光テレビに加入すると自動的にいくつか見ることができるチャンネルがあって。
そのうちの1つにチャンネルNECO(ネコ)というのがあります。
日活系のチャンネルみたい。日本映画やドラマなどを放送しているチャンネルですが、
日活系ということもあり、深夜はピンク映画やVシネマも放送しています。
でもこのご時世、ネットで無料でAVがごまんとみれます。映倫の絡みもあって刺激の少ないピンク映画をわざわざ見る気にもなりません。
が、ある時、タイトル「美爆乳アンドロイド」というパワーワードが目に止まり…。
ちょっと面白そうなので録画してしまいました(¯―¯٥)
で、先日、とてもヒマだったので、それを見ることにしました。
正式タイトルは、
「Sex and LoveDoll:アンジェラ 美爆乳アンドロイドのセクシー実践講座」
です(^◇^;)
タイトルからして苦笑してしまいそうな…。
冒頭。完成したばかりと見えて、ピクリとも動かない爆乳アンドロイド。生みの親らしき男性はその乳房をモミモミ…。
なんじゃこりゃ(¯―¯٥)なオープニングにちょっと辟易気味…。
ですが。
物語が進むにつれて…。
僕は目が離せなくなり。
そしてラストシーンでは…。
もう号泣、号泣(涙)
まさかピンク映画で、こんなに泣くとは思いませんでした。
(実際には「Vシネマ=劇場公開を前提としない映画」にカテゴライズされる作品のようです。)
GoogleAdsenseはエロものに大変厳しいので、ピンク映画に関する評など書けばお叱りを受けるかもしれません。(実際、『レッド・スパロー』というハリウッド映画の評を書いてGoogleさんから怒られました汗)
↓書き換えを余儀なくされた記事(¯―¯٥)
ですのでなるべく柔らかな言葉を使って、このピンク映画をみていきたいと思います。
(でもタイトルが「LoveDoll:アンジェラ 美爆乳アンドロイドのセクシー実践講座」だもんなあ…。怒られるだろうなあ…)
あらすじ
主人公・夏雄は24歳で童貞。幼馴染の奈々ちゃんに想いを寄せています。でも奈々ちゃんは勤務先の課長との不倫に溺れて、夏雄の存在など気にも止めません。
そんな夏雄の元に身に覚えのない大きな荷物が届きます。開梱すると中から出てきたのは…。
女性の形をしたアンドロイド。スイッチを入れると彼女は人間と全く同じに動き始め、
「私の名前はアンジェラよ」
と自己紹介すると、目から光が出て、壁に映像を投影します。
彼女は見たものを映像として記録、目からその映像を投影する機能があるのです。(ラストへの伏線となっています)
映像に映っていたのは、母から縁を切られた実父。
「息子よ、私は最低の父親だ。だが浮気を繰り返したのは女性のデータ収集のため。罪滅ぼしに私が作ったこのアンジェラをお前に授ける。彼女には女性の全てが詰まっている。きっとお前の女性問題を彼女が解決してくれる」
こうして夏雄とアンジェラの同棲生活が始まります。なぜか夏雄はこの美爆乳アンドロイドに手を出さず、子供のようにお風呂に入れてあげたりします。
アンジェラのミッションは夏雄と奈々ちゃんが結ばれること。でも奈々ちゃんは課長との不倫に夢中。課長が他の女にも手を出すゲス男であることに気づいていません。
そこでアンジェラは一計を案じます。
奈々ちゃんの誕生パーティがクラブを借り切って行われます。例の課長がトイレに行った際に…。
アンジェラはトイレの前で課長を誘惑、
2人は女子トイレの中で激しくセッ◯スします。
それをみた奈々ちゃんは、課長の、「ヤレる女なら誰でもいい」というゲスい本性にやっと気づきます。
奈々ちゃんは課長との絶縁を宣言。
プレゼントをくれた夏雄の優しさに接し、彼と付き合うことを決めます。
帰宅した夏雄。
