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ポンコツ夫とポンコツ嫁はん。ランニングで健康維持しつつ映画やテレビ見ながら言いあらそうブログです。

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おいしい給食 season2 放送記念!season1を振り返ろう!


 

ドラマ「おいしい給食」が大好きです。

 

放送が終了し、映画「劇場版おいしい給食 Final Battle」が公開され、

 

Finalっていうだけに、もう続きはないのか、と思っていたら、

 

season2の放送→劇場版の第2弾も公開される!

 

という嬉しいニュース。

 

season2は今日10/13=テレビ神奈川、を皮切りに、関西は10/15に放送開始。

 

とても嬉しいので!

 

season1を振り返りたいと思います。

 

「おいしい給食」とは

 

1984年、夏。

 

市原隼人演じる中学の数学教師・甘利田幸男(あまりた・ゆきお)は、生徒に大変厳しい教師ですが、実は「給食のためだけに学校に来ている」と言っても過言ではないほどの給食マニア。

 

給食好きの理由は、「母の料理がとにかくマズい」から。

 

給食好きであることは生徒には隠しながらも、いざ給食を前にするとウキウキが止まらず、まるで別人のようになる。

 

そんな彼には苦手な生徒がいる。神野ゴウという男子生徒だ。

 

彼も甘利田と同じく給食マニアであるが、給食に対するアプローチが甘利田と少し違っている。

 

甘利田は一品ずつ丁寧に食べるのに対し、神野は「どう食べればより美味しく食べれるか」を常に考え、それを実践する、という食べ方。

 

その神野の食べ方は、いつも甘利田の想像の上を行くもので、

 

給食が終わると、甘利田は敗北感さえ覚えるようになる。

 

そんな甘利田と神野が、人知れず行っている「給食バトル」。

 

その姿を描くのが「おいしい給食」というドラマです。

 

心の交流の過程

 

この物語は、頑なな甘利田先生と、「神の子」神野ゴウとの心の交流を描き、

 

甘利田先生の固い心が次第に氷解していく過程を描いた物語なのだ。

 

甘利田は第1話の冒頭で神野を評し、

 

「私はこの生徒が苦手だ」

 

と言う。

 

「苦手」であり「嫌い」ではないものの、わかりやすく翻訳すればそうだ。

 

ただ教師という立場上、生徒を「嫌い」などと表現はしない。

 

だが第1話近辺におけるこの「苦手」は「嫌い」とニアリーイコールだったろうと思われる。

 

自分だけの王国である給食の世界に、土足で入り込んできて、

 

自分より美味しく給食を食べてしまう人物だからだ。

 

第1話から第4話までは、甘利田はずっと神野との戦いに「敗れた」と表現している。

 

にもかかわらず、勝負後、必ず神野に因縁をつける。

 

例えば第1話、タルタルソースを持ち込んだ神野に、

 

「献立に異物を持ち込むことは給食に携わる全員への冒涜だ」

 

と言い、

 

第3話、ソースで汚れた体操服を洗っている神野に

 

「そんな無謀はいつか通用しなくなる」

 

とダメを出す。

 

明らかに神野を敵対視し、自分が正しいという信念を神野に刷り込もうとしている。(ことごとく神野に反論されるが)

 

しかし第5話から甘利田の心境に変化が現れる。

 

明らかに第5話は物語のターニングポイントで、甘利田の口から

 

「給食愛」「給食道」

 

なる、甘利田と神野にしか通じない言葉が初めて出るのもこの回だ。

 

物語のラストでいつもダメ出しをしていた甘利田の口から、

 

「この絵だが、私は嫌いではない」

 

と初めて神野のことを認める言葉が出る。

 

第7話に至るとその傾向は顕著に。

 

下校時、甘利田はショックで神野にダメを出すどころではなく、校庭の片隅で膝を抱いて座っている。

 

そんな彼に回線焼きそばが失敗だったことを告げる神野に

 

敵対していたのではなく、給食というフィールドに集う同志だったのだ…

 

神野は敵ではなく、味方だったのだ、ということに初めて気づかされる。

 

第8話では神野は甘利田のために冷凍みかんでシャーベットを作り、

 

第9話、不可抗力でカレーが食べられなくなり無理してチーズフォンデュを作った神野に、

 

「今日は、よくやった」

 

と、初めて神野を褒め称える。

 

そして最終話でジャージ教師に対して叫ぶ、

 

「大人はたとえ相手が子供であっても負けを認めなければならない時がある」

 

というセリフは、

 

