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ポンコツ夫とポンコツ嫁はん。ランニングで健康維持しつつ映画やテレビ見ながら言いあらそうブログです。

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dele(ディーリー) #3 テロリストの赤いバラ。大人になって、子供の頃を過ごした街を見たときの、あの切ない胸の苦しみが蘇ってくるような映像美。見る者をミスリードし、真逆の展開に驚かされ、最後まで余韻を残す素晴らしい演出。これはまるで映画だ。

若者に人気のガールズバンドが絡んで山田孝之演じる主人公の思わぬオタクぶりが発覚した、ややポップだった#2とは打って変わった#3。

 

誰からも見捨てられたような田舎の港町に住む老人たちの、28年にわたる寂しく切ない人生の物語。

 

作り手は、意図的に視聴者をミスリードして、物語の先が読めないようにしています。

 

冒頭の指名手配書

 

高橋源一郎演じる今回の依頼人・浦田が交番の前に佇み、ぼんやりとした目で見つめる指名手配書。

 

五島、と書かれたその手配書は、28年前の爆弾事件の犯人。銀縁のメガネをかけたその若い顔は、まるで、それを見つめる浦田の28年前の顔のようです。

 

間違いなく、作り手は

 

五島=浦田

 

である、と視聴者をミスリードします。

 

見るものは、テロリストが名前を変えて、誰からも忘れ去られた港町で細々と写真館を営んでいるのだ、と誤解しながら物語を追い始めます。

 

切ない既視感ある港町

 

削除前にデータをコピーし、同じ港町に住む女性にバラの花束とともに贈ってほしい、という奇妙な依頼。

 

そして依頼の翌日、自殺する依頼人。

 

菅田将暉演じる真柴佑太郎が港町を巡るシーンが、とても美しい。まるで映画のようです。

 

決して、青い砂浜や白い海岸線などが広がっているわけではありません。

 

錆びたシャッターばかりの商店街。

 

老人と猫以外、人っ子一人歩いていない街並み。

 

新しい建物など皆無の、古びた建造物。

 

ノスタルジックな音楽とともにその街を真柴佑太郎が歩くシーンの物悲しさ。

 

大人になって、子供の頃を過ごした街を見たときの、あの切ない胸の苦しみが蘇ってくるような映像美が迫ります。

 

旅写真を見る女

 

余貴美子演じる江角幸子は、死んだ浦田の写真館のすぐ横で理髪店を経営していて。

 

客がほとんど来ない理髪店で、暇を持て余しながら、パソコンで旅先の写真を投稿するサイトを見て時間を潰している、普通の人生を送っている女性。

 

「28年前、爆発事件を起こしたテロリストが、同じ街に住む女性に恋をした物語かな」

 

見るものはこう思い込みます。作り手が意図して、そう思い込むようミスリードしているのです。

 

謎の男

 

真柴佑太郎が、死んだ浦田の写真館に潜り込むと、謎の男が同じようにその写真館に入ってきて、気づかれないように浦田のパソコンを盗み出す現場に遭遇します。

 

テロリストが持つデータ、しかも、自分の死後、コピーしてただの一般女性に渡してほしい、と依頼してきたデータ。

 

それを盗んでまでほしい、と思う謎の人物。

 

坂上の機転で浦田のパソコンデータはリモートでコピー後、消去して盗んだ犯人には渡りません。

 

esuのミスリード

 

esu、というタイトルのそのデータ。

 

esu、は「江角」のesuだろうな、と視聴者はミスリードされますが、それも違っていることがあとでわかります。

 

28年にも渡って、死んだ浦田が理髪店の女性店主・江角を監視していた記録。

 

毎日の彼女の時間別行動記録。

 

かかってきた電話の盗聴録音データ。

 

28年分のデータがそこにありました。

 

つまり浦田は、ストーカーまがいに彼女を監視して、彼女の名前を冠したesuというフォルダにそれを入れていた変質者なのか?

 

見るものはそう思ってしまいます。

 

公安局の登場

 

浦田のパソコンを盗んだ犯人のクルマのナンバーを、坂上がハッキングして調べた結果、それは公安が天下る調査会社。

 

「浦田さんはその連中に監視されてたってこと?」

 

真柴佑太郎が言います。まさに、視聴者が思っていること。浦田は爆弾事件の犯人なので、公安に見張られていたのだ、と。

 

テロリストが自殺し、彼が恋心を抱いていた一般女性にストーカー的なその思いを伝えたい、という依頼なのだ、と。

 

真逆の展開

 

ところが…。

 

依頼を遂行すべく、真柴佑太郎が坂上とともにあの港町を再び訪れたとき…。

 

