こちらの記事でご紹介した、ララムリ=タラウマラ族の住むコッパーキャニオンを、サバイバルインストラクターが4日間かけて走る番組
「生き抜け!原始生活2 断崖絶壁の長距離走」
がナショナルジオグラフィックTVで8/11に放送されました。
生き抜け!原始生活2|番組紹介|ナショナル ジオグラフィック (TV)
やはり、主人公のサバイバルインストラクターで、ブラッドリー・クーパー似のヘイゼン・オーデルが、峡谷を4日かけて走る、という内容でした。
この番組、完全なドキュメンタリー、とは呼べないかもしれません。明らかに演出部分もあります。でも、実際にサボテンから水分を摂取したり、ハチの幼虫を食べたり、ガラガラ蛇を捕獲したり、体を張っている部分もあって、とても面白い内容です。
きっとアメリカ人には、これくらいの演出的味付けがされたドキュメンタリー風番組が面白いと思われるんだと思います。
少し詳しくみていきましょう。
DAY 1
何キロ走るの?
「銅峡谷」。コッパーキャニオンを番組ではこう訳していました。500年前にスペイン人によって侵略された際に、コッパーキャニオンに逃げ込み、走ることで侵略者の魔の手から逃れ続けたララムリ=走る民族、のことが簡単に紹介されます。
どうやら、ヘイゼン・オーデルはここでしばらくララムリと暮らし、彼らの生活術などを会得した上で、ララムリが走る長距離コースに出る、ということのようです。
ウリケと呼ばれるコースに出る、と簡単な説明があります。ウリケという地名はよく聞きます。「BORN TO RUN」にも、「ウリケ・タラウマラ族」という人々が登場します。
このウリケというコースを4日間かけて走る、というのですが…
いったい、何キロ走るのか、という肝心の説明がありません。終盤になって、「3日間で1800メートルくだった」という一節が出て来ますが、スタートがそもそも高地からのスタート、とも行っているので、1800メートル「登った」わけでもありません。
いったい、何キロの道を、4日かけて走るんだろう…
という素朴な疑問を乗せて、番組はどんどんと進んで生きます。
食料の調達
この番組の醍醐味は、水と食料の現地調達方法です。
今回はリュウゼツランを食料としていました。
リュウゼツランはテキーラの材料として知られていますが、僕は以前読んだ宮部みゆきのある推理小説のテーマになっていて、たいへん思い入れのある植物です。
さて、リュウゼツランには毒性があり、加熱しないと、そのままでは食べることができないそうです。食べてしまうと
・喉が腫れ
・激しい嘔吐
・下痢
などの症状が出るとのこと。
ワラーチ紐で火おこし
ヘイゼンはこの葉を大量に刈り込み、火をおこします。この火のおこし方が、ワラーチの紐を使っていました。
枝を使って、ワラーチ紐を弓矢の弦のようにはり、中央に結わえ付けた棒を弓を動かして回し、下に置いた木に擦り合わせて摩擦で火を起こすやり方です。
これを「弓きり式発火法」というらしいのですが…
池田家のサバイバル・インストラクターであるお方さまによれば、「弓きり式」は極めて一般的な火おこし術である、とのことでした。
ヘイゼン・オーデルはやり慣れているのか、あっという間に大きな火をおこします。お方さまがいつもみているサバイバル番組では、火がなかなかおこらない場面などによく遭遇するので、
「あんなに簡単に火ってつくもんなん?」
と聞いたところ、
「火がつくかどうか。それはその地方が乾燥しているかどうかによって大きく異なってくる。ジャングルなど湿った地帯では火はなかなかつかない。ここは乾燥地帯やから、比較的火はつきやすいと思われる」
と評論家風の口ぶりで言っていました…
地面に穴を掘り、火を入れ、大量の燃料と石を入れ、じゅうぶん熱したところに先ほどのリュウゼツランを投入。一晩、蒸し焼きにする、とのことでした。
DAY 2
リュウゼツランを食す
地面を掘り起こすと、リュウゼツランの葉肉はまるで牛肉のような色になっています。ヘイゼンによれば、「毒の塊がカラメル化して食べられるようになった」とのことでした。「糖質と炭水化物の塊」だそうです。
実際に、それをムシャムシャと食べていました。
「リュウゼツランが食べられる、とは、他のサバイバル番組では紹介したことがない…」
と我が家のサバイバル・インストラクターが言っていました。
ヘイゼンのランニング