全編を通し自分を凌駕してきた神野へのリスペクトに詰まった言葉であり、

 

それを口に出すことで、

 

甘利田幸男という人物が、1ランク上の人格へと成長した証でもある。

 

「大人」と「子供」

 

甘利田は全編を通し、「大人」「子供」という言葉を使っている。

 

「大人」は「子供」を教え導く義務があり、常に「子供」に対し正しい態度を取り、

 

「大人」とは、時と場合によっては「子供」に対し強い態度で臨み、子供に間違いを認めさせるべき存在であると考えている。

 

「大人」は常に正しく子供を導かねばならない。「子供」は未熟な存在なのだから。

 

神野ゴウの本質を知るまでの甘利田はそんな考えを持っていた。しかし大人も間違いを犯し、子供が正しい場合もある、ということを認めたのが、最終話の甘利田の言葉だ。

 

こうして甘利田は成長する。神野のおかげで。

 

そして最終話のラストシーン、初めて2人で仲良く給食を食べるシーンで、

 

「リンゴやるからカツくれ」

 

と言って神野とおかずを交換する場面がある。

 

あれは市原隼人のアドリブだった、と何処かで読んだけど、

 

あの甘利田が、他人とおかずを交換するなど、第1話の人格では考えられず、

 

神野と本当に心が通ったのだ、ということがよくわかる、素晴らしいアドリブだった。

 

以下、第1話から最終話のあらすじです。

 

第1話「海の王者、鯨の竜田揚げ」

 

常節(とこぶし)中学に産休補助の女性教師・御園(みその)先生が赴任。甘利田先生の1年1組の副担任となる。

 

女子生徒・君山さんの給食費が紛失。甘利田先生は生徒全員を机に伏せさせ、正直に名乗り出ろ、と言う。すると1人の生徒が手を上げる。それは意外な人物だった。

 

顔を上げた生徒たちは「犯人はいたのか」と甘利田に問う。「誰もいなかった」と答える甘利田。

 

君山さんは体調が悪く、保健室で給食を食べることになる。御園先生が彼女に付き合うため保健室に行くと、君山さんの手に給食費の袋が。犯人は君山さん自身だったのだ。

 

君山さんは給食を食べるのが遅く、クラスから浮いていた。彼女なりの苦悩を抱えていたのだ。

 

給食が始まった。甘利田先生は嬉々として鯨の竜田揚げを食べる。竜田揚の由来などを胸の奥で反芻しながら。

 

キャベツソテー、春雨スープ、コッペパンも丁寧に食べ終える。

 

満面の笑みで食べ終え、ふと神野ゴウを見やる。すると彼は、なんと…。

 

コッペパンの中央に切り込みを入れ、

 

3切れの鯨の竜田揚げを挟み、

 

竜田揚のキャベツも挟むと、

 

どこから用意したのか、小袋のタルタルソースを竜田揚げとパンの間に塗り込み、

 

竜田揚げドッグ

 

を作成、そのまま丸かぶりで食べ始めた。

 

「うまいに決まってるだろ、どんなの!!」

 

 

心の中で甘利田は叫ぶ。

 

御園先生は保健室で、君山さんと2人でゆっくりと給食を食べている。

 

ゆっくりと食べてくれる御園先生の存在に、初めて君山さんの顔に笑みが浮かぶ。

 

そして鯨の竜田揚げを食べて、君山さんは小さくこう囁いた。

 

「美味しい」

 

と。

 

タルタルソースの余った小袋をこっそり給食室に返却している神野に対し、甘利田は言う。

 

「日々の献立はお前たちの健康を考え、微妙な栄養バランスの上に成り立っている。そこに異物を持ち込むことは、給食に携わる全ての人に対する冒涜だ」

 

すると神野は短くこう答える。

 

「でも美味しく食べた方がみなさん喜びますよ」

 

完成された給食という文化を尊び、一品ずつ丁寧に食べる派の甘利田と、

 

少々のアレンジを加えてでも、少しでも美味しく食べる派の神野との、

 

戦いが始まった瞬間であった。

 

第2話「魔法の粉 ミルメーク」

 

土曜日、地震の避難訓練。大柄な大山くんの机から大量の牛乳のフタがこぼれ落ちる。集めるのが趣味なのだ。

 

その大山くん、神野くんらを御園先生が通学路の途中まで送る。そこまでが避難訓練。

 

「大山くん、牛乳が嫌いなんですって」

 

御園先生が甘利田先生に報告する。すると甘利田は即答する。

 

「ウソです」

 

「どうしてわかるんですか?」

 

