妻:アタシが小学校の4年の頃やけどな。
夫:ウンウン。
妻:アタシが何気なく、始めた遊びがあってん。
夫:遊び?
妻:うん。小4の考える、他愛もない遊びやねんけど。
夫:どんな遊び?
妻:休み時間にな。
夫:ウンウン。
妻:なんか、プリントの裏とかの、いらん紙を小さくちぎって。
夫:プリント。あったなあ。
妻:その紙に、番号を書いて、折りたたむねん。
夫:ふむふむ。
妻:全部で、15枚くらいかなあ。
夫:ナンバー1からナンバー15まであるわけやね。
妻:で、その折りたたんだ紙を、箱に入れるねん。
夫:おお。なんか、クジ的な感じ?
妻:そう。まさにクジやねん。
夫:子供には楽しいやろね。
妻:で、たとえば、ある友達が『3』を引くやん。
夫:ウンウン。
妻:『3』は当たりで、景品は、たとえば、使いかけの消しゴムとか。そんなんやねん。
夫:なるほど!
妻:当たった友達は、めっちゃ喜ぶねん!
夫:子供やからな。
妻:この遊びのキモはな。
夫:ウンウン。
妻:『ハズレ』があることやねん。
夫:なるほど!
妻:子供ながらに、『ハズレ』になるとめっちゃ悔しいから。
夫:そやね!
妻:逆に『アタリ』を引くとめっちゃ嬉しい!!
夫:そりゃそやで!
妻:たとえそれが、アタシの使いかけの消しゴムでも、めっちゃ喜んで貰ってくれるねん!
夫:ン?ちょっと待って。
妻:なになに?
夫:『アタリ』の景品は、すべて麗子の私物なん?
妻:そやで。
夫:じゃあ仮に使いかけの消しゴムとしても、消しゴムをあげちゃったら、麗子の使う消しゴムがないやん。
妻:アホやな。
夫:え?
妻:ホンマに必要な消しゴムなんか、あげるかいな。
夫:ああ、全く不要な消しゴムってこと?
妻:そうやで。道で拾ったとか。兄ちゃんが飽きた、ライダー消しゴムの全然知らんキャラとか。
夫:なるほど!
妻:他の景品は、牛乳のフタとか、鉛筆のキャップとか。漫画の付録のシールとか。
夫:なんか、わかってきたぞ。
妻:当たった友達は、景品なんかより、『当たった』っていうこと自体が嬉しくて。
夫:子供やもんな!
妻:めっちゃ喜んで、牛乳のフタをもらってくれる。
夫:それって、まさか…
妻:アタシにしたら、テイよく、不用品は処分できるわ、友達は喜ぶわ、一石二鳥。
夫:ワルやなぁ〜。
妻:このシステム、あっという間にクラス中に広まって、アタシが考えたのに、みんながそこかしこでやり始めて。
夫:ハハハ。真似っこやね。
妻:アタシがあげたシールを、ヨシコちゃんがまた自分の景品に流用したりして。
夫:不用品のたらい回しやな。
妻:でも、やがて先生の知るところとなって。
夫:ん?どうした?
妻:タダで物をあげるって行為が問題視されて…
夫:ウンウン。
妻:禁止になってしもうた…
夫:そうなんや。学校はなんでも禁止するからなあ。
妻:ちょっとくやしかった。
夫:フラフープを、「腸がねじれる」って理由で禁止した学校もあったぐらいやからなあ。
妻:せっかく、不用品処分のカラクリができたのに!
夫:そっちかーい!!