妻:(まだおネム)夢…。見たで…。
夫:おっ。どんな夢?
妻:あんな…。電車が全線、ストップしててな…。
夫:全線かいな。大変や。
妻:そこらじゅう、家に帰られへん人々でごった返してるねん…。
夫:パニックやね。
妻:でもアタシには秘密兵器があって…。
夫:秘密兵器?
妻:うん。アタシ、「電動四輪車(でんどう・よんりんグルマ)」を持ってるねん。
夫:「電動四輪車(でんどう・よんりんグルマ)」?電気自動車のこと?
妻:ちゃう。ミカン箱にモーターとタイヤが4つ付いてて。ハンドルついてて。
夫:…。オモチャやん!!
妻:それに乗って、帰宅難民で溢れる大阪の街を1人、サッソウと帰るねん。
夫:走ったほうが速いやろ。
妻:それを見てみんなが、「エエなあ!あれ!!」って、羨望の眼差しで見るねん。
夫:ミカン箱やのに…。
妻:でも電動四輪グルマのやつ、プスプス言い始めて…。
夫:アカンやん!!
妻:動かんようになってしもた。
夫:あーあ。
妻:仕方ないから歩いて帰ることにした。
夫:電動四輪グルマは?
妻:捨てたに決まってるやん!!
夫:そんな怒らんでも…。
妻:歩いてたら公園でロケをやってて。
夫:テレビのロケ?
妻:ゼンゼン知らん芸人がいてるねん。エプロンして道ゆく人にインタビュー。
夫:街ブラものやな。
妻:その芸人、エプロンに「漫才刑事(デカ)」って刺繍してるねん。
夫:漫才デカ…。インパクトある名前やな。
妻:それが芸人の名前なんか、番組のコーナー名なんかはわからへん。
夫:なるほど。
妻:アタシに近寄ってきて。漫才デカのやつ。
夫:きましたね。
妻:「遠足の前日に練習するものといえば何でした?」って、ワケのわからん質問してきて。
夫:…。
妻:あからさまに迷惑そうな顔して。「結構デスゥ」って口の動きだけで伝えて立ち去った。
夫:そうなんや。もっと乗っかってもよかったやん。漫才デカやで?!
妻:で、帰宅難民でごった返してる街を歩いてたら…。
夫:まだ続きますか。
妻:突然、クルマのお化けみたいなやつに襲われてん!
夫:クルマのお化け?
妻:バンビリブーみたいなやつ。
夫:ああ、バンブルビーね。トランスフォーマーの。
妻:帰宅難民、何百人もおるのに、なぜかピンポイントでアタシだけを襲ってくるバンビリブー。
夫:何でや?
妻:でもアタシは、飛んで逃げるねん。
夫:跳んで?あっちこっち、ジャンプでかわすの?超人的ジャンプで?
妻:ちゃう。もう、空を飛べるねん。アタシ。
夫:…。
妻:そやし、バンブルビーもアタシに手が届かない、という…。
夫:…。
妻:…。
夫:…以上?
妻:…。以上です。裁判長。
夫:飛べるなら…。電動四輪グルマ、要らんかったよね…。