「入学当初から残さず飲んでます」

 

「どうしてそんなウソを…」

 

「御園先生が綺麗だからじゃないですか?思春期ですよ、真に受けてはダメです。相手にするコツはただ1つ。『放っておく』ことです」

 

その後ろで体育教師・鷲津が激しくプロテインシェイカーを振り、プロテインを摂取している。

 

「鷲津先生、お静かに」と注意する甘利田。

 

月曜日が来た。甘利田は給食室に行き、給食のおばさんの文枝さんに、

 

「もし神野が来ても、決して何も与えないでください」

 

と念を押す。

 

神野は牛乳瓶の絵を描いて、何かを思い悩んでいる。

 

そこに地震が来る。クラス全員が机の下に隠れる中、

 

「揺れる…」

 

という言葉に、何かが閃く神野。

 

給食の時間。メインはポークビーンズ。ほうれん草のおひたし、そして牛乳に混ぜて飲むミルメーク。

 

例によって甘利田先生はポークビーンズが学校給食に定着した経緯などを頭で反芻しながらゆっくりと丁寧に食べる。

 

そして影の主役、ミルメーク。甘利田はまず牛乳を一口飲み、粉末を入れても溢れない余裕を作る。

 

その後、ミルメークを投入、スプーンの柄でゆっくりかき回す。

 

が、興奮して少しこぼしてしまう。

 

落ち着きを取り戻し、ピンク色に染まったイチゴ味の牛乳を恍惚として飲み干す。

 

牛乳瓶の底には、溶けきれなかったミルメークの粉が少し残るが、許容範囲と判断する甘利田。

 

そしてふと、神野の席に目をやると…。

 

神野は鷲津先生からプロテインシェイカーを借り受けていた。

 

そこに牛乳を全部入れ、ミルメークも入れ、

 

激しくシェイク。

 

ミルメークの粉の溶け残しなど一粒もなく、牛乳も一滴も溢れず、

 

完璧なミルメークがシェイカーの中で完成する。

 

今日も…。負けた

 

甘利田はつぶやいた。

 

第3話「4番、サード、ソフトめん」

 

健康診断の日。肝心の担当医の到着が遅れている。身体測定など、教員でやれることをやっていると、やっと校医が到着。

 

名医と噂の校医があまりにヨボヨボ。初めての御園先生は

 

「本当に名医なんですか?」

 

と小声で甘利田先生に確認する始末。

 

すると校医がいきなり、

 

「…暑い…」

 

と言って、白衣のボタンに手をかけ、ガバッと白衣を脱ぎ捨てた。

 

するとなんと、下にもう1枚、白衣を着ている。

 

場内が爆笑する中、甘利田先生が御園先生に呟く。

 

「ちなみにあと2枚、着込んでいます」

 

「夏にですか?」

 

「夏だからウケるんだと前に聞いたことがあります」

 

この方法で校医は生徒たちの緊張をほぐし、健康診断に臨ませているのだった。

 

給食が始まった。

 

ソフトめん、なみなみと盛り付けたミートソース、フレンチサラダ、コッペパン。

 

ソフトめんが特許を取得している食べ物であること、正式名称が「ソフトスパゲティ式麺」であること、学校給食でしか味わえない、市販されていない麺であること、などを頭で反芻しながら、

 

まず、ソフトめんを4等分にカット。

 

1袋分そのままミートソースに投入すると、溢れかえり、ソースがこぼれてしまうからだ。

 

残りのぶんも考えながら丁寧にソースをまぶして食べ、その美味しさに悶絶する。

 

が、興奮し、ミートソースが少し跳ねて、顔に付着してしまう。

 

ズルズルと勢いよく啜り上げたい誘惑。

 

しかしそんなことをすれば、跳ねたミートソースがワイシャツに付いてしまう。

 

極端に前かがみの姿勢で、ゆっくり食べる甘利田。

 

その美味しさを噛み締めながら食べ終える。

 

そして神野の席を見ると、彼はなんと、自宅から大きなラーメン用のどんぶりを持参していた。

 

まずそのどんぶりに、なみなみと盛られたミートソースをすべて移す。

 

そしてソフトめんを一袋、まるまるどんぶりに投入。

 

グッチャグッチャと混ぜ合わせる。

 

確かにソースがこぼれず、ソフトめんは均等にソースがまぶされた。しかし、それはシャツにソースが跳ねるリスク回避にはなっていない。

 

すると神野は立ち上がり、制服のシャツを、おもむろに脱いだ。

 

下には体操服を着ている。

 

