金曜深夜のドラマ「dele/ディーリー」が実に面白い!!
「dele/ディーリー」とは
依頼人の死後、デジタルデータを削除する仕事をしている、山田孝之演じる坂上圭司が、「何でも屋」を生業としていた菅田将暉演じる真柴佑太郎という相棒を得て、依頼人の死の真相に迫る、という形式の一話完結型ミステリ。
「死後のデジタルデータの削除」という、10年前には考えもしなかったような問題を背景に、その削除を依頼してきた人物の死の真相を縦軸に、なぜ削除が必要であったかを横軸に描いています。
その形はまさに、「今」ならでは形。
いわゆる「刑事もの」の、古典的なミステリが多い中で、極めて異色、考えもしなかった角度から攻め入ってくる、ピンピンに尖ったミステリ。
主人公のプログラマー・坂上圭司は半身不随で車椅子で生活しています。もう1人の主人公・真柴佑太郎は「何でも屋」。虐待を受けていた子供を親から助けたところを誘拐犯に間違われる、というショッキングなシーンから始まります。
主人公はこの、「半身不随のプログラマー」と「世間からはみ出た何でも屋」の2人。
坂上が立ち上げた会社「deke.LIFE」は一定時間、所定のデジタル機器にアクセスがなかった場合、依頼人が死んだものとみなし、死亡確認の後、デジタルデータを削除するという仕事をしています。
車椅子生活のため、依頼人が本当に死亡したかどうかの確認が難しい。そんな彼を手伝うことになったのが、真柴佑太郎。前述の誘拐事件の裁判で彼の存在を知った坂上の姉で弁護士の舞が、彼を弟に紹介します。
第1話では…。
第1話は、死亡確認に行った週刊誌の記者は、ずっと家族と離れて暮らしていたことがわかります。
妻は週刊誌の記者という仕事を嫌っていますが、小さな息子は父親が正義のために戦っていると信じています。
芸能人のスキャンダルばかりを狙っていると思っていた彼が、実は巨悪と戦っていたかもしれない、という可能性に気づいた佑太郎は、データ削除の中止を進言。
彼が警察内部の巨額な使途不明金を追ってたことを知った2人は、削除依頼を受けていたデータを開けることに…。
秀逸だった第2話
そして先日放送された第2話が秀逸でした。
一定時間、スマホが操作されなければ死んだとみなしてデータ削除を依頼していた女性の部屋に、死亡確認に行った佑太郎は、そこで死んでいる女性を発見しますが…。
「やっぱりデータは消去しないでください」
というメモを発見。それは彼女が死の直前に書いたものでした。
しかしそれは正式な依頼ではないので、あくまで依頼にのっとって粛々と削除を実行しようとする坂上と、彼女の直前の遺志を尊重したい佑太郎。
なぜ彼女は、死の直前に心変わりをしたのか…。
彼女の死の原因はなんだったのか…。
そして、削除要請があったデータには、何が残っていたのか…。
プロの音楽家の父と親子の縁を切った彼女に何があったのか…。
物語は全く先が読めずに進みます。
そして明かされる、彼女の意外な正体。
正体不明の音楽バンド「the Mints」の主要メンバーだったことがわかった時の、車椅子の坂上のセリフが際立っていました。
「the Mints」は正体不明のユニットで、刺激物だらけのデザートみたいな音楽が多い中、本当の音楽をやろうとしている稀有な存在。特に、この曲はヤバい。初めて聞いた時、衝撃で立ち上がることもできなかった。
…。あ、逆だ。逆に、立ち上がってしまうんじゃないか、と思った。
the Mintsの音楽が、聴く者に与える衝撃を、半身不随の自分が立ち上がりそうになるくらい、という言葉で形容しています。
死んだ依頼人の才能の凄さをわかりやすく表現しながら、少しユーモアも感じさせる見事なセリフ。
削除依頼があったデータを開いた2人は、断絶関係にあったご両親にそのデータを見せ、感動的なラストシーンへとつながります。
しかし、最後の最後に坂上が呟くヒトコトこそが真実であったろうと思われ、決してハッピーエンドでは終わらせないあたりが実に印象を残します。
実験的作品だけど素晴らしい!!
死後のデジタルデータの削除。この極めて「今」的なテーマにミステリを絡めてきた、この実験的な考え方は賞賛に値します。
さらに山田孝之、菅田将暉、麻生久美子、と言った、チャラチャラ感がない本格的俳優陣に、映画のような映像美を醸し出すスタッフ陣は見事です。
特にこの第2話は本当に秀逸でした、8/10までTverで視聴可能です!!