スティーブン・ソダーバーグ監督が、引退宣言を撤回してまで撮った意欲作、と言うことで公開前からとても楽しみにしていました。
彼の作品と言うことで、俳優陣もとても豪華。
特に予告からダニエル・クレイグの怪演が目を引いていました。
チャニング・テイタムはかなり贅肉を増やして。今までのアクションヒーローものとはかなり違ったイメージで。
新スター・ウォーズのカイロ・レン役のアダム・ドライバーは一目見たら忘れない風貌をしています。
そしてヒラリー・スワンク。彼女がなかなか出てこないので驚きました。後半、あまり出番がない役でした。ヒラリー・スワンクをあんな贅沢に使うとは!!
スティーブン・ソダーバーグ監督
といえば「オーシャンズ」のシリーズが有名ですが、あのシリーズって実はけっこう賛否両論あるのではないかと思います。
有名な俳優が揃っているものの、すべてを活かしきれているか、といえばやや首をかしげざるを得ない作品もあり。
また、演出にも疾走感がなく、正直なところ、中だるみの箇所が多く見られます。
監督本人が、
「本作は『オーシャンズシリーズ』の真逆の作品だ」
と言っているように、オーシャンズのDNAを持ちながら、犯罪ドリームチームとは言い難いポンコツたちを主人公にしているところに、オーシャンズとは全く違った面白さがあります。
僕はオーシャンズのシリーズよりも好きでした。
ダニエル・クレイグ
今の007が有名ですが、寡黙で筋肉質でストイックなボンド。彼が演じる役はどこか似通っています。「ドラゴン・タトゥーの女」でも彼の役は真相を究明するジャーナリストでした。
ロンドンオリンピックの開会式でも、女王陛下をエスコートして飛行機から会場にパラシュート降下すると言う役を演じました。もはやイギリスを代表する俳優と言えます。
ですのでタトゥーを入れまくり、狂人のように笑う役を彼が演じるとは考えもしませんでした。
もう二度とボンド役などやりたくないとよく口走っているので、こんな無茶苦茶な役をやって見たかったのでしょう。
チャニング・テイタム
シュワちゃん並みの筋肉で、大統領を助ける役なんかを得意とする彼が、田舎で落ちぶれた青年役。このギャップも面白い。
犯罪もので言うといわゆるプランナーなんですが、あまりに計画が完璧…。ちょっと完璧すぎでそこにやや違和感があったかなあ。
しかし娘を愛し、弟と妹を思いやる愛すべき人物を好演しています。
アダム・ドライバー
彼はすごくいいです。カイロ・レンは悩めるダース・ベイダーといったところで、悪役にまだなりきれていない未熟さがよく出ていました。
本作では一転して、片腕がないバーテンダーで、兄貴の犯罪計画を手伝うのですが、なんか、そこに立ってるだけで笑ってしまうような、独特なコミカルな存在感がありました。
いい俳優になりそう!!と思いました。
ヒラリー・スワンク
物語の後半1/3にしか出てきません。犯罪が未遂に終わったあと、それを調査しにやってくるFBIの役です。
自信満々の態度で事件現場で振る舞い、真相に近づいて行きます。
STORY
ローガン家の呪い
ウエストバージニア州で炭鉱夫をしているジミー・ローガンは、ジョン・デンバーの歌を愛し、別れた妻に育てられている実の娘を愛する心やさしい男であった。
学生時代はフットボールの名選手だったが膝の怪我でプロの夢も断念。
その足のことを雇用時に申告していなかった、という理由で炭鉱をクビになるジミー。
おまけに別れた妻も、新しい夫と隣の州に引っ越すという。愛する娘に会えなくなってしまう…。
弟のクライドの左腕は肘から先がない。軍に属していた時に爆発で吹っ飛んだのだ。今では酒場でバーテンとして働いている。
近所に住んでいる人は皆、こう言う。「ローガン家の呪い」と。
クライドの腕のことをバカにする客は、たとえ有名人でもジミーは黙っていなかった。テレビによく出ている大富豪・マックスを殴りつけるジミー。何人もの取り巻きがいるのでジミーは返り討ちにあうが、クライドは店の外に停めてあったマックスの高級車に火をつけ、ジミーは取り巻きのスマホをその火に投げ込む。
兄弟のチームワークは完璧だ。
現金強奪計画
「カリフラワー」とジミーがクライドに言った。それは2人の暗号で、犯罪を行うことを意味していた。
ジミーの作戦はこうだ。
"NAS CAR"というカーレースの一大イベントが近々、開催される。何週にもわたって開催されるそのレースには大金が絡んでくる。
