妻:闘牛士が、赤い布を牛の前でヒラヒラさすやろ。
夫:ウンウン。
妻:牛は、赤色は見えへんからね。
夫:あ、それは聞いたことあるー!
妻:赤い色に興奮してるっていうんは嘘やねん。ヒラヒラ動いてることに反応してるねん。
夫:そうらしいね。
妻:牛は、二色色覚(にしょく・しきかく)。赤はわからへんねん。犬も猫も。
夫:二色、とは?
妻:青と黄色はわかるみたい。
夫:ふーん。人間は?
妻:えっ?知らんの?
夫:(知るかボケ!)うん、知らんよ。教えて。
妻:人間は、三色色覚。赤、青、緑が分かるねん。
夫:ふーん。
妻:テレビがそうやろ?
夫:そうなん?
妻:テレビは赤、青、緑の三原色で色を作ってるねん。それで人間はカラーテレビが楽しめる。
夫:オレの知人で、赤色がわからへん人がおったわ。
妻:うん、男性に多いねん。エックス染色体に、色覚を司る遺伝子があるから、男性に発症しやすいらしいわ。
夫:??エックス染色体??遺伝子??なんで男性限定??
妻:フッ。(バカにした笑い)中学校で習ったやん。
夫:(覚えてるかボケ!!)
妻:女性はXX(エックスエックス)染色体やろ?
夫:(知るかボケ!!)
妻:男性はXY染色体やん。エックスが二つある女性は、どちらかのエックスに異常があっても、もう片方で補えるから、エックスが一つしかない男性に発症しやすいねん。
夫:あーそーですかぁー。
妻:ところが…
夫:ところが?
妻:三色色覚を超えた、四色色覚で世界が見えてる人っていうのが、この世にはいてはるねん!
夫:え?普通の人より、多くの色が見えるってこと?
妻:そう!
夫:何色が?!金色?
妻:強いて言えば、「紫外線色」。色の波長が見える範囲が、紫外線側にまで及んでいるっていうこと。普通の人間には、紫外線は見えないねん。でもその人には見えるねん。
夫:ホンマですか?
妻:でも生まれた時から、その人にはそう見えてるから、自分が四色色覚やってわかってない人が多いねん。
夫:そうなんや!
妻:例えばモンシロチョウ。
夫:モンシロチョウ?
妻:われわれには、モンシロチョウって、オスもメスも、白い色にしか見えへんけど。あれって、四色色覚者には、オスとメスは違う色に見えてるねん。
夫:まじ?!
妻:さらに、さっき言うたテレビ。テレビの色は、赤と青と緑の三原色から色を作ってるから、四色色覚者がテレビを見てもそう見える。
夫:そらそやな。
妻:でも、同じ風景を、四色色覚者が肉眼で見たら、世界は違う色でできている。
夫:なるほど!
妻:そやし、四色色覚者は思っている。「なんで、テレビって、自然の風景と違う色を映してるんやろう…」って。
夫:ホンマかいな!
妻:四色色覚者は、いまのところ、女性しか見つかってないねん。
夫:それもまた、エックス的な事情ですか?
妻:それはまだわからへんねん。
夫:じゃあ四色色覚者は進化した人類やね!
妻:それが違うねん!
夫:ち、違う?
妻:昆虫、爬虫類、鳥類。ほぼぜんぶ、四色色覚。
夫:ええっ?!
妻:この世でたぶん、最も色が見えてる生物は…
夫:生物は?
妻:鳩。
夫:ハトって〜〜!!
妻:人間は、いや哺乳類は、爬虫類とか鳥類とかから進化してきたはずやのに、恐竜の時代の哺乳類は夜行性が多かった。だから桿体細胞が発達し、錐体細胞が衰えてん。つまり、明るさを重視して、色を識別する能力が衰えた。
夫:ニュースソースはみうらじゅんですか?
妻:ちゃうわ!色彩検定2級の資格取る時に、桿体細胞とか錐体細胞とか三原色とか勉強した時に、四色色覚の人の話聞いて、興味持って勉強してん。
夫:さよかー。
妻:なんでもみうらじゅんやと思うなよ!
夫:御意。