ヘイゼンは走ります。一日に何キロ走っているのかは教えてくれませんが。そのフォームは、まったく走ったことがない、と言ったものではありません。
ですが、省エネに徹底した、ウルトラランナーの走りでもありません。
あくまで想像ですが、一日の移動距離は10kmから、MAX20kmといったところではないでしょうか。
数値的な説明を好む
ランニングの際の体への負担についての説明があります。
・体重の5倍の力がひざ関節にかかる
・肺は歩行時の10倍活動する
・筋肉は20倍の熱を持つ
この熱を下げるために、彼は見つけた水辺に飛び込みます。水中では空中より25倍の速さで体熱を下げてくれるのだそうです。
また、番組中頻繁に「熱射病」という言葉が出て来ますが、ここはあえて「熱中症」に置き換えてみるべきだろうなあ、と思っていました。
栄養素の摂取
葉っぱの裏に潜むアブラムシを食べることで糖分を摂取するヘイゼン。
たんぱく質の摂取に苦しみます。
パチンコ(SLING SHOT)を使ってリスを狩ろうとしますが、まったく命中せず。
「タバチン」というマメ科の植物を見つけ、それでタンパク源を得ていました。
DAY 3
サボテンから水分を
ララムリから教えてもらった岩場の水が枯れていて、水分の摂取が緊急の問題になって来ました。
「土人の櫛柱(CARDON BARBON CACTUS)」という名の、極めて鋭いトゲが無数に生えているサボテンを切り取り、水分を摂取することにします。
「砂漠で喉が渇いたら、サボテンから水を飲め」
子供の頃、何と無く聞いて知っている知識。それを目の前で実践してくれます。
ただし!!
サボテンは85%が水分であるが、毒素も含んでいる。あまり摂取しすぎると、のちのち、体調を崩す。
という事実は知りませんでした。
五寸釘のような、切っ先が極めて鋭い棘を持つ「土人の櫛柱」。ヘイゼンは苦労しながらも、熟練の手さばきでこれを伐採し、幹を半分に切ります。
その身をかじり、水分を吸引し、木質の髄をペッと吐き出す。
これがサボテンからの水分摂取法です。
魚釣り
またリュウゼツランを使います。葉の先端の尖った部分を噛んで引き出すと糸状の繊維質が出て来ます。これをねじって糸がわり。
別の種類のリュウゼツランの棘が針がわり。
虫を餌に、魚を釣ると、ナマズが釣れました。
お方さまが小さくつぶやきました。
「他のサバイバル番組でも、何回も魚釣りに挑戦する場面見たけど、一回たりとて、成功したところ見たことない…」
何が言いたいのかは、詮索しないことにしました。
FINAL DAY
「残りは数キロ」最終日の残りは数キロだそうです。
川を渡らざるを得ない場面が出て来ました。
背負っているものを手に持ち、万一、溺れるようなことになればすぐに投げ出せる準備をするヘイゼン。
浅瀬を、棒を杖代わりに渡っていると、急流にのまれ、あわや!!
この、あわや!!の場面が、本人撮影のGoProの映像と、引きで撮った映像が交互に出て、緊迫感を演出してくれますが、こういうところは不要かなあ、と思いました。
引きの映像ではGoProなんか持ってないから、溺れそうなシーンを何回かに分けて撮影した、ということになるので、ちょっと興ざめしてしまいます。
また、我が家のサバイバル・インストラクターによれば、
「川を渡るなら、あんな浅瀬の急な流れの部分を渡るべきではない。ワニなど危険生物がいない、とわかっているなら、もっと深い、流れが穏やかな部分を渡るのが鉄則である…」
と言っていました。
「ワニの危険があったのでは?」
という僕の意見に、我が家のインストラクターは首を振りました。
「コッパーキャニオンのような高地に、ワニは生息しない」(お前はナニモンだ〜(^◇^;))
まあ、最後にアメリカ人向けのスリルな演出があった、と解釈しておきましょう。
このあと、道に生えていた「チルテピン」なる唐辛子を食べて悶絶する場面があります。ララムリから教えてもらい、集中力を高めるために食べて見たのですが、ハラペーニョの40倍の辛さだそうで、さすがに涙を流して咳き込んでいました。
こうして、彼はゴールである、誰だか視聴者には紹介してくれない、ララムリの家に到着します。
結局、4日間で何キロ走ったのかは最後までわかりませんでした。
しかしながら、コッパーキャニオンの厳しい自然環境についてはよくわかり、そういう意味ではとても興味深い番組でした。
8月16日の11時から
及び
8月17日の8時から
再放送があるみたいです!!