去年のジャンヌ・ダルク
去年の篠山マラソン、僕の足は25km地点から5kmに渡って登り続ける坂に苦しめられ、30.6kmの折り返しで下り坂になった時には…。
大腿四頭筋に、猛烈な激痛が響き渡り。
一気に心が折れたのでした。
心が折れたあの瞬間ことは今でもはっきりと覚えています。そして悔やんでも悔やみきれません。
しかしいったん折れた気持ちはもう修正が効かず、僕はずっと歩いてしまいました。
1kmほど歩いたところに現れたジャンヌ・ダルクは、もうぜったいに間に合わないペースなのに、まったく諦めるそぶりを見せず、ただひたむきに走り続けていました。
最初は、なんとなく彼女についていった僕でしたが、「痛い、痛い」とつぶやきながらもまったく足を止めずに走り続ける彼女の姿に強く心を打たれ。
彼女の後を追うようにして、友人が待っている36km地点まで走り続けました。
関門には間に合いませんでしたが、ブザマに歩いていた僕に、ランナーとしての誇りを取り戻させてくれたあの女性には、感謝の気持ちでいっぱいです。
"Rapha"の、珍しいウエア
去年、僕が撮影した彼女の写真には、ゼッケン番号が写っていませんでした。
Tシャツの上からベスト状のウエアを着られていて、ゼッケンはベストに下に隠れて見えなかったのです。
ベストは、マラソン大会では見かけたことのないものです。拡大してよく見ると、
"Rapha"
のブランドロゴが読み取れます。
不勉強でよく知りませんでしたが、おそらくこのブランドと思われます。
サイクリングウエアのメーカーさんのようです。おそらく彼女はサイクリングも嗜んでおられて、そのウエアをランニングにも流用されているのでしょう。
この"Rapha"のベストを着て走っているランナーさんは、今までも、そしてこの後も、他のどんなレースでもお見かけすることはありませんでした。
ただ僕はこの1年、何かにつけて彼女の後ろ姿を思い出していました。
↓この写真の段階で、関門は完全に間に合わない時間帯でした。全てのランナーが、しし汁エイドに寄っています。でも彼女とエイドの距離感を見ていただいてもわかるように、彼女はエイドに寄る意思をいっさい見せずにスルーしていきました。
一歩たりともエイドに寄らず、黙々と走り続ける彼女の意思に驚き、急いでシャッターを切ったのが上の写真です。
もしかしたら彼女は関門の時間が頭に入っていなくて、まだ間に合うかも、と勘違いしていただけなのかもしれません。
たとえそうでも、せっかくマラソン大会に来たのにあきらめてブザマに歩いている人間に、たとえダメでも走り続けるという姿の尊さを教えてくれた彼女に、僕は深く感銘を受けました。
僕はこのあと、彼女を抜きましたが、関門には間に合わなかった。
だからもちろん、彼女も間に合わなかったはずです。
"Rapha"、再び!!
リベンジを誓って今年もエントリーした篠山でしたが、僕は走れなくなって、応援に向かいました。
往路25km、復路36km地点で応援していると…。
見覚えのある、後ろ姿が!!
去年とは逆に、今年はベストの上にゼッケンを貼られているので、ブランドロゴを読み取ることはできませんが、
あの特徴あるデザイン、間違いなく"Rapha"のベストだと思われ!!僕はとっさに写真を撮りました。
戻ってくるのか?
ここは25km地点、ここから登って30kmで折り返し、戻ってくるはずです。
去年は僕も彼女も、この戻ってくるはずの関門でアウトになりました。
今年は彼女は戻ってくるのか。
僕はなるべく注意して彼女の姿を待っていましたが…。
現地では見つけることができませんでした。
帰宅して、ゼッケン番号からランナーズアップデートで確認すると…。
やはり今年も、同じところでアウトになられていたようでした。
確かに25km地点でお見かけした時、かなり苦しそうな後ろ姿でした。
チャレンジ魂
それでも、去年ダメだった篠山に再度エントリーし、リベンジを試みた彼女。その前向きなチャレンジ魂には、深い感銘を覚えます。
来年も彼女がエントリーされるかどうかはわかりませんが、一生懸命に挑んでいらっしゃるその姿は本当に清々しく。
ゴミも少なく、ガチランナーが一生懸命に走る篠山マラソンにとてもふさわしい彼女のチャレンジに、心から敬意を表したいと思います!!