物語は、見るものが思っていた方向と真逆に動き始めます。

 

理髪店が、突然、閉店していたのでした。

 

彼女は一般人のはず。いきなり閉店する理由などあるはずがない…。

 

坂上の姉で弁護士の舞が調べたところ、例の公安の天下り調査会社から、毎月、浦田の元に3万円が振り込まれていました。

 

つまり、テロリストは死んだ浦田ではなく、理髪店の江角だったのでした。

 

浦田は「esu」、つまりスパイ、協力者の意味。

 

浦田は公安の調査会社から依頼を受け、彼女を監視していたのでした。

 

しかし、今月分の入金はなかった。つまり公安は、理髪店の監視を打ち切った。

 

28年間、監視していた仕事がなくなった…。

 

では、あの冒頭の写真を見つめていた意味は??

 

写真サイトの秘密

 

データにただ一つ残されていたURL。それは旅の写真を投稿するサイト。

 

彼女が趣味だ、と真柴佑太郎に言った、旅写真のサイト。

 

このサイトに秘密がある、と直感した坂上と真柴は、思いつくキーワードを入力しまくり…。

 

「百万本のバラ」というワードにたどり着きます。

 

そのハンドルネームで、年に一回だけ投稿している人物がいて。

 

その投稿は、日本各地の駅。

 

その投稿日時と、浦田の監視報告書を照らし合わせると…。

 

「花屋来る」→外出

 

投稿日時には必ず「花屋来る」の報告。

 

そしてその1週間後、彼女は必ず外出。

 

「花屋来る」とは、「投稿があった」の隠語ではないか。

 

そしてその1週間後外出しているということは、

 

「1週間後、この場所で会おう」

 

というサインだったのではないか。

 

江角幸子は年に一度、写真を投稿した場所で誰かに会っていたのでした。

 

胸に迫る名シーン

 

坂上は再び浦田の写真館に向かい、彼の部屋で、28年にも及ぶ音声データを聞きます。

 

この部屋で、28年間、彼女の声を盗聴しながら、笑い、涙した浦田の姿を思い浮かべる坂上のシーンは、強く強く胸に刺さる、名シーンです。

 

28年、彼女に寄り添って生きてきた彼が、調査打ち切りでその繋がりが切れたとき、自らの存在理由を失った。

 

坂上は彼の自殺の理由に行き当たります。

 

江角幸子はどこに

 

では、江角はどこに消えたのか。

 

実名投稿のSNS、つまりFacebookで彼女とつながりのあった、理容学校時代の同期の元に情報収集に行く真柴。

 

すると…。

 

そこで、驚くべき事実を知ることに。

 

かつて彼女は、過激派の男性と付き合っていた。

 

その男こそ、五島。冒頭の指名手配犯。

 

年に一度、江角が会っていたのは五島。おそらく逃亡資金を用立てていたのでしょう。

 

彼の写真を浦田が見つめていたのはそういう理由。江角の人生を狂わせた五島への憎い思いと、彼がいなければ自分は江角と繋がることもなかったという、複雑な思い。

 

最後の投稿

 

最後に彼女が写真サイトに投稿したのは、ある公園。

 

28年前、五島が爆弾事件を起こした公園です。

 

彼女はそこで、五島に最後に会おうとしていたのでした。

 

投稿した日からちょうど1週間後。彼女はその公園に現れます。

 

「五本のバラ」

 

「バラの花は、その本数によっても花言葉が変わる」

 

坂上は、浦田の依頼通り、たった五本のバラの花とコピーした28年分のデータを真柴に持たせ、江角に渡し、この件を終わらせようとします。

 

真柴が江角に近づいた、そのとき…。

 

年老いた男を見つけ、江角が立ち上がりました…。

 

あれが、五島なのだ…。

 

そのとき…。

 

何人もの黒服の男が、五島を取り囲みます…。

 

江角が、通報したのだ…。

 

共犯者が海外に逃亡しているので、時効が停止している五島は、逃亡の果て、公安に逮捕されたのでした。

 

浦田さんからの依頼で、バラの花と、28年分のあなたの調査報告書です。

 

浦田さんのこと、とっくに、気づいていました。

 

切ない余韻を残し、公安に連れられる江角。

 

そしてエピローグ。

 

「五本のバラ」

 

を検索した真柴佑太郎はその結果を坂上に見せながら、

 

「意外とロマンチストなんだね」

 

と言って物語は終わります。

 

五本のバラの意味は、視聴者には伏せたまま。

 

最後の最後まで、深く余韻の残る、素晴らしい物語でした。

 

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tver.jp

 

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