大好きだった生駒縦走トレイルをやめた理由
2013年夏。
ぼくは一時、トレイルランニングにどっぷりとはまっていた。
と言ってもコースはいつも同じ。
自宅を出て、信貴山口まで走り、そこからロープウェイで高安山まで登り、そこから生駒山上遊園地まで走る。遊園地の自動販売機で水を補給し、来た道を戻る、途中で、持参したコンビニ弁当を食べ、高安山まで戻り、ロープウェイで降り、自宅まで走って帰る。
▼2013年6月1日のガーミン記録。自宅から生駒山上の往復ランニングだ。
ほとんど毎週、このコースを走っていた。
楽しくて楽しくて、仕方がなかった。
が、ある日を境に、ピタリとやめてしまった。
理由は二つある。
一つは、ここを走っていた時、足底筋膜炎の症状が出た。2013年夏は、北海道マラソンを控え、一生懸命練習していたのだった。それが、足底筋膜炎のため、完走できなかった。それが山のせいだとは思わないが、その後はロードで走ることが多くなった。
二つ目は、やはり心臓だ。
今、かかりつけの循環器系の主治医もおっしゃってることだが、ぼくは生まれつき、脈が早い。そのせいか、登りが弱い。
しかし、夢中になって、生駒山頂越えの崖を走って登っていると、心臓が破裂しそうなほど早く打っていたことがしばしばあった。
当時は自分が心臓に問題がある、とは夢にも思っていなかったが、そんな状態でも、あまりの心臓の早さに、自分で驚き、立ち止まって、落ち着くのを待ったことが多々あった。
今となれば、心房細動になった原因は、あの頃の無理が原因としてあったのかもしれない。
そんな思いで、僕は生駒縦走から遠ざかっていた。
しかし、歩いてなら、問題ないかもしれない。
心拍計もつけて、異常な数値になる前に止まれば、心臓への負担もないだろう。
僕はそう思って、あの懐かしい、生駒縦走を、また歩きたくなった。
2013年は、山を歩くなんて考えられもしなかったお方さまも、最近はすっかり頼もしいアスリートとなったので、二人でハイキングに行くことにした。
ゆるゆるスタート。
お方さまとのハイキングなので、自宅から信貴山口までは、まずは電車で行くことにした。
信貴山の守り神は虎だ。ロープウェイも虎の柄、肉球の模様がついたシートが可愛い。
平日昼間なのに、意外と乗降客が多い。われわれ以外に6人。ただ、登山スタイルではなかったので、高安山からさらにざすに乗り、朝護孫子寺へ向かう人たちであろう。
高安山駅を降りる。お寺へ向かう、他の乗客たちは右へ。
生駒山へと向かう僕たちだけは左へ。
さあ、約4年ぶりの、生駒縦走だ。方向音痴の僕が、ルートをちゃんと覚えているかの不安。
マップをお方さまが持っているので、いざという時の安心感は計り知れない。
スタートする。いきなりの、急な上り坂。
4年前はこれを走って登っていたんだ。当時のオレ、けっこうやるなあ…
などと思いつつ、最初の分岐点。
しかし、はっきりと覚えている。4年前の、初めての縦走時は、ここで間違った。左に行かないといけないのに、直進してしまい、ルートを外れた。約15分〜20分、間違ったルートを進み、どう見ても地図と違うので引き返したのだった。
間違えずに左へと進む。
しばらく行くと、いきなり突き当たる。左にガードレール、前方には車道。進む道がない。
地図には、「トンネル」とだけ書いてあるが、トンネルなどどこにもない。
実は、ガードレールを越えた先が、下りになって秘密の抜け道みたいになっている。車道をくぐる、トンネルになっているのだ。
ここは、知らないと、なかなか気づく道ではない。まさかガードレールを越えなければいけないという発想にはなかなかならない。初めて来た時はここでかなりの時間を費やした。
トレイルっぽい、山道を進む。ウグイスの鳴き声が、耳に心地よい。
驚くほど、ウグイスが多かった。
