、どこでも売り切れで食べられなかった芋煮!
山形国際ホテルの朝食でゲットだぜ!!
このホテルは朝食の評価が高かったので楽しみにしていた。バイキングではあるが、メニューが豊富で、芋煮もちゃんとあった。あと、ケンミンショーで見たことのある、山形名産の「だし」なる食べ物もあった。
「だし」とは、季節の野菜をみじん切りにして、ご飯にかけて食べるものなのだが、ナス、きゅうり、などは判別できるが、ネバネバの元が何なのかわからない。
さっそく、オスカルくんにメッセージで質問する。1秒で返信があった。
ネバネバの元は「納豆昆布」とのこと。
そんな食べ物は聞いたことがない、と返信すると、スーパーに売っている、とのこと。
イオン山形南店は早朝から開いているらしい。
今日は山形から福島に向かうが、その途中で寄ってみよう。
念願の芋煮も、むちゃくちゃ美味しい!素朴な味だが、素材のひとつひとつが美味しく、力強い。大地の力だろうか。
チェックアウト後、イオン山形南店へ。広大なスーパーだ。早朝のためお客さんは少なかったが。
「納豆昆布」、確かに売っていた。関西ではお目にかかったことのない食材だ。大阪で「だし」を再現するために数袋購入。
もちろん芋煮も再現しなければならない。コーナーがあり、芋煮用食材がまとめて置いてある。すでに皮をむいた状態の里芋などが置いている。
どんだけ芋煮ラヴなのだ!山形ケンミン!!
山形御用達醤油であるマルジュウ醤油は昨日購入済みであったが、このスーパーにはマルジュウ減塩バージョンが置いていた。心臓病の僕としては減塩しなければならない。こいつも購入。
スーパーのカゴが、完全に山形県名産品で埋め尽くされた。
お金を支払い、スーパーを出る。
さあ!いよいよ山形ともお別れだ。
一ヶ月前。入院して、心臓手術に怯えながら、この旅行だけを楽しみに、心の支えにしていた。その中でもメインは、この山形行きだった。
美味しいそばも食べた。会いたかった人にも会えた。聞きたかった話も聞けた。
ありがとう山形。
またいつか、必ず訪れるよ。
クルマに乗り込んだ。
頭を切り替えよう!次なる目的地も、長い間、行きたいと願っていた場所だ。
「走る男」
「走る男」という番組を見て走り始め、ランニングが趣味になった、という人も多いのではないだろうか。
僕もこの番組が大好きで、DVDも全部持っている。いまだに年に1回は見直している番組だ。
タレントの森脇健児さんが、1年をかけて北海道から沖縄までを走って旅をするという番組。京都のローカル局であるKBS京都が制作していて、地方のローカル局でのみ放送されていたので、ご存じない方も多いかもしれない。
ロケはいつも3名だけで行われる。森脇さん本人、プロデューサー、ディレクターの3名だ。一回のロケで3〜5日かけて走り、いったん京都に戻り、またロケに出る、という形。再びロケに出る際も、格安チケットで移動するなど、予算がほとんどないような状態の番組だった。
この、手作り感というか、素朴な感じというか、普段の我々に近いのだ。タレントだからといって、森脇さんには何も準備されていない。足を痛めても、ランニングドクターが瞬時にマッサージ、などという、キー局にありがちなパターンはない。足が痛くなれば、その日のロケは早めに上がり、近くにあるビジネスホテルの、なるべく温泉を併設しているホテルに泊まり、その温泉で患部を森脇さん本人が揉みながら回復を待つ、というスタイルだ。
つまり、普段の我々なのだ。
自分たちと同じ目線で、自分たちにも付いている2本の足で、日本を旅する森脇さんに共感して、サラリーマン世代に大変人気があった。僕も熱狂的なファンで、この番組を見てランニングを始めた。
さて、その「走る男」で、強烈な印象を残した場面がある。福島を走った時のことだ。森脇さんが昼食にと訪れた食堂で食べていた「馬刺し定食」が、ムチャクチャ美味しそうなのだ!
この福島編はその他にも印象深いシーンがたくさんある。だから僕はこの地を訪れたかった。
そしてこの「同気食堂」さんの馬刺し定食をいつか食べてみたい!と思っていた。
山形のイオンから、ナビに「同気食堂」を入力する。
ついに、2009年にあの番組を見て以来、7年越しの夢が叶うのだ。
峠越えのルートだ。紅葉が色づいてきた美しい山々の間を縫いながらクルマは進む。途中、道の駅でお土産用の林檎を購入。
約3時間のドライブで、ついに同気食堂に到着した!
