みなさんこんにちは!お方さまの靴ハカセ講座です。
大阪は朝から強めの雨が降っています。お足元、お気を付けください。
今回は、こんな日に履きたいレインシューズについてのお話です。
(注意:この項目における「防水」と言う言葉は、「完全防水」と言う意味ではありません。靴はどんなに優れた防水性があっても、繰り返される屈曲等により耐久性が低下したり、画鋲を踏んで穴が開いたりして、水が侵入してくるケースがあります。
そのため、靴で「完全防水」と言う言葉を使うことは、「景品表示法違反」にあたり、使ってはいけません。)
レインシューズ
種類
レインシューズの種類には、大きく分けて3つあります。
①〝長靴〟に代表される、ゴム製のもの
②〝メンブレン〟を内蔵したもの
③合成皮革を使用した、セメント製法のもの
それぞれについてみていきましょう。
①〝長靴〟に代表される、ゴム製のもの
製法
各パーツを接着剤で貼り合わせ、その後、加硫(かりゅう:硫黄を加えて熱を与えること)することで、ゴムに耐久性と弾力性を加える。
長所
丈夫で防水性が高い
短所
・重い
・ムレる、夏は暑い
・天然ゴムの性質で、白い粉が噴き出てくる(劣化を防ぐため、天然ゴムが自ら噴き出すもの)
②〝メンブレン〟を内蔵したもの
〝メンブレン〟とは:膜を意味します。靴業界では、「ゴアテックス」や「アウトドライ」など、膜状の防水シートのことを指します。靴のアッパー(表革)とライナー(内張り)の間に袋状に、このメンブレンを内蔵しています。
長所
・防水効果が高い
・軽い
・蒸気は通すので、ゴム製レインシューズより通気性に優れる
短所
・デザインがダサい……製造方法に制限があったり、「吊り込み」という工程が思い切ってできにくい、などの理由から、シャープなデザインが作りにくい。どれもモッタリしたデザインが多い。
・穴が開いてしまうと、侵入してきた水が外に出にくいので、かえって靴内に水がとどまってしまい逆効果になる
・値段が高い
③合成皮革のセメント製法のもの
パンプススタイルのレインシューズやソールの薄いスタイリッシュなデザインのものは、このタイプが多い。
長所
製造がしやすいセメント製なので、ヒールタイプなど、スタイリッシュでオシャレなデザインが多い。
短所
防水効果が低いので、強めの雨の日に履くと、接合部などからすぐに浸水してくる
レインシューズの注意点
かかとのすり減りは、修理対応できないことが多い
ヒールに釘を打つと防水効果が損なわれるので、化粧交換(カカト面部分の取り替え)は接着剤でしか対応できませんが、接着剤は雨の日に使うと弱くなるので、カカト面は外れやすくなってしまいます。
道路が冠水するほどの豪雨の場合、レインシューズは危険
靴のトップライン(その靴の最上位部分)より上に水位がくると、レインブーツの中に水がどっと侵入し、歩行できなくなってしまいます。
冠水するほどの豪雨の場合はレインシューズは意味を持ちません。迷わず足に密着して脱げにくい、普通のヒモ靴を選びましょう(スニーカーなどのことです)。
合成皮革は数年で劣化
ポリウレタン製のアッパーが多い合成皮革は3〜5年で劣化(加水分解)します。出番が少ないレインシューズですが、購入した年月を把握しておきましょう。
その他
インポートシューズのメンブレン使用、表革は…。
海外製の靴では、撥水加工を施して「いない」本革にメンブレンを内蔵している、というパターンが多くみられます。
これは、本革に撥水加工を施すと、靴クリームが浸透しないためです。
海外では、靴は靴クリームを使って手入れをする、という前提で作られているからです。
よくクリームを塗り込んだ、厚めのソールの靴であれば、たとえレインシューズでなくとも、軽い雨程度ならじゅうぶん弾きます。
逆に、手入れをしていない革は乾燥しているので、雨に触れるとすぐに浸水してしまうので要注意。
スエードは雨に弱い、は誤り!!
雨が多いイギリスなどでは、雨の日にあえてスエードを履く人が多いです。ただし、防水スプレーをタップリとふりかけて。
防水スプレーは、表面に凸凹がある素材によく乗る(溶剤がとどまる)ので、表面がツルツルの表革より、スエード素材の方が効果が高いためです。
ただし、履いた後もきちんとお手入れしなければ、美しい毛並みが損なわれるので要注意!!
船で履くデッキシューズ、防水加工は??
船のデッキで履く「本物の」デッキシューズには、撥水加工すらされていません。(革にオイルを含ませた「オイルレザー」で水を弾く種類のものはあるようです)
デッキシューズは濡れることが前提で作られています。そのため、わざと大きく開けた靴底の縫い目の部分から水を逃げやすく作っているのです。
ソールはもちろん、しっかりとグリップが効くゴム製。
デッキシューズ「風」の靴は巷に溢れていますが、「本物」のデッキシューズというものは、上級シューフィッターのお方さまでさえ、滅多に見ることはないとのことです。