走れダイエットランナー!

ポンコツ夫とポンコツ嫁はん。ランニングで健康維持しつつ映画やテレビ見ながら言いあらそうブログです。

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「強烈!スーパーランナー列伝 @鯛焼きウルトラinしまなみ」No.3 カープキティちゃん

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「橋に乗ってしまったら、もうサポートできないもんな…」

 

と、アドさんは言いました。

 

時刻は、19時15分をまわっていました。

 

僕たちは、最後のランナーを待っていました。

 

先ほどまでの暑さが嘘のように、急速に風が冷たくなってきました。

 

もう随分と、待っていました。

 

「彼」が来そうな気配は、とんとありませんでした。

 

でも「彼」が来るまでは。

 

「彼」が来るまでは、ここを動くわけにはいかない。

 

「彼」が橋に乗ってしまうと、もう僕たちには、

 

どんなに「彼」が喉が渇こうと、

 

どんなに「彼」が空腹にさいなまれようと、

 

手を貸してやることはできない。

 

だから、橋に乗る前の、最後のチャンスであるこの場所で、「彼」をサポートしてあげなければならないんだ。

 

アドさんの決意の表れが、小さなつぶやきになって、口から漏れた一言でした。

 

もちろん、僕もそのつもりでした。

 

「彼」を見捨てて、この場を去るなんてことは考えもしませんでした。

 

でもアドさんの小さなつぶやきには、グッと来るものがありました。

 

踊る阿呆に見る阿呆、の論理に従えば、「走らなソンソン」のはず。エイドなんかしている僕らは、もしかしたら、本当の阿呆なのかもしれない。

 

でも、誰に頼まれたわけでもなく、これをやろうと決めたんだ。

 

そして最後のランナーは、きっと、まだゴールを目指して、最後の難関であるこの「来島海峡大橋」を目指して、走り続けているはずなんだ。

 

だから、ここで「彼」の到着を待つんだ。

 

僕も、お方さまも、アドさんも、Witchさんも。

 

それからは誰も一言も口を開かず、ただ、暮れなずむ道の向こうから、「彼」がやって来るのを待っていました。

 

「彼」とは…

 

 

 

 

 

 

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カープキティちゃんの、特徴ありすぎるいでたちは、一瞬でも網膜に映ろうものなら、忘れられるはずもなく…

 

カープキティちゃんの存在は、さすがの僕も、かなり以前から知ってはいました。

 

様々なウルトラマラソンに参戦した友人の投稿に、あの満面の笑みで写っているカープキティちゃんは、強烈な印象とともに記憶として脳内にキープされていました。

 

その彼が初めて僕らの最初のエイドにやって来てくれた時は感激しました!

 

しかしながら、この時は、ちょうど他にもランナーさんがたくさんいらして、あまりお話しもできず、エイドを出て行かれました。

 

 最初のエイド、「ゲオ因島エイド」を撤収後、われわれは第2エイドを設定するため、食材と容器を買い足し、大島へ向かいます。

 

ランナーの走路としては、バラ公園という場所から、海岸線に沿って、延々と、最後の最後に行く手を阻むラスボス・来島海峡大橋へと向かうことになっていました。

 

そこでわれわれは、このコンビニも自販機もない海岸線にエイドをセットしました。

 

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ここでも、たくさんのランナーさんに喜んでもらいましたが…

 

18時32分、スタッフ専用メッセージに、こんな連絡が入りました。

 

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なんと!ここに来て急遽、コースが変わった!!(^◇^;)

 

バラ園にあった道の駅が、18時で終了したので、寄る意味がなくなり、ショートカットルートになったのでした。

 

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海岸線でエイドをしていたわれわれは、この知らせを聞いてすぐにエイドをたたみ、317号線方面に向かいました。

 

その時、われわれの数キロ後方でエイドをされてたアドさんチームに会い、情報を交換しあいました。

 

その後、われわれは「よしうみいきいき館」付近にいらっしゃったランナーさんにフルーツを届け、まだ来るはずのランナーさんと邂逅できる場所を探しました。

 

そして、

 

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急遽、この場所でエイドを作ることにしました。

 

しばらくすると、アドさんチームが来られました。アドさんチームは、ずっと先に行って、ランナーさんの様子を確認して来られたのでした。

 

それによると、あと3組のランナーさんが残っている、とのことでした。

 

1組目は、自転車チーム。(鯛焼きウルトラは、自転車の使用も可)

 

2組目は、ランニングチーム。ここは二人で走っている、とのこと。

 

そしてラストが、カープキティちゃん。彼が最終ランナーで、スイーパー*1さんが自転車で3名、付いているとのこと。

 

ほどなくして、自転車チームが現れました。

 

僕たちの場所は、長い下り坂の途中。自転車チームは元気に手を振って、走り去って行きました。

 

しばらく待つと…

 

ランニングチームのお二人も、やって来ました。

 

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お二人とも、フルーツも、水分も、たっぷり摂取されました。

 

お二人とも100kmのゼッケン。ここは83kmの地点。

 

昼間は気温が30度もありましたが、この頃から急速に冷えて来ていました。

 

それでも、力強く、残り17kmを走破するために、旅立って行かれました。

 

ついに…。

 

残るは、「彼」一人。

 

でも、「彼」は、なかなかやって来ません。

 

アドさんの表情にも、ほんの少し、心配そうな影が見えて来ました。

 

気温はどんどん下がって来て…

 

周囲は暗くなり始めていました。

 

遠く、遠くの一本道が、どんどん見えにくくなっていました。

 

その時…

 

われわれがいる、反対側の歩道に、人影が見えました!