つい最近、その会場の一部が崩落し、穴を埋めるためにジミーたち炭鉱夫が呼ばれた。そこでジミーは会場の地下の様子、パイプによる紙幣の送金方法、電子錠の解除コード(クリスマスの"1225")などを知る。
ジミーはその知識を活かし、NAS CAR開催中、もっとも人気のない大会の日を選び、警備も薄いことを利用しカネの強奪をしようというのだ。
金庫破りのジョー・バンク
しかし、金庫の爆破のプロであるジョー・バングは刑務所に収監中。半年後に保釈予定。
計画の決行は5週間後。
刑務所にジョーの面会に行ったジミーとクライドは、ジョーに説明する。
「計画の間だけあんたを脱獄させ、計画が終わると、何事もなかったかのように刑務所に戻ってもらう」
ジョーは刑務所に入る原因となった仕事で奪った10万ドルを秘密の場所に隠している。そんな危ない橋を渡るつもりはない、と断ろうとしたら…。
「家のブランコの下に埋めていたあんたの10万ドルのことなら、あんたの弟が自分のオンナに喋ったよ。オンナはそれを掘り出して、違う男と逃げた」
ジョーは計画に加わる代わりに、自分の2人の弟も加えることを条件とする。この2人がマヌケな2人なのだが、ジミーは仕方なく仲間に加える。
計画遂行
まずクライドがコンビニに車ごと突っ込む。過失、ということで90日間の収監となる。ムショの中でクライドはジョーと組み、彼の脱獄を手伝う。
ジョーの2人の弟は、ジョーの秘密道具を森から回収してくるなど、当たり障りのない役割だ。
運転手役は、ジミーとクライドの妹で、美容師をしているメリーが担当。運転が得意で、道路状況などを熟知しているカーキチだ。
色分けしたゴキブリをカプセルに入れて流し、どのパイプがどこに繋がっているかを確かめる。
問題発生
しかし、問題が発生した。NAS CAR会場の地下で行われている工事が、予定を早めて終了することになったのだ。
決行日を早めるしかない。
その日は…。
もっとも集客が期待される、最大のレースの日だった。当然、警備ももっとも厳重となる。
しかしやるしかなかった。
犯行当日
刑務所内でジョーが腹痛を起こし、医務室に運び込まれる。トイレに向かうのを手伝うのはクライドだ。
トイレの器具を外し、屋外に出る2人。
救急車の底部に人間が1人、入り込める箱を装着し、それぞれがその中に入る。刑務所から出るとき、車は底部も鏡で確認されるが、うまく車と同化しているので見つからない。
ムショでは…
一方、刑務所内では、事前にジョーが買収しておいた仲間が中心となり暴動を起こす。食堂内はロックアウトされ、数名の看守が人質となったが、事なかれ主義の所長は報告をせず、自分たちだけで解決しようとする。
これでジミーとクライドが不在であることはバレない。
全員集合
メリーが運転するクルマは猛スピードでジョーとクライドをNAS CAR会場まで運ぶ。下手をすればスピード違反で捕まるが、ジミーはそれすら手を打っていた。
ジョーの間抜けな弟たちが、説明書通りに爆薬を作り、配電盤を爆破する。NAS CAR会場ではカードが使えなくなり、客は全て現金でしか支払えなくなる。
会場に到着したジョーとクライド。ジョーは売店でグミや接着剤などを購入し、なんとそれらで爆弾を作る。
ジョー、クライド、そして合流したジミーは、送金用のパイプが崩落でむき出しになっている箇所へいき、パイプにジョーが作った爆弾を吸い込ませる。
爆弾は金庫の中にあるゴール地点で爆発し、そのパイプは破壊される。
そのパイプを吸引して紙幣を吸い上げると言う作戦だ。
ところが、吸引器の調整のトラブルでクライドの義手を吸引してしまったり、吸引したカネを運び出す際にマヌケなジョーの兄弟が扉を開けられなかったり、いろいろな失敗は重なるものの、なんとか仕事は軌道にのる。
NAS CARのレースそのものは、あの嫌味な大富豪・マックスがスポンサーになった選手が、試合前に無理やりマックスに飲まされた飲料が原因で集中力を欠き、リタイアになった。
マックスがその選手と言い争いになっているところに、作業を終えたクライドが通りかかり、殴り合いの大げんかになる。
ムショでは…。その2
刑務所内では、ジョーが買収している男が、ロックアウトが続いている食堂で偽の火事を起こす。
消防署の横で、消防士に変装したクライドとジョーが、走り出した消防車に飛び乗り、刑務所に侵入し、何事もなかったかのように刑務所に戻る。
天使の歌声、ジミーの改心?
