ワラーチを履くことで足指や土踏まずを動かし、本来の足の動きを取り戻せる、という記事を書きました。
それに対して、このような質問をお受けしました。
サンダル系とVFF(ビブラム ファイブ フィンガーズ)の違いとかどう考えられてますか?
究極が本当の裸足だとするとサンダルよりVFFの方がより近いようにも思いますが、サンダルの効用を色々聞いて、どちらをメインにするか迷ってます。
質問者さんの意図はランニングで使用する目的で、だと思うのですが…
ランニング、という使用目的について考えた場合
走る用であれば、路上に存在する予測不可能な危険から足を守る、という点で、少しでも足を覆っている部分が多いVFFに分があると思います。
▼かなり初期に買った僕のVFF。とても地味な色使い(^◇^;)
ゼロドロップ
ベアフットラン(裸足ラン)におけるVFFの効能として、本当に重要なのは5本指が独立したあの外観ではなく、ゼロドロップという部分だと思います。ゼロドロップとは、つま先と踵の部分の高さの差がない、ということです。つまりヒールと呼ばれる部分がない、ということ。
それだけ裸足の状態に近いはき心地である、ということです。
ここは、理研で研究中の、Poseラン研究家で僕の師匠・ドクにお話をお伺いしましょう。あくまで個人の感想だ、と断った上で、このような所見を頂戴いたしました。
ソールの厚さは意外と重要です。フルマラソンであればややクッションもあって1センチほどの厚みがあると足先がだるくなるような疲れは確かに軽減される気がします。しかしソールが厚いとどうしても地面の情報をダイレクトに読み取れない部分が生じます。果たして地面の情報を読み取ることが重要か?という部分に関しては脳神経に一定の信号を送り続ける面として、また、地面の情報を走りにフィードバックする側面としては、重要といえます。
VFFはその名の通り(Vibram Five Fingers)、ソールはビブラム社のゴム一枚です。あの極限の薄さは、地面の情報を読み取るという点においてランナーにとって重要ですが、一方でフルマラソンあたりのレベルでは、若干のクッションがあった方が疲労の軽減という意味では役に立つのかもしれない、との意見です。
この製品が世に知られるきっかけになった本には、
ファイブフィンガーズはヨットレーサー用のデッキシューズとして開発されたもので、その狙いは、滑りやすい甲板でのグリップを強めつつ、素足の感覚を保つことにある。
とあります。本来の用途は、濡れた甲板で作業中、ぐらりと船が揺れても、足指は床をつかむように「掴み効果」と呼ばれる動きをすることができます。
こうして足と床の間のグリップ力が高められ、転倒の危険を減らすのが狙いであった履物です。
ワラーチ、サンダルの長所
VFFに関する上級シューフィッターとしての考察として、そもそも5本指の全てが独立している必要があるのか?という疑念があります。親指と、その他の指は、確かに独立して動くが、その他の4本の指はそれほど自由自在には動きません。
親指と他の4本をセパレーツさせている地下足袋を履いて、鳶職は危険な作業場で仕事をこなしています。あの形で十分なのではないか?
というのも、5本指の全てを独立させることで、5本指の全ての隙間に異物を挟み込んでいます。その状態と、何も挟んでいないサンダルばきの状態と、どちらが足指を解放しているかといえば、やはりサンダルばきに分があるでしょう。
上級シューフィッターとしては、ランニングではなく、まだ小さなお子さんにこそ、ワラーチで歩いて欲しいです。そうすること土踏まずや足底筋が発達し、歩行に適した足が育っていくからです。
また、大人でも、疲れた足の解放には、足指の解放度合いから見ても、やはりサンダルがbetterかと思われます。
ワラーチ、サンダルの短所
しかしながら、ワラーチ最大の欠点が、夏にしか履けない、ということです。
真冬に、分厚いダウンコートを羽織って、足はサンダルばき…なんて人物が目の前に現れたら、思わず心の中で警戒警報が鳴り響くと思います。
だからこの季節の普段ばきにこそ、ワラーチで足を解放させてあげてください、というのがお方さまの本意です。
VFF、ベアフット系シューズから、厚底ゼロドロップへ
VFFは、あの独特すぎる外観がどうしてもダメ…という人もいると思います。
そんな人にはベアフット系シューズで十分対応が可能かと思います。ゼロドロップで、指の周辺は動きやすく作られたシューズ。ニューバランスのミニマスなどは僕も愛用していましたが、どうやら生産をやめてしまった模様です。
▼愛用していたニューバランス・ミニマスMT20…。もう生産していないようです…
今ではinov-8なんかがその代表ではないでしょうか。
[イノヴェイト] inov-8 トレイルランニングシューズ F-ライト 195 IVT1618U1 BKW (BKW/27.0)
- 出版社/メーカー: inov-8
- メディア: Shoes
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また最近では、HOKAのように、ゼロドロップでかつ厚底、というのが主流になりつつあって、ランニングに関する考え方や流行の目まぐるしさには驚くばかりです。
▼HOKA ONE ONE (ホカ オネオネ)HUAKA(フアカ)
その辺り、ドクはどう考えているのでしょうか。
まぁ、現状のアツ底ブームは商業主義の産物である一面もありますし、フルが短距離とは言えそこそこ疲れる距離なこともあるでしょう。足の疲れが軽減されること=脚の疲れの軽減とも言えないことですので、それぞれ自分にあうシューズを選ぶのがいいかと思います。ゼロドロップに関してもフォームを変えるかシューズを変えるかの問題です。踵で走っている人には10ミリドロップとかのほうが走りやすいと感じるでしょうし、そこをゼロドロップがいいとは言えないと思います。
フルマラソンのことを短距離、そこそこ疲れる、などとおっしゃってるあたり、ちょっと憎たらしいですが、要は、
自分に合うシューズを選ぼう
ということですね。
そしていみじくも、この主張は上級シューフィッターの主張とも合致します。お方さまのシューフィッターとしての座右の銘は、
良い靴とはフィットした靴のことである
であります。
VFFでもきちんと試しばきをして、指の長さなどがフィットしているか、確かめないと意味はないですね。ワラーチにしても、大きすぎると前が引っかかってつんのめってしまいます。
今、お方さまは、よりフィット性の高いワラーチの紐の結び方について研究しています。
もう少ししたら、またこの場で発表しますね。
結論
・もし、ワラーチとVFFと、どちらが素足感覚なのか、という問いには、指の間に何も挟んでいないワラーチに分があると思われます。
・ただし、ランニング時に足を守る、という観点からはVFFの方が安全です。
・また、ベアフット系シューズを選ぶことで、デザイン面の好き嫌い問題も解決できます。
・さらに、テクノロジーの進化で、ゼロドロップの厚底、という全く新しいはき心地のシューズも存在します。