「白玉(しらたま)や!!」
とお方さまは叫びました。
「今度の鯛焼きウルトラのメイン食材は白玉で行こう!!」
「白玉って、あのぜんざいとかあんみつに入ってるやつ?」
「そう!!去年は、他のエイドは“そうめん”とか“うどん”とかやってたけど。火を使う食材は我々には難しいやん?事前に白玉を作っておいて冷凍して。現場で解凍するねん。白玉やったら食べやすいし、寒天に黒蜜まぶして白玉とまぶしたら、お腹も膨れるし」
「お!!いいね!」
実験に取り掛かったのは4月28日でした。白玉など作ったこともないお方さまは、さっそく白玉粉を購入。
水で練るのですが、水の加減が難しく。良い加減に柔らかくするのに四苦八苦。
練った白玉をひと口の大きさに丸めて湯がいて、水で冷やせば出来上がり。
きな粉と黒蜜をまぶしてみました。とても美味しく食べやすい。
「これやったらランナーさんも喜んでくれるわ!!」
お方さまは自信を深めていました。
このほか、前回も好評だったフルーツも提供したい。お方さまのこだわりで、グレープフルーツなどの皮は全部むいて、ランナーさんが一口で食べれる状態にしてあげたい。
そのため、皮を剥くのにかなりの時間が必要になります。
そのほかにもたくさんの段取りが必要。決して手間が良い方ではないお方さまは、事前に作っておいて冷凍庫で凍らせ、当日に解凍する、という段取りが必要です。
白玉は凍らせ、寒天は冷蔵庫で保存
↓
解凍し、盛り付けて、の実験も行い。
柔らかくてモチモチの白玉と寒天の相性もバッチリ。プチあんみつの出来上がりです。
お方さまエイドの方針
第1エイド(20km地点)=因島ゲオ前
プチあんみつを提供。
第2エイド(60km地点)=大島・来島海峡大橋てまえ
フルーツ入り炭酸水を提供。
お方さまエイドの方針は固まりました。
続々、溢れるアイデア
さらに、アンディご夫婦にお呼ばれして行った神戸トレイルの際、焼きそば屋さんで飲んだ、凍らせたレモン入りチューハイが最高で。
レモンも凍らせて持って行こう!酒好きには、焼酎もちょっと足せば喜ぶかも!
アイデアはどんどん浮かびます。
レモンも大量購入。
また、
よくキュウリのお漬物とかエイドで見るけど!!ピクルスにしたら甘酸っぱくてもっと美味しいはず!疲れたランナーにはピクルスが嬉しいはずや!
と、大根やキュウリ、セロリなどをお酢に浸けてピクルスも作ることに。
心を込めた、大量の白玉
ランナーは約100人。
白玉は、1人につき3粒、と計算すると、300粒が必要。
こうして、本番10日前に300粒の白玉を作り。一粒ずつがくっつかないようにして凍らせました。
当日。
そして10日後。
ついに鯛焼きウルトラピクニック当日。
前日のギリギリまで仕込みに追われていたわれわれ。7時半に尾道駅前スタートのランナーさんに間に合うように、午前2時に八尾の自宅を出発しました!
激しい雨もありましたが、広島に近づくにつれ雨は無くなってきて。
なんとか到着!!
めったに会えない、あんな顔(仮面?)やこんな顔。
いつでも会えるはずなのに、ここで会えば嬉しさ100倍、な皆さんも。
ランナーを8時過ぎまでお見送り後。われわれはどうしても行きたかった「はっさく屋」さんへ。
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こちらの「はっさく大福」が大好きで。お土産も含め、たくさん購入。
想定外のトラブル!!
ところが!!ここでトラブル発生!!
メイン食材の白玉が、ぜんぜん解凍できていない!!
大阪→尾道までの5時間くらいで解凍できるかな、と踏んでいましたが。
クーラーボックスに入れていたせいか、まだカチンカチンのままでした!
そのため、はっさく屋さんの駐車場で白玉をクーラーボックスから出して自然解凍を試みることに。
はっさく屋さんを出たのが9時。
第1エイドにランナー到着は10時過ぎの予定。
たぶん解凍できるだろう、と思っていました。
第1エイド地点、到着。
去年と同じ、ゲオ因島店前の空き地に到着し、エイドの準備にかかりました。
が…。
メイン食材の白玉が…。
どうもおかしい。
解凍は、確かに進んでいるものの…。
食感が、変なのです。
解凍できているのに…。
食べても、真ん中の部分に、何か硬い、「芯」のようなものが残っていて…。
白玉独特の、あの柔らかい感触になりません。
ランナー到着まであと30分。
「『芯』みたいなんが、取れへん…。こんな白玉、ランナーさんに出されへん…。どうしよ…」
不測の事態に、お方さまは完全に「フリーズ」状態。
確かに、お店で食べるようなフワフワ、もちもち食感ではありませんが、決して食べられないってほどではありません。
でもどうしても、中心部分が硬い白玉が許せないお方さま…。
作戦変更
変なところでガンコなお方さまの性格をよく知っている僕は、このままではラチがあかないことに気づいていました。
「作戦を変更しよう!第2エイドで出す予定のフルーツを第1エイドで出そう!で、白玉はさらに解凍を進めて、芯が取れたら第2エイドで出せばいい!!」
と、30分前に急遽、提供食材を変更しました!