ジミーは愛娘が出場している美少女コンテストに赴く。
娘は、リアーナの「アンブレラ」を歌う予定であったが、パパのために「カントリー・ロード」を歌う。
ここはウエストバージニア。この地を歌った「カントリー・ロード」は聴衆の心を鷲掴みにする。
会場は「カントリー・ロード」の大合唱となり、娘は優勝する。
ジミーは…。
娘への思いにほだされたのか…。
盗んだカネを満載したトラックを放置し、家に帰るのであった…。
女FBI
翌朝、NAS CARで大掛かりな強盗があったにも関わらず、カネが帰ってきたと言うニュースが世間に衝撃を与える。
FBIが捜査を開始。担当は女性捜査官・サラだ。
あのマックスが、犯人を見たと証言し、サラたちは聴取に向かう。
あの日、クライドに殴られて花を骨折しているマックスは、クライドへの怒りをさらにぶちまける。
「犯人は片腕のバーテンダーだ、その兄は片足が不自由だ。あの日、あの地下に片腕のバーテンダーがいて、オレはそいつに殴られた。強盗しているところを見たわけじゃないが、あんな場所にいるのはあいつが犯人である証拠だ」
サラは品性下劣なマックスを嫌悪しながらも、その証言には信ぴょう性を感じる。
サラは捜査を進め、クライドとジミーの存在にたどり着く。
金庫破りの天才・ジョーに2人が面会に来て、その数日後にクライドが事故を起こし同じ刑務所に収監、どう考えても出来過ぎた偶然だ。
半年後…。
ジョーが出所した。
ジミーがカネを返したので、もちろんジョーへの分け前もない。
ジョーはクライドの店による。
クライドもその後、ジョーにあっていない、とのことだ。
ただ…。
クライドの義手が、前の義手よりもずっと高級そうな義手になっていた…。
ジョーは自分の家で、やけ酒を煽っていた。すると玄関先で金属音が。
外に出ても何もない。ただ、スコップが一本、落ちていた。
まさかこれは…。
ジョーはそのスコップで、弟の嫁が盗んだ10万ドルの隠し場所であるブランコの下を掘る。
すると、大量の紙幣が満載されたゴミ袋が出て来た!!
ジミーの仕業に間違いない!!
ジミーのトリック
ジミーはあの日、間抜け兄弟が紙幣を運び出す際、わざと扉を開けにくくして、兄弟とジョーが現場からいなくなるように仕向けた。そして妹も合流させて紙幣の吸引を続け、別の袋にカネを入れると、事前に買収していた別の仲間に本当のゴミと一緒に回収させておいたのだ。
こうして、大量に持ち出した紙幣はさも心変わりを起こして返却したように見せかけ、一部のカネはゴミの埋め立て地に埋められた。
事件からかなりの日数が経ち、料金滞納で携帯電話が止められ、位置が把握できなくなって、初めて彼はゴミの山へ行き、埋められているカネを掘り出したのであった。
大量の金が強奪され、その大半が帰って来た。正確な被害額など誰にもわからないが、差額は保険会社により補填された。
NAS CAR主催者はこの決着に大変満足し、FBIのサラにもう捜査の終了を告げるのだった。
エピローグ
ジミーはその後も、刑務所で暴動を起こしてくれた受刑者にも手厚い礼をし、彼に親切にしてくれた皆にたくさんのお礼をする。
クライドの店に皆が集う。
メリーはジョーといい仲になっているようだ。
ジミーも、彼の体を心配してくれたかつての同級生とよろしくやっている。
反対側の椅子に、この仲間とは何の関係もない女性が座っている。興味深そうに、彼らを見ている。
クライドは彼女に酒を注ぐ。
彼女はしばらくこの地に滞在したいとクライドに言う。
クライドは知らなかった。
彼女が、FBIのサラであることは…。