夫:もう、何十年も前の話やけど…
妻:なになに?
夫:流行した時計があってな。
妻:時計の形で流行ってあるな。スウォッチとかな。
夫:その流行は、薄くて、クラシカルな文字盤の流行やった。
妻:そうなんや。
夫:その一番の特徴が。
妻:うんうん。
夫:革ベルト、という部分やねん。
妻:革ベルトの時計ね。独特の雰囲気あるなあ。
夫:で、確か、セイコーやったと思うけど。その流行に乗じて、格安でカッコいい時計のシリーズを発売してな。
妻:うんうん。
夫:確か、1万円ジャストで、その流行にピッタリのタイプの時計やったわ。とても1万円には見えないヤツやった。
妻:1万円あれば、日本の技術やったら時計も正確やろうな。
夫:そうそう。クラシカルな文字盤に、高級そうな革ベルト。オレもさっそく購入して、自慢げにはめてたわ。
妻:時計ってテンション上がるよね。
夫:ところが、思わぬ落とし穴があったわ。
妻:えっ?
夫:革ベルトの時計なんてはめたことなかってんけど…
妻:うんうん。
夫:革ベルト職人は、おそらくデブの発汗を甘く見てるな。
妻:どういうこと?
夫:買ったときは「ライトブラウン」やった革ベルト、1週間もしてないうちに、「ダークブラウン」に変色や。
妻:汗を吸ったのか…。
夫:手首周辺の汗を、時計の革ベルトがぐんぐん吸収。革の放湿力を遥かに凌駕したデブの発汗量で、革の繊維質が吸収できる水分容量をオーバーして、革ベルトが汗をかきはじめるしまつや。
妻:デブの発汗、おそるべし…
夫:仕事で、たまーに、疲れて机に突っ伏して寝ようとしても、鼻のあたりに時計の革ベルトがあると、めっちゃクサいねん!!吐きそうになるほど、クサかってん!!
妻:革と、汗と…。それが腐りつつあるニオイか…。
夫:残念ながら、その時計は、わずか数カ月の命やったわ…。
妻:御意。