フルーツもまだ凍っていましたが。
冷やしていない炭酸水をそいつに注げば、凍ったフルーツが氷がわりになって、美味しい飲み物になるはず。
白玉問題にまだくよくよしていたお方さまに、
「切り替えていこう!!切り替えて!!」
と声をかけ、フルーツ準備に取り掛かりました!
予想外の「寒さ」。冷たい飲み物は必要なのか?
ただし…。
19日のしまなみ海道は、予想外の肌寒さ。
冷たいフルーツ入り炭酸水を、ランナーの皆さんが欲しがるのかどうか。
それがまったくわかりませんでしたが…。
ところが、ここまで約20kmを走ってきたランナーさんはさすがに暑かったみたいで。
凍ったフルーツ入り炭酸水は大人気!
皆さん、美味しい、美味しい、と言って飲んでくれました!!
直前まで、白玉がうまくいかず暗い顔だったお方さまも、このランナーさんの笑顔に自然に笑顔が戻ってきて。
「凍ったレモンもありますから!焼酎足してレモンチューハイにしても美味しいですよ!」
と自分からランナーさんの声をかけていました!
こうして、ランナーさんの笑顔に逆に助けられたわれわれの第1エイドは終了。
伯方島エイドを見学
スーパーでお弁当を食べたのち、伯方島のエイドに寄りました。ここは四国チームが鯛めしをエイドで提供されているはず。
われわれの素人エイドとは違って、極めて本格的な鯛めしエイド!!
しかも、主催者・タモンさんが、
「ぜひエイドスタッフにも鯛めしを!」
と言ってくださってたらしく、僕たちにもお裾分けをいただけました!
伯方島に最初のランナー達が到着されたので。
われわれは急いで、第2エイドの大島「来島海峡大橋」のたもとまで向かいました。
鯛の身がゴロゴロ入った鯛めし。「買ったら1500円はするな!」と言いながら美味しくいただきました!
第2エイド。白玉はどうなったのか…。
かんじんの白玉は…。
結局、解凍できても中心部に硬い芯は残ったまま。
実験はしたけれど。
われわれは白玉を凍らせ、解凍して食べる実験は行いました。
が、それはわずか1日程度、凍らせただけ。
10日間凍らせると、解凍しても白玉は変質して、芯が残ってしまうようです。
使えなかった300粒の白玉。
これを出しても、怒りだすランナーさんはいないでしょうが…。
お方さまはこの質感がどうしても納得できないようで。
メイン食材に考えていた白玉は、もう出さないようにしよう…。
と決めました。
心を込めて作った300粒の白玉でしたが…。
その代わり、抹茶寒天をやや多めに入れて、きな粉と黒蜜をたっぷりまぶしたものと。
プチトマト、ピクルス。
そして第1エイドで残っているフルーツも、再度、フルーツ炭酸水として提供。
本当のエイドは、ランナーの皆さんでした
抹茶寒天の黒蜜和えは、疲れたランナーさんの喉にスルスルと入るみたいで、また、甘いものが欲しかった疲れた体に大好評で!
皆さん、こんな素人エイド、しかも失敗したエイドを、
喜んでいただいて、
笑っていただいて、
「ありがとう」って言っていただいて、
こちらこそ、本当にありがとうございました!!
ポンコツ夫婦ですので、白玉の変質にまで考えが及ばず。
プチあんみつをお出しする作戦はけっきょく、かないませんでした。
皆さんは僕たちのエイドが「力になった」とおっしゃってくださいましたが。
本当は、僕たちの方が皆さんから力をもらった側だったんです。
年にいちどのお祭り「鯛焼きウルトラ」は厳しいレースと戦うウルトラランナー達の心のオアシス。
そこではみんなが笑顔で優しく。
失敗しても落ち込むヒマさえ与えないくらいの笑顔に包まれ。
お方さまエイドは、ずっとずっと、幸せに包まれておりました!!
もし来年も開催されるなら、また是非、同じ場所でお会いしましょう!!