お方さま、小1の冬。
先生はクラスに
「寄り道せず、まっすぐ帰るように!」
と、毎日、口がすっぱくなるほど注意していた。
しかしお方さまは小1からすでにアホだったので、
「寄り道」
の意味がわからなかった。
ある日。
お方さまはいつものように、ランドセルを背負ったまま、家路につ
帰宅路にある「〇〇スポーツ」という、小さなスポーツ洋品店に入
まっすぐ、店の奥に行き、
四角い箱をパカっと開け、
中にある、ソフトテニス用のゴムボールをひとつ、手にとると、お
『クンクン。クンクンクンクン。クン?クンクン?クンクンクン』
ボールのニオイを嗅ぎ始めた。
これが当時のお方さまの趣味だったのだ。未使用ボールのニオイを嗅ぐことが。
すると店の奥から店主が出てきて、
「なんやこの子は!こんなとこで寄り道して!真っ直ぐ家に
というと、座り込んでボールのニオイを嗅ぎ回す、薄気味悪い少女
すもうの決まり手・押し出しの要領で、不気味な少女を店外に出すと、
お方さまの目の前で、店のドアをバタンと閉めた。
その時、お方さまは学んだ。
「そうか…。これが『寄り道』か…」