あの名医が白衣を重ね着していたように、神野は制服の下に汚れてもいい体操服を着ていたのだ。

 

そして神野は、ミートソースまみれのソフトめんを、ズルズルと音を立てながら勢いよく啜り上げる。

 

ミートソースは飛び跳ね、神野の顔は言うに及ばず、体操服の胸も真っ赤に染める。

 

が、構わず啜り上げる神野。

 

ちまちまと前傾姿勢で食べていた甘利田は、その衝動的な食べ方にショックを受ける。

 

しかもよく見ると、あれほど注意して食べたのに、甘利田は自分のワイシャツが一部ソースが飛んでいたのに気づく。

 

完敗だ…

 

甘利田はつぶやいた。

 

第4話「八宝菜に欠かせないもの」

 

父兄参観。甘利田は自分の授業ではなく、副担任・御園先生のお披露目も兼ねて御園先生の授業とする。

 

緊張を隠せない御園先生に、

 

「父兄など野菜と思え」

 

とアドバイスする甘利田。

 

国語担当の御園先生の授業は、「走れメロス」の感想文。

 

何人かの感想文が読まれたあと、挙手をした神野の感想文は、

 

メロスもセリヌンティウスも、3日間、何も食べていなければ、相当お腹が空いていただろうな、と思いました。(中略)僕も困難に打ち勝ち、美味しいものに出会うよう、信じてみようと思います。

 

という、謎の宣言のようなもの。

 

甘利田は神野の謎の宣言と今日の献立・八宝菜と白玉フルーツポンチの関連を考えるため給食室にやってくる。

 

給食のおばさんの文枝さんは具合が悪そうだ。

 

そして給食の時間。

 

神野の後ろに並んだ甘利田は神野の表情に釘付け。悲しそうな神野の顔。何かを決意した神野の顔。

 

苦手な野菜でもあるのか…。今日は、勝てる!

 

甘利田は心でそう叫ぶと、給食に取り掛かる。

 

八宝菜を世に広めたとされる李鴻章への感謝を胸に食べる甘利田。

 

肉。玉ねぎ。人参。かまぼこ。きくらげ。きぬさや。

 

八宝菜の八は八種類という意味ではなく、多く、という意味なのだ。またの名を“五目うま煮”とも言う

 

甘利田先生は驚くほどの知識量を心の中で披露しながら八宝菜を味わう。

 

その時、雷に打たれたような感覚を味わう。

 

なんだ?この感覚…。“何かが欠けている”そんな感覚…

 

しかし甘利田先生は、自分は疲れているんだ、と言い聞かせる。

 

やがて彼はフルーツポンチもパンも平らげ、李さんへの熱すぎる感謝を胸に、給食を終える。

 

そして驚くべき光景を目にする。

 

神野ゴウが、ひとくちも給食を食べていないのだ。

 

やはり嫌いな野菜が入っていたのか!勝った!

 

甘利田がガッツポーズを取っていると、神野はただ一言、

 

「メロス…」

 

と呟く。あの、セリヌンティウスのように。

 

その時、1年1組のドアが勢いよく開き、

 

文枝さんが駆け込んでくる。

 

メロスのように。

 

手にはボウルを持っていて、

 

「ごめんなさい、今日からうずらの卵、別盛りになってて!私、熱でボーッとしてて、1組のぶんを別のクラスに!連絡受けて、今、取ってきたの!」

 

甘利田を含め、全員が唖然とする中、神野ゴウだけがゆっくりと立ち上がり、

 

まだ一口も食べていない八宝菜を差し出す。

 

「まだ食べてなかったの?」

 

という文枝さんに、

 

「はい、メロス」

 

神野はそう答えるのだった。

 

必ず給食のおばさんが気づいて持ってきてくれる、お前はそう信じた!信じて待ち続けた!

 

勝ち誇った顔の神野に、またも敗北を認めざるを得ない甘利田だった。

 

第5話「酢豚は大人の味」

 

美術の時間。校外で写生会だが、美術教師の森山は自由奔放な1年1組の生徒たちに手を焼いている。

 

その中でも特に、何を考えているかわからない神野に。

 

神野は大きなモニュメントの前に座り、それを写生しているように見えた。

 

が、神野の画用紙を覗き込んだ森山は、自分の良識では考えられない絵を描いている神野に慄然とする。

 

今日は下書き、来週は彩色。

 

森山は甘利田を美術室に呼び、神野が描いた絵を見せる。

 

甘利田と、一緒についてきた御園先生は、その絵を見て、

 

「シュール…としか言いようがない」

 

