デブにとってスーツとは、脆く儚い(もろく・はかない)存在です。
上着は、常に汗が染み込み、ヨレヨレ。
腹回りに合わせれば腕が異様に長くなり、丈も長く。パッと見い、上着なのか、コートなのか分からない状態。
そしてズボン。今風に言うと「パンツ」ですか?
普通の人間でさえ、「ツーパンツ・スーツ」なんてのがあるくらい、ズボンは上着よりも傷みやすい存在なんですね。
それはまるで、デブのハートのようだね。
さて、ただでさえ傷みやすいスーツのズボン。
でも、デブのズボンは、普通の人間とはまた違った傷みかたをします。
お尻の、股の部分が擦れて、アッと言う間に生地が摩耗し、破れてしまうのです。
これは、どんな高級スーツでも同じこと。
僕が某百貨店で靴を販売していたころ。毎月、Grensonという高級靴を買っていってくれる顧客さんがいました。
彼も、大柄な体型。
ある日、彼がいいました。
「きのう買うた〇〇のスーツ、たった1日でケツ破れてもうた‼︎」
イタリア製スーツの代名詞とも言うべき最高級スーツの名前がそこにありました。
デブ・スーツのケツは、リキんで破れるんじゃないんです。
ただ、歩いているだけ。
それだけで、擦れて破れるんです。
歩いただけで破れるなんで、まるでデブのハートのようだね。
でも君よ、心配なんかしないで。
デブのハートをいやす、君の笑顔があるように。
デブのケツには「尻シック」があるのさ。
「尻・シック」。
ケツの病気=痔?
違う、違う。オモロイけどその読みはぜんぜん違う。
「尻シック」とは、ズボンの股に当てる布のことさ。
横文字全盛のファッション業界において、「尻」なんて、身もフタもない呼び方ってどうかとおもうんだけど。
「尻シック」は、わずか1,000円程度で、オプションで付けてくれるんだ。
わかるかい?
尻シックは、尻の病気、どころか、尻の悩みからデブを解放してくれる、ボラギノール的な立場の存在なんだ。
だから君よ。
僕のケツを締め付ける君よ。
できるならば、ケツで悩むデブにこれを伝えて。