「あんな奴とセッ◯スするなんて…。アンジェラに悪いことしたね」
「私には心がないから何をしても傷つかないから。でもよかったね、付き合うことになって。もうエッチしたの?」
「それはまだだけど…キスはしたよ」
「どんな風にキスしたの?彼女が満足したか調べるから私にもして見せて」
夏雄は奈々ちゃんと交わしたキスをアンドロイドの唇にも交わします。
「ロマンチックなキスね。奈々ちゃんは気に入ったわ。合格よ」
夏雄と奈々ちゃんのデートの日。楽しい一日を過ごし、いよいよ2人はホテルへ。
奈々ちゃんはとてもセクシーな下着を身につけていて。
夏雄はずっと、ブラの上から奈々ちゃんの胸を触っています。
「いい加減にして。下着にしか興味がないの?」
「えっ…」
「ずっと下着しか触ってないじゃん」
「そ、そんなこと言われても童貞だから…やり方、わかんないよ」
「そんなこと、説明しながらするものじゃないでしょ、もういい、私帰る」
奈々ちゃんは怒ってホテルから出て行ってしまいました。
夏雄は自分が情けなくて、ホテルのベッドで1人、泣いてしまいます。
そこにアンジェラがやってきます。彼女は心配で、ずっと2人のデートを見守っていたのでした。
泣いてる夏雄の頬に触れ、
「人間は、誰かを好きになると泣いちゃうのね」
というと服を脱ぎ、
「やり方なんかないの、好きな人に触れていたいと思う気持ちをぶつければいいのよ」
こうして夏雄はアンジェラを相手に、童貞を卒業するのでした。
1ヶ月後。Xマス時期。夏雄はアンジェラと部屋にXマス装飾を施しています。
そこに奈々ちゃんからお詫びのメールが届きました。
『私が大人げなかった、やり直したい、Xマス当日、私の部屋でXマスをお祝いしましょう』
「よかったね!!」アンジェラは喜びます。
「ごめんねアンジェラ、Xマスに1人にしちゃって」
「これで私のミッションも終わりかな」
そしてXマス当日。夏雄は得意の料理で奈々ちゃんとXマスをお祝いし、特製ケーキを奈々ちゃんと食べて。
その夜、初めて夏雄と奈々ちゃんは結ばれます。
一方、アンジェラは…。
夏雄の部屋でただ1人。アンジェラのために夏雄が作ってくれたケーキを見つめています。
アンドロイドは食べられないけど、Xマスの雰囲気だけでも楽しむため、夏雄が作ってくれたのでした。
アンジェラは目から映像を壁に投影します。
夏雄がお風呂に入れてくれたこと、彼がペンダントを買ってくれたこと、2人で料理を作ったこと、初めてキスをしたこと、彼と結ばれたこと、
「人間は、誰かを好きになると泣いちゃうのね」
全てが壁に映像となって流れます。
アンジェラの目から、涙がポロポロと流れます。
『消去しました』
ミッションを終え、初期化されたアンジェラは、またただの人形になって、
バタン、とベッドに横たわるのでした。
ジョン・ヒューズの名作2本
確かにベタな展開です。元ネタは1986年のアメリカ映画
『プリティ・イン・ピンク』
でしょうか。
貧乏な美少女アンディが富豪の息子に恋をして、アンディに想いを寄せるひょうきんもの・ダッキーがその恋を応援する、という青春映画で、のちに『ホーム・アローン』で大成功を収めるジョン・ヒューズが製作しています。
『プリティ・イン・ピンク』は興行的にも成功しますが、おそらくジョン・ヒューズはダッキーとアンディが結ばれないラストが許せなかったのでしょうか、
翌年、全く同じシチュエーションで、男女の関係だけを入れ替えた映画
『恋しくて』
を作ります。
貧乏なイケメン・キースが学校いちの富豪美女アマンダ(演じるはリー・トンプソン。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のヒロイン)に恋をして、その恋を成就させるべく、キースの幼馴染のワッツ(メアリー・スチュアート・マスターソンが最高の演技を見せます!!)が奮闘する物語。
