悠林館さんは本当にいいお宿でした。
オフシーズンのため、宿泊客がわれわれ夫婦だけだったと言う理由もあったと思いますが、
従業員の皆さんのすべてに真心が感じられ、とても親切なお宿でした。
旅館用靴下
お宿に泊まると、部屋用に靴下をくれるお宿がありますが、あの靴下が、実はお方さまが大のお気に入り。
女性用のV字ソックスが滅多に売っていない、と言う点もありますが…。
旅館用靴下のあの薄さ、ホールド感などが、お方さまの足にピッタリ。手にはいれば仕事中はずっとあれを履いています。
僕は自分用にもらった分も履かずにお方さまに進呈します。
そこで、佐藤二朗似のご主人に聞きました。
この旅館用の靴下ですが、うちの妻が大ファンなんです。どこで手に入るとかわかりませんでしょうか?
すると佐藤二朗似のご主人は困ったような顔になり。
これは…。実はわれわれもネットで購入しているのですが…。最低ロットが1,000足なんですよね…。
これにはさすがのわれわれも降参。あきらめました。
すると30分後…。
ご主人がわれわれの部屋を訪れてくださり…。
そっと、靴下を3足分、置いていってくださったのでした。
お方さまが履いた分、僕用にもらった分、二郎さんプレゼント分の計5足分。ありがとう、二郎さん!!
どうやら「和」と書いて「なごみ」と読む靴下のようで、そのキーワードでググれば出てきました。今後はこれで買えそうです!!
朝食
朝食には、例によってホタテ貝。一年目のホタテ貝は稚貝(ちがい)と呼ぶそう。稚貝が無数に入ったお味噌汁と、焼きホタテ。さらに「大統領」と言う名の大きなしいたけと、自家製の厚揚げを炭火で焼いていただきます。
悠林館さん、サロマ当日は…。
サロマ当日のお宿の状況を聞いてみると、もちろん一年前から満室。
日本中のランニングチームの方々が、押さえられていますので…。
とのことでした。
ちなみにわれわれ夫婦が2人で泊まった部屋は、当日は7人で寝泊りされるそうです(^_^;)
二郎似のご主人も、過去に一度50kmを走られたことがあるそうで、やはりサロマには思い入れがおありのようでした。
有名ランナーさんの常宿
あの大会って、速く走るだけじゃなく、遅く走っても尊敬されるのがいいですね。毎年うちに泊まられる方で、昨年だったかな、3分前にゴールされた方がいらっしゃいます。
史上最年少サロマンブルー、ギリギリゴールで有名なSさんのことだろうと思い、その名を出すと、
そうです!!よくご存知で!!
とのことでした。Sさんの常宿みたいです。さすがSさん、お宿の選球眼もしっかりしていらっしゃる!!
後ろ髪引かれながら悠林館をあとにして。
取材2日目
われわれはサロマの後半の50kmの取材に向かいました。
昨日は中間レストポイントまで行きました。そこからクルマを出します。
国道238号線がずっと続きます。左手にサロマ湖を見ながら細かなアップダウンを延々と走ります。
やがて60kmの関門を過ぎたあたりに左手に出てくるのが…。
キムアネップ岬
「キムアネップ岬」。
アイヌ語で「山・細長い・もの」を意味するキムアネップ岬。
前方に大きく広がるサロマの雄大!!
ここで目をこらすと、天気次第では見えるかもしれません…。
ワッカ・第2湖口にかかる橋が!!
キムアネップ岬からワッカ第2湖口橋をのぞむ
まだ25km先のワッカの折り返し…。もしかしたらランナーに絶望を与えてしまう情報かもしれない…。
キムアネップをあとにした小さな橋で、白鳥を見ました。
魔女の森
キムアネップ岬をあとにすると65kmでやってくるのが、有名な「魔女の森」。
われわれは4月に行ったのでこんな感じですが、6月末にはもっと青々と葉が茂っているはず!!
“魔女の森”の所以
ずっと日陰がなかったサロマのコース上で、とつぜん現れる森の日陰。ついついランナーは歩いてしまうのですが、ここで歩くと次の関門に間に合わない!!
ランナーを誘惑する森なので“魔女の森”と呼ばれているそうです。
斉藤商店さんのエイド
魔女の森を抜けると、再び238号線に合流。
サロマ大橋を渡り、すぐを左へ。すると左手に有名な、斉藤商店さんの私設エイドが現れます!!
斉藤商店さんのエイドといえば、黄色い外装という印象ですが、あの旧店は現在取り壊され、青い外装の建物に変わっています。
この前に私設エイドを出されます!!
ワッカ原生花園
このエイドが68km地点、次の関門が69km。
この関門を抜けるとまた国道を外れ左へ。
今日のお宿・鶴雅リゾートさんを左手に見ます。
鶴雅リゾートさんも私設エイドを出されています。
これを超えしばらく行くとワッカの看板が見えますが、これは観光客用。ランナーはさらに右へ折れて走ります。
こうしてしばらくは湖を後方に離れていき、牧場のような場所を走ります。
そして十字路で左折、細い道をJAの施設を見ながら、ワッカへと入っていきます!!
ネイチャーセンターの冷たい対応
ワッカ原生花園。僕たちが訪れた4月24日にはまだ花はほとんど咲いておらず、ずっと寂しい風景が続いておりましたが。
サロマ当日の6月最終日曜日には、たくさんの花々が咲いていると思われます。
ワッカにはクルマで入ることはできません。
しかし、ワッカをこの目で見る、ということが今回の旅の大きな目的の一つ。
「ワッカネイチャーセンター」で自転車がレンタルできるということなので、われわれはそこへ向かいました。
ところが…。
ワッカネイチャーセンターは冬季のため営業しておらず!!