店構えはテレビで見た時と変わっていない。震災を乗り越えていることは調べてわかってはいたが、この目で確認できてホッとした。
店内へ。お昼過ぎの1:30ということで、お客さんが一組だけいたが、すぐに帰られた。
馬刺し定食を注文する。お肉屋さんが営んでらっしゃる食堂なので、馬刺しは新鮮で肉厚で、とても美味しい!
「7年前の森脇さんの番組を見て、大阪から来たんです!」店の女将さんに言う。
「ああ!あれね」女将さんが答える。番組にも数秒映ってらっしゃった方だ。
隣接するお肉屋さんで馬刺しを購入し、自宅へ配送する。(これを書いているのは10/20、昨日、この馬刺しが届いた。「馬刺し燻製」をオマケにつけてくれていた。ありがとう!女将さん)
同じく「走る男」福島編で強烈な印象を残した場所。
会津中央乳業。
ここで森脇さんはアイスクリームとヨーグルトを食する。その際、社長のご子息で会社の重役でいらっしゃる二瓶(にへい)さんに、イマイチ福島編のロケが盛り上がりに欠けると相談するや、二瓶さんが知り合いの新聞社2社に電話し、即、取材に来てもらう。それが記事になるや、それまで誰も沿道で応援してくれなかったのが、応援者が増えて、福島編が大盛り上がりをする、という流れとなる。
会津中央乳業さんのブランドで「べこの乳」というのがある。べこの乳ヨーグルトは、うちの近所の百貨店の食料品売り場でも購入できたのだが、震災以来、商品が撤去されていた。おそらく風評的な問題を考慮したのだろうが、残念な話だ。
本店で食べたべこの乳ヨーグルトの味は、八尾で食べていたのとは比較にならない味だった。やはり、大阪に来るまでにヨーグルトが分離して本来の味ではなくなってしまっていた。本店で食べる本物は、濃厚で、舌触りがサラサラして、絶妙の酸味と甘み。
アイスクリームは、ハチミツが含まれているかのような、自然の濃厚な甘みがあった。
ノートに大阪から来た旨、記入して、会津中央乳業のキャラクターの女の子の似顔絵を描く。
カウンターの女性に、「このキャラクターはなんて名前なの?」と聞くと、
「名前はないんです。社長のお姉さんがモデルで、お若い頃、栄養失調で亡くなってしまったんです。社長はそんな悲劇を繰り返したくないから、この会社を創業したんです」との裏話を聞くことができた。
社長のお名前は二瓶さんであることは知っているので、僕たちは勝手に「二瓶子」(にへこ)と名付けた。
番組で見るまで、全く聞いたこともない名前だった。百万年の歳月をかけて、浸食と風化を繰り返しながら形成された奇岩群で、天然記念物であるのだが、番組内で地元の方もおっしゃっているように、福島県は宣伝が下手なので、他県の人間にはほとんど知られていない。
その雄大な佇まいは、もっと広く知られてもいい存在だ。百万年の時を超えてきた絶景。しばし、その絶景に見とれる。
さて。
7年越しの夢、走る男の福島での足跡辿り。まさかこんなことができる日が来るとは思わなかった。仕事をしていたら、特に、限りなくブラックな前職を続けていたら、とてもこんな時間はとれまい。
悪くした心身がどうなっていたかもわからない。
手術中、心臓を止められ、死というものを一瞬、垣間見た時、人生の残り時間という概念を初めて意識した。
人生は無限ではない。いつか終わりが来る。いちいちそんなことを意識しながら生きることはできないが、この年齢になると、時々、思い返さなければならないのかもしれない。
目を背けすぎて、大切な時間をブラックな作業に埋没させてしまっては、最後の床に着いた時、心底、後悔するだろう。
最愛の人と、想像もできなかった時間の過ごし方ができて、僕は満足であった。
しかし…。
この後、我々夫婦は、とんでもない過ちに気付くのだった!!
塔のへつりの駐車場に戻り、クルマに乗り込む。時間はもう17時前だ。ここから今夜の宿までは、前夜のリサーチでは約4時間。けっこうな時間だが、前日、朝の栃木の宿から山形までがちょうど同じくらいの時間だった。
到着予想時間…。
約5時間半。
5?!
5時間半?!
休憩入れたら6時間越え?!
初日、ほぼ1日かけて、大阪から埼玉までかけてやってきた時にかかった時間と同じだ!それを今から行けというのか?!
昨日のリサーチは、間違いだったのか?!4時間じゃない、なんど調べ直しても、5時間半〜6時間と出てくる!!
旅の疲れはピークに達していた!暗くなった今から、6時間のドライブなど、できそうもない!
どうしよう?!!
(旅日記・4日目 後編 に続く)