『恋しくて』のラスト、キースはアマンダのハートを射止めますが、泣きながら去っていくワッツを見て彼女の本心に気づき、ワッツのもとに帰る、というハッピーエンドになりました。
『プリティ・イン・ピンク』の過ち
本心を隠して愛する人の恋を応援する者が…。
ラストで報われない→『プリティ・イン・ピンク』
ラストで報われる→『恋しくて』
御大ジョン・ヒューズでさえ、報われないラストはおかしい、と思って『恋しくて』でその過ちを修正したので…。
この『LoveDoll:アンジェラ』を見ながら、僕は絶対に、ラストはアンジェラが報われてほしい、と願いながら見ていましたが…。
アンジェラは記憶すら消去されてしまう、という悲しいラストになってしまいました。
「いいモノを作ろう」という作り手の気概
予算なんか、ほとんどない作品だと思います。奈々ちゃんと夏雄が高級ホテルの部屋に入って、
「すごく素敵な部屋ね!!」
と奈々ちゃんが言うシーンなど、
「どこがやねん!!」
って突っ込みたくなるほど、チャチな部屋です。
その他、なぜ現代にこんな精巧なアンドロイドがいるのかとか、なぜ夏雄は最初からアンジェラに手を出さないかとか、
ツッコミどころは満載ですが、
それを補って余りあるほど、女性監督の繊細な作りが際立ちます。
吉行由実と言う女性監督、聞いたこともありませんでしたが、ピンク映画界では有名な女優兼監督さんのようです。
たぶん、ゴールデンタイムの2時間ドラマよりも少ない予算の中で、必死にいいものを作ろうとする女性監督の気概が感じられて、
主人公・夏雄は男性ですが、明らかに女性の感性で描かれた、男性には描けない、とても優しいタッチで物語は進みます。
かつ、ピンク映画として男性の本能を刺激しなければいけないので、
エッチシーンは腰から下は写しませんが、胸が豊かな女優を起用して、胸だけはユッサユッサと揺さぶってみせ、なんとかそっち方面でも刺激を強を強めるべく演出しています。
アンジェラ役の奥田咲、奈々役の福咲れんは共にAV女優さんのようですが、濡れ場が少ない分、芝居で必死に伝えようとしています。
その他男優陣もとても好感が持てる芝居をしています。
低予算で、エロという縛りがありながら、必死でいいモノを作ろうとする、役者とスタッフたち。
これを見て思い出したのが、学生時代のことです。
学生演劇に全てを捧げていた頃、僕は芝居をとてもたくさん見ました。
野田秀樹の夢の遊民社、唐十郎の状況劇場、渡辺えり子の劇団300(さんじゅうまる)など有名なプロ演劇はいうまでもありませんが、
名もないセミプロ劇団でも胸をうつ芝居はたくさんあり、
学生劇団でさえ、心揺さぶる芝居はたくさんありました。
学生劇団では、役者で上手い人もいますが…。
目も当てられないほど芝居が下手な役者もたくさんいます。
では芝居が下手な役者は見るに耐えないのか、というと、決してそんなことはなく。
本当に見るに耐えないのは、「芝居が下手なくせに、まったく稽古したあとがない」役者です。
逆に、「芝居は下手だけど、好きだから、必死に稽古して、必死に伝えようとしている」芝居下手な役者の演技は…。
ややもすると、芝居が上手な役者よりも、見る者の心を打ちます。その必死なオーラは舞台の上から必ず伝わります。
正直言って、この『LoveDoll:アンジェラ』をぜひ見てください!!と他人に勧められるか、といえばクエスチョンがつきますが…。
必死に伝えようとしていた下手な役者たちに心を揺さぶられた、あの芝居小屋を思い出して、
僕は見てよかったと思いました。
チャンネルNECOが見られる人は、3/20の早朝3:35に再放送があります!!