準備のため従業員さんはいたものの…。
ちょっと冷たい態度で、「冬季ですので」の一点張り。
ネイチャーセンターは季節外れの観光客には冷たいな、というのが正直な印象でした。ここへ至る道のどこにも、「冬季のため閉鎖中」の看板は見ませんでした。iPhoneで確認した時も、「営業中」となっていました。
北海道の常識を知らずに来たわれわれが悪いのでしょう。
ワッカを歩け!!
さて、自転車がダメだからと言って、ワッカを諦めるわけにはいきません。こここそ、今回の旅の最大の目的地なのだから。
徒歩しかない。われわれは徒歩でワッカへと向かいました。
花など一輪も咲いていない、冬季のワッカ。
恐怖の海風
ワッカを歩いて痛感したのが、その寒さです。
暖かい日でしたので、ここに入るまではTシャツ1枚で歩いて来ましたが…。
木々がなくなり、オホーツク海から吹く北風がダイレクトに体に当たると、恐怖を感じるくらいの寒さでした!!
前出のサロマンブルーのCさんによれば、「どんなに暑い日でもサロマは寒い。54kmのレストポイントで必ず上着を持つように」、といつも言われていますが、それがよくわかりました!!
ゆっくりのランナーがこのあたりを走るのはもう夕方。なめてかかると絶対に危険!!
ゴール目前にして低体温症で走れないという事態も十分に考えられます!!
ワッカは寒い!!これ、テストに出るとこです!!
折り返しの橋
折り返し地点は、ワッカの入り口から約9kmの橋の上。この橋が数年前にできたそうで。
お方さまが持っているのは、オホーツク海岸で拾った流木。杖代わりに使い、出るとき元あった場所に戻しました。
85kmを走って来たランナーには、この橋の登りでさえ、かなりのきつさと思われます。
ここを折り返し、来た道へ戻ります。
恐怖の森
サロマのコースのワッカの入り口は、森のようになっています。
われわれ夫婦は、とてもウカツでした。
札幌市街にクマが出たというニュースを聞いたのが、北海道に来た初日。びっくりしていましたが、
森なら市街よりクマが出て当たり前!!
もちろんサロマ当日は、何千人というランナーやスタッフの人々がいるのでクマは近づいてはこないでしょうが、
今、ここにいるのはわれわれだけ。
クマがいてもおかしくないシチュエーションですが、われわれは全くそのことに気づかず…。
ただワッカの全貌を見たい、それだけしか頭になく、暗い森の中をズンズンと進んでしまいました。
巨大野生エゾジカ出現!!
と、その時!!
鹿が!!
巨大なエゾジカが、われわれの目の前を飛び跳ねるように横切って行きました!!
それも、2頭も!!
奈良公園の鹿など、全員がバンビちゃんに見えてしまうほど、その鹿は巨大でした!!
黒いふさふさした体毛に、お尻のあたりの毛だけ真っ白だったように思います!!
何かに驚き、急いで逃げているかのように、とてつもない跳躍力で一歩ずつを飛ぶように跳ね!!
一瞬で現れ、一瞬で去って行きました!!
オレたちどこに来てしまったんだ!!
このとき初めてわれわれは、自分たちがものすごく危険な場所にいることに気づきました!!
鹿がいる場所にはクマもいる。
どんな熟練のサバイバリストも口を揃えていうのが、クマには絶対に出会ってはいけない、です。
われわれはワッカを見ることに夢中で、われわれ以外誰もいない危険な森に入っていることに気づいていませんでした。
ネイチャーセンターの駐車場へと戻ろう。
目指す入り口までほんのあと数百メートルでしたが、われわれは来た道を戻りました。
なんども後方を振り返り、危険生物が後ろにいないかを確認し。
お方さまと2人で、ずっと歌をうたいながら、人間の存在をアピールしながら森を戻りました。
こうしてわれわれは、徒歩でワッカを往復。距離は約18km、時間は4時間かかりました。
ゴール地点へ
寒さと、久しぶりに20km近くを歩いた疲れとで、車に戻った時はクタクタになっていました。
でも、ここまで来たらゴールは目前です。
再び、クルマでランナーのワッカ入り口まで戻り、ゴールを目指します。
ワッカで低体温症にならなかったランナーなら、もうゴールは目の前。
2km先にある常呂町スポーツセンター、そこへ至る道はおそらくビクトリーロードのように応援者で溢れていることでしょう。
そして右に曲がるとあっけないほどすぐ目の前にゴールがあるはず。
このスポーツセンターには、サロマンブルー、つまりこの大会を10回完走された皆さんの足型が飾られています。
絵に描いたようなサロマの夕日を見ました。
サロマ最後のお宿
この日のお宿は鶴雅リゾートさん。オフィシャルツアーの宿泊先にもなっている、有名なお宿です。
お食事は、海鮮盛り合わせの他はバイキングでした。お方さまはまだお腹に少し不安があったので、負担にならない食事を選ぶことができて、こちらのバイキングにとても喜んでいました。
ネイチャーセンターで自転車が借りれず、徒歩でワッカを往復という予想外の事態や、さらに巨大エゾジカとの遭遇など、精魂尽き果てた3日目でしたが…。
ずっとずっと、この目で見たかった、この足で歩きたかったワッカが歩けて。
大満足の3日目でした。
(4日目に続く)