との結論になる。

 

森山には神野の絵が理解できないが、森山は見抜いていた。神野と甘利田先生には、2人にしか見えていない風景があることを。

 

「甘利田先生ならこの絵の意味がわかりますよね?」

 

しかしその絵を見た甘利田は、

 

「かいもく…。見当もつきません」

 

と森山を突き放す。

 

給食が始まった。酢豚、もやしの中華サラダ、中華スープ。パンは食パン2枚だ。

 

常節(とこぶし)中学の酢豚は、清王朝方式。パイナップルが入っている。

 

今から100年前の中国・清王朝時代。パイナップルは極めて希少な果物で、酢豚に高級感を演出するためレシピに導入された。

 

肉が柔らかくなるからパイナップルを入れている、という説は正しくない。

 

パイナップルに入っている酵素は肉を柔らかくするが、その酵素は熱に弱い。そしてこの酢豚に入っているパイナップルは缶詰。熱処理を終えている。効果は皆無だ。

 

甘利田自身、中学生の頃はデザートなのかおかずなのかわからない酢豚とパイナップルという組み合わせに戸惑っていた。

 

しかし大人になった今は違う。甘利田は酢豚の中のパイナップルをパクパクと食べる。

 

うまい!…。と思う…。

 

うまい!…。はずだ…。

 

いつも給食を絶賛する甘利田も、酢豚にはキレが悪い。

 

酢豚のパイナップルを余裕で食べられるのが大人だ。そこが子供とは違うのだよ

 

甘利田はそう胸の中でつぶやき、給食を食べ終わる。

 

そして神野を見る。

 

なんと、神野は、パイナップルを残していた。

 

その様子に甘利田は激しいショックを受ける。

 

この時、初めて、視聴者は神野が描いた絵を見ることになる。

 

モニュメントの前に、制服を着た1人の男子中学生がこちらを向いて立っているが、

 

その顔は見えない。なぜなら、

 

顔の正面に、パイナップルが宙に浮いているから。

 

わずかに見える中学生の頬の部分には、

 

涙が流れている。

 

この時、甘利田は神野の絵を完全に理解した。

 

神野は今日の献立が酢豚であり、パイナップルが入っていることを予見していた。

 

酢豚にパイナップルだけは、神野は受け入れられなかった。

 

あの絵は、残すことが決定しているパイナップルへの贖罪だ。まさに、食材への贖罪。あの人物はヤツ本人だ。あのパイナップルの裏であの人物は、いや、ヤツは…。泣いているのだ…。

 

なんという凄まじい給食愛だ。敵ながらあっぱれと言わざるを得ない

 

今日、私は勝ったのか?酢豚にパイナップルを軽々クリアするのが大人の証と息巻いて、美味しさとは別の地平で勝負していたのではないか

 

だとしたらそれは、給食道に反する行為だったのかもしれない…

 

甘利田は森山の元に出向き、

 

「あの絵ですが、あれは単なる悪ふざけです。本人に戻し、私からやり直しを命じます」

 

甘利田はそういうと、森山の手から絵を奪い取る。

 

そして下校途中の神野を捕まえ、絵の描きなおしを命じる。

 

問題の絵を神野に手渡しながら、

 

「この絵だが、私は…。嫌いではない」

 

甘利田はそう言うのだった。

 

数日後。完成した絵を森山が廊下に張り出している。

 

バラエティに富んだ1組の絵。

 

神野の絵は「光」と題されている。

 

モニュメントの前に、光に照らされた男性が立っている。

 

御園先生には、その男性はどう見ても、甘利田先生にしか見えなかった。

 

第6話「ワンタンスープと名前の長いパン」

 

全10話ある中で、最も好きな回です。

 

吹奏楽部の朝練を御園先生が見学しているが、お世辞にも上手とは言えない演奏。

 

顧問は甘利田先生だが、部長が言うには

 

「甘利田先生はほとんど来ません」

 

とのこと。

 

ホームルームで生徒たちが席替えについて活発な意見を出しても、甘利田は我関せずな顔。

 

そんな甘利田に、職員室でついに御園先生がブチギレる。

 

「先生、酷くないですか?無責任すぎませんか?!」

 

甘利田は驚きながらも、

 

「だって…。御園先生がやりたそうだったから。何かやってないと落ち着かないんでしょ?」

 

御園先生は見透かされた感じで黙り込む。

 

体育の授業中、誤ってボールを顔面に受けた神野が1人で教室に戻ると、御園先生が1人で必死に席替えについて考えている。

 

神野に席替えの意見を求める御園先生。

 