左手にハス池が現れる。小学校の校庭くらいはありそうな、まあまあ大きな池だ。
遠くに水鳥が見えた。澄んだ、美しい池であった。
やがて、十三峠。
ここは少し道が複雑になっているが、標識通りに注意深く進めば問題はない。
下に降りれば水呑地蔵尊に行ける。美しい飲み水が湧き出ていることで有名な場所だ。次は、ここにも立ち寄ることにしよう。
大きな螺旋階段がついた、歩道橋を渡る。
かなりの急坂を登ると…
鐘の鳴る丘展望台。昼食から鳴川峠を経て、暗峠へ。
鐘の鳴る丘展望台がある。
時間は12時半を回っていた。かなりお腹が空いていたので、ここでお昼にする。
朝、僕が病院に行っている間にお方さまが作ってくれた、おにぎりと卵焼きだ。
山で食べるお弁当は美味しい!僕はおにぎりを4つ、お方さまは3つを平らげた。
鐘を鳴らすと幸せになれるという。
さらに山道を進むと、府民の森、なる標識が見えてくるが、謎のキノコのオブジェが点在している。
なんなのだコレは?めっちゃ怖いやん…
もしですよ、日が落ちた頃合いにこの辺りを通りがかったとき、ふと、キノコを見ると…
知らんおっさんが手招きしてたら腰ぬかすやろうな。
などと思いながら先へ進む。
鳴川峠を越えて、少し進むと、見晴らしの良い休憩所に出る。確か、ぼくらの広場と言う名称だったと思う。
昨日は天気はまあまあだったが、ガスっていて見晴らしは良くなかったのが残念だった。
進んでいくと、大きなゲートがある。ここの抜ける。ゲートに見慣れぬ看板があった。
2013年にはこんな看板はなかった。ハイキングとして歩いている方にはお年寄りも多い。トレイルランナーが集団で来ればお年寄りには脅威になろう。
ハイカーとトレイルランナー、わかり合って、共存が必要だ。
さて、目指すは暗峠(くらがり・とおげ)。
正直なところ、お方さまとここまでくることができるとは思っていなかった。
ひ弱で、すぐ風邪をひき、腰を痛め、徒歩だと0.6kmしかないビデオ屋に行くにもクルマを利用していたお方さまが…
なんと、高安山から暗峠まで、歩きとはいえ、たどり着くことができるなんて…
もちろん、ここまできたら、すえひろさんによらないわけにはいかない。
本当は何か食べるつもりだったが、鐘の鳴る丘展望台で食べた4個のおにぎりと4切れの卵焼きが、予想以上にお腹いっぱいで、コーヒーだけいただくことにした。
名物のあずきコーヒーは、半分までこのウィンナーコーヒーみたいなコーヒーを飲んで、半分くらいでかき混ぜて、あずきの香ばしさや甘さを楽しみながら飲むと、2度3度、味が変わって楽しめるらしい。店のおばちゃんが丁寧に教えてくださった。
店を出るとき、われわれ夫婦が好きな漫才コンビ・プリマ旦那がこの店を訪れた時の写真が目に止まり、
「プリマ旦那もきたことあるんですか!」
と聞いたら、
「うん、この子ら、生駒の夜景をテレビでリポートする時に来て。うちの野菜カレー、お代わりして食べやったわ。夜景の時間まで、そこで寝さしてあげて。このころは若くて可愛かったのに、こないだテレビで見たら、えらい太ってやってびっくりしたわ!」
と、貴重な情報をくれた。確かにプリマ旦那、両方とも太って来たなあ…(^◇^;)
最後の試練、山道を越えろ
さて、最後の試練。生駒山頂へと向かう、崖のごとき山道を登る。
お方さま、上りは苦手、しかもここは延々と続くので、苦悶の表情を浮かべつつ、足を止めず、登り続ける。
そしてついに最終目的地・生駒山上遊園地に到着!!
高安山から生駒山上遊園地までは、ガーミンによれば、累積標高差は460メートル程度だ。
しかしハイキング素人のわれわれ夫婦にはかなりの難関であった。
山の自然、吹く風の透明感、水の清らかさ、鳥や虫たちの清んだ鳴き声、など、山の非日常性は、人の心の濁りまで洗い流してくれそうな気がする。
また来ようね、とお方さまと約束しながら、山を降りた。