 

自転車です!

 

自転車ということは、スイーパーさん!

 

ということは、それに並走している「彼」がいるはず!

 

が…。

 

「彼」はいません。

 

そんなアホな…。

 

スイーパーさんしかいないなんて、そんなことあるわけがない。

 

でも、いくら目を凝らしても、自転車のそばにランナーの影は見当たりません。

 

妙な胸騒ぎがし始めた、その時!!

 

いた!!

 

自転車とは、反対側の歩道を走っていました!

 

そう、「彼」は、走っていました!

 

力強く、力強く、走っていました!!

 

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その姿が見えた時、熱いものがこみ上げて来ました。

 

あんな、「かぶき者」みたいな格好に身を包みながら、たとえ最終ランナーになろうとも、投げ出さず真摯に、走ることをやめない彼の姿は…

 

30度の日中、フリース素材のウエアに、白塗りの顔。笑っているようなメイクの裏に、苦痛を隠して。

 

「彼」は83kmを走って来たのだ…

 

そして残り17kmに、挑もうとしているんだ…

 

そう思うと、熱いものがこみ上げて来ました。

 

こみ上がってくるものを隠して、僕はなるたけ平静を装いながら、カープキティちゃんに話しかけました。

 

オレ:お疲れさま!!大丈夫?!

 

キティちゃん:大丈夫です!!…あのぉ、

 

オレ:うん?!

 

キティちゃん:タイガーさんのことですが…

 

オレ:うん?タイガーさんがどうかした?

 

キティちゃん:タイガーさんは、元気でしたか?

 

オレ:うん、タイガーさんは元気やったよ!

 

キティちゃん:そうですか!でもタイガーさんは、「違うトコ」も元気だったそうで!!

 

オレ:…。(ええーっ?!いきなり下ネタ?!)

 

さっきまでの感動を返してくれ!!

 

と言いたくなるような、キティちゃんの下ネタ攻撃を受けました!!(^◇^;)

 

※注:タイガーさんとキティちゃんは師弟関係にあり、なぜか、セクハラを巡って激しい確執(笑)が存在することを、のちに知ることとなる

 

キティちゃんはそばにあったベンチに腰掛けましたが、全身からは「元気オーラ」がみなぎっていました。まだいける、そう直感できました。

 

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彼と、自転車のスイーパーさんたちにもフルーツを召し上がっていただきました。

 

でも、フルーツはまだ少し残っていたので、僕は冗談半分で、

 

「キティちゃん、フルーツ残ってしまった。おかわりしたかったら、まだあるよ」

 

と言いました。すると彼は即座に立ち上がり、

 

「ください!フルーツのおかわり、ください!」

 

と言いました。

 

フルーツの残り具合を彼に見せると、

 

「残りぜんぶ、ください!」

 

と言いました。 

 

 

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ここに来て、こんなに食べれるんだ、なんてパワーだ…

 

「キティちゃん、コーラもちょっとだけ残ってるわ。もういらん?」

 

「ください!コーラ、残りぜんぶ、ください!」

 

キティちゃんは力強く言いました。

 

3名のスイーパーさんと、われわれ夫婦と、アドさんとWitchさんと。

 

ほんの短い間でしたが、カープキティちゃんを中心にして…

 

必ず彼をゴールへ導こうとする仲間たちとの間で、奇妙な友情めいたものが生まれたのを、僕は感じました。

 

そして、彼らは、最後に立ちはだかる、来島海峡大橋へと、戦いを挑んでいきました。

 

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彼を見送りながら、僕は漠然と思いました。

 

彼は、本当にそこにいたのかな。

 

酷暑の日に、フリースの着ぐるみを着て、白塗りをして。

 

彼は実在の人物なのかな。

 

100kmを走るウルトラマラソンなんて、常識人にとっては「狂気の沙汰」の範疇だ。

 

だから、もし、ウルトラマラソンの妖精がいるのだとしたら…

 

ウルトラの妖精がいるとしたら、きっと、「狂気の沙汰ないでたち」をしているに違いない。

 

それこそ、真夏にフリースを着て。白塗りをして。下ネタを口にして。

 

カープキティちゃんなんか、本当に存在するんだろうか…

 

もしかしたら、今、僕たちは、ウルトラマラソンの妖精と、しゃべっていたのかもしれないな…

 

日中の暑さにやられたせいか、僕はぼんやりとそんなことを考えながら、小さくなって行く彼の後ろ姿を見つめていました。 

 

 

*1:ウルトラマラソンで、最終ランナーに付いてフォローする係のランナーさんのこと