「気にしたことありませんでした」

 

と答える神野。

 

給食の時間。今日の献立はワンタンスープと白身魚のフライ。ポテトサラダにコッペパンと牛乳。

 

白身魚とはメルルーサと呼ばれるタラの仲間。ロボットアニメに出て来そうな名前だ、と言う甘利田の心の声に、それっぽいアニメが描かれているのが面白い。

 

ワンタンの食感を楽しみながらも、鯨の竜田揚げの時に神野がこっそり持って来たタルタルソースが正式についているメルルーサに喜びを隠しきれない甘利田。

 

食べ終わって神野を見る。

 

竜田揚げの時と同じように、コッペパンに切れ目を入れ、メルルーサとタルタルソースの白身魚ドッグで食べている神野。

 

全くひねりがない食べ方に、逆に驚く甘利田。

 

が、よく見ると、メルルーサもパンも半分しか使っていない。

 

あと半分も同じものを作るのか?

 

そう思っていると、神野はポテトサラダとほぐしたメルルーサをタネとして作り、それをパンに挟んだ。

 

ポテト・メルルーサ・サンド!

 

いや、ポテサラ内の卵や玉ねぎを計算に入れると、

 

エッグ・ポテト・オニオン・メルルーサ・サンド!

 

サイドメニューを使って来た神野に、全体を俯瞰で観れていない自己を反省し、甘利田はまたも完敗を自覚したのだった。

 

放課後。吹奏楽部の練習。

 

素人以下の演奏を聞く御園先生の横に甘利田先生が立つ。

 

「私は吹奏楽に興味がないが、そんな私にもわかる。お前たちはヘタクソだ」

 

生徒の自尊心を気づつけるこの言葉に御園先生は慌てる。

 

しかし意外や意外、生徒たちは笑っている。

 

「ヘタながら好きでやっている。好きなものをああしろこうしろと邪魔するのは無粋だ。そう言う部活もあっていい」

 

御園先生は甘利田先生がなぜ吹奏楽部を放任していたかを知るのだった。

 

「ただもう少し俯瞰から見てくれる人が必要だ。だから今日からここの顧問は御園先生とする」

 

聞いていなかった御園先生は驚く。

 

去っていく甘利田先生を廊下まで追いかける御園先生。

 

「私は甘利田先生のようにはできないんです」

 

初めて自分の悩みを告白する御園先生。前の学校でも、良かれと思って、全力で生徒たちにぶつかっていった結果、鬱陶しいと思われ、学校で居場所を失った。

 

だから彼女は正規の教員でなく、産休補助の教員になったのだった。

 

体育の授業を抜け出した神野から聞いた話で、御園先生は目からウロコが落ちた。

 

席替えをする必要がないのは、甘利田先生が決めた今の席がいいから。

 

ガキ大将の前には口うるさい桐谷さんを抑止力として配置したり、桐谷さんの横に給食が遅い君山さんを配置、ちょっかいを出しづらくしている。

 

「御園先生は頑張っています。でも放っておいて欲しい時もあります」

 

無責任だと思っていた甘利田先生が、実は誰より深くクラスを、部活のことを考えていた。

 

そのことに自信をなくす御園先生。

 

しかし甘利田先生は御園先生にこう言った。

 

「むしろ、私や神野の方がダメ人間なんです。頑張っている人が、ダメ人間の言うことを真に受ける必要はない」

 

こう言って御園先生に自信を与える甘利田先生。

 

「ただ、先生は楽しんでいない。それだけです」

 

甘利田先生のこの言葉に、御園先生は、少し、自分の未来に光明を見た気がした。

 

酢豚とパイナップルで、神野が「光」の絵を描いたように。

 

第7話「ヤキソバ・パンデミック」

 

全10話中、唯一、全編がホラー調に描かれる異色作。

 

「なぜ私はこの事態を防げなかった…」

 

甘利田の深刻口調のモノローグで始まる。甘利田はハンカチで口を覆い、まるで何かのウィルスから逃れているような映像とともに…。

 

思えば、最初に異変に気付いたのは御園先生だった。給食直前の職員室で、御園先生は甘利田にこう言う。

 

「今日の1組、なんかたるんでますね。覇気がないと言うか…」

 

甘利田は心の中満面の笑みを浮かべ、こう反論する。

 

みんな知っているんだ。今日の給食がヤキソバだと言うことを…

 

「今日の給食、なんですか?」

 

御園先生がまるで甘利田の心を見透かしたかのように聞く。甘利田は自分が給食マニアであることを他人にはひた隠しにしているが、どうやらバレバレらしいことが垣間見える。

 

給食が始まる。

 

メインメニューのソース焼きそばに甘利田は我慢できずいつもより激しく食らいつく。

 

日本のヤキソバの歴史は浅く、終戦後あたりから。

 

当時は食べ物が乏しい

麺の原料の小麦が入手しずらい

キャベツでカサ増し

キャベツの水分で味が薄くなる

ソースで味を付けた

 

など、ソース焼きそばの歴史についても詳しい知識を披露する甘利田。

 

回転窯を使った調理方法は、

 

大量の焼きそばを力任せにかき混ぜる

麺が重みで切れ、一本一本が短い

長い麺がなく食べやすさを演出

 

以上のような理由から

 

・麺にコシはなく

 

・野菜はベッチョベチョ

 

・肉はかたい

 

・なのに、美味い!

 

給食ヤキソバの旨さをそう結論づける甘利田であった。

 

そして焼きそばを半分ほど食べたところで、コッペパンに切れ目を入れると、残りの焼きそばを投入。

 

焼きそばパンを製作するのだった。

 

こうして心から満足して食べ終えた甘利田だが、その直後に、

 

教室の異様な雰囲気に気づく。

 

クラス全員が、ほとんど給食に手をつけていないのだ。

 

神野ゴウまでもが。

 

焼きそばなのに。みんなのアイドル・焼きそばなのに。

 

そう思った瞬間、甘利田はハンカチで口と鼻を覆うと、

 

御園先生の手を引き教室の外に避難、ドアをしっかりと閉めるのだった。

 

集団感染。インフルエンザか食中毒。

 

誰もが好きな焼きそばをクラス全員が食べないなど、それしか理由が考えられない。

 

自体の緊急性を鑑み、校長に全校閉鎖の打診まで考える甘利田。

 

「いつ感染したんだろう…。今日の1時間目は?」

 

「理科です、イカの解剖だったそうです」

 

「イカからの感染…。ほぼそれだな!」

 

「あの、先生…」

 

「2時間目は?!」

 

「2、3時間続けて家庭科です、グラタンを作ったそうです」

 

「そこでも食材か…。どこかで感染して4時間目で発症…」

 

「単に食欲がないだけですって!」

 

「だって今日は焼きそばですよ!ヤ・キ・ソ・バ!焼きそばを目の前にして食欲がわかないなんてことはありえない!」

 

「あります!」

 

「どんなとき?!」

 

「満腹時です!」

 

まあ視聴者は薄々気づいてはいたが、御園先生が説明する。

 

1時間目、実験で使ったイカをみんなで炙って食べた

 

2、3時間目、グラタンは分量を間違え作りすぎたが全員で完食。

 

クラス全員が満腹で給食が食べられない事実を理解した甘利田は教室に戻る。

 

神野も満腹で給食が食べられないのか…と思いきや、

 

神野は手元のタッパーを開き、焼きそばの上でタッパーを空けた。

 

中からは数匹の、小さなエビが!

 

さらに次のタッパーからは、炙ったイカが、焼きそばの上に転がり落ちてきた。

 

海鮮焼きそばを作ったというのか!

 

1時間目のイカ、2、3時間目のグラタンのエビ、を密かに確保し給食の文枝さんに頼んで冷凍保管してもらっていた神野。

 

授業であるがゆえ、それらを食べる事は避けられない。それでも海鮮焼きそばにして食べるその執念と集中力。

 

自分自身は献立が焼きそばであることを単純に喜んでいた時、神野は様々なものと戦っていたことを知る甘利田。

 

そうか、ヤツは今まで誰かと勝負なんかしていなかった。ヤツが勝負していたのは、自分自身だったんだ

 

これまでの敗北感とは異なる喪失感のようなものを感じる甘利田。

 

いつもは厳しい言葉をかける下校時の神野に満足に口もきけない。こう言うのが精一杯だった。

 

「今日の焼きそば、美味かったか?…い、いや、いいんだ、気をつけて帰れ」

 

すると神野は甘利田の横に腰を下ろし、こう答える。

 

「いろいろやって見ましたが、普通に食べればよかったと思いました」

 

神野のこの言葉が甘利田の心に特殊な感情を生む。連帯感。

 

敵対していたのではなく、給食というフィールドに集う同志だったのだ…

 

甘利田の心に明日への活力が蘇るのだった。

 

第8話「危険な果実冷凍みかん」

 

御園先生は1組生徒の水筒を預かり職員室に持ってくる。

 

今日から水筒持参が許可されたのだが教室内は暑すぎてすぐぬるくなるからだ。

 

冷蔵庫では多すぎて冷やせないので、たらいに水と氷を張り、生徒の水筒を入れる御園先生。

 

「不公平感が否めない。1組の水筒は冷えて、2組、3組は冷やしてもらえないなら正当な理由が必要だ」

 

と甘利田は御園先生のやり方に難色を示す。

 

「水なんて味わうものじゃない。校庭の水道で十分だ」

 

「校庭の水道なんてお湯しか出ませんよ!」

 

給食の時間。

 

デザートは冷凍みかん。

 

4つ余ったので、欲しい者が前に集まりジャンケンをすることに。

 

神野が参加する姿を見て、教師である甘利田まで参加する。

 

今日ヤツは冷凍みかんが2個必要であるということだ。これは阻止する必要がある

 

というのが甘利田が参加する理由だ。

 

結局、神野は1個をゲットし、甘利田はジャンケンに負ける。

 

ポタージュスープ、コロッケ、コッペパン、マーガリン、牛乳、そして冷凍みかん。

 

ポタージュの具材のゴロゴロ感を楽しみ、コロッケは半分に割り、コッペパンでコロッケサンドを作って食べる。

 

そしてラストの冷凍みかん。

 

カッチカチの冷凍みかんが食べられるまでの解凍を待つ間、例によって甘利田の冷凍みかんウンチクが披露される。

 

冷凍みかんはただ冷凍庫に入れておけばいいというわけではなく、急冷と水つけを繰り返し、外に氷の膜を作り、乾燥を防いでいる、などなど。

 

甘利田がついにみかんに手をかけるが、もちろん解凍しきってはいない。必死で爪を立て、「痛い、痛い」と言いながら冷凍みかんを剥く甘利田。

 

指に少し怪我をしながらも、剥けた冷凍みかんを食べる甘利田は、恍惚の表情。

 

日本人が考えた、最も安価な極上スイーツだ

 

甘利田はそう胸でつぶやき、給食を終える。

 

一方、神野は…。

 

冷凍みかんの上半分を剥き、まるで上半球をシャーベット状にして、サクサク音を鳴らしながらスプーンで食べている。

 

何故あんなことができるまで解凍できているんだ?

 

神野はジャンケンで勝ち取った冷凍みかんを水筒のコップに入れている。

 

水で解凍を促したのか?

 

その時、甘利田の頭に、先ほどの御園先生の声が響く。

 

「校庭の水道なんてお湯しか出ませんよ」

 

真夏の太陽熱で温まった校庭の水道水で冷凍みかんの解凍を促す神野。

 

ジャンケンで勝ち取ったみかんも、普通のみかんのようにサクサクと皮が剥ける。

 

実はいい具合に凍っている。それをシャーベット状に加工し、みかんの下半球の皮に盛り付けると、

 

神野はそれを教卓に座る甘利田に差し出した。

 

「こんなの作ってみました。よかったらどうぞ」

 

神野は最初から自分にこれをあげたかったから2個必要だったことを知る甘利田。

 

私はヤツの目論見を阻止するためにジャンケンに参加した。だがヤツの目論見は、私にプレゼントするためのものだった。私は、恥ずかしい。ヤツがくれたシャーベットは、抜群に美味かった。私は今日、ヤツとの絆を感じた

 

第9話「アゲパンという名のスイーツ」

 

女子生徒・藤井マコの席から大量のパンが出てきた。理由を問う甘利田に対し藤井さんはのらりくらりと理由を語らない。

 

同じ女子として御園先生は藤井の真意が気になる。

 

藤井さんはパンが食べきれず、叱られるのを恐れてパンを机に詰め込んでいた、と決めつけていた御園先生は、藤井さんの言葉に驚く。

 

「私、神野くんが好きなんです」

 

給食が好きな神野に藤井さんはよくパンをプレゼントしていた。でも連日のパンに神野は「パン過多」に陥り、藤井さんのプレゼントを拒否。

 

でもまた神野がパンが必要になる日のため、パンを保管していたのだ。

 

何もわかっていなかった自己嫌悪に陥る御園先生。

 

一方校長は、御園先生が産休補助をしている先生が、育休も取りたいと連絡してきたことを受け、御園先生の勤務延長を希望する。

 

が、御園先生は常節中学赴任初日に「短く働きたい」ことを強調していたので、甘利田に勤務延長を打診してくれるよう、密かにお願いをしてくる。

 

給食の献立は、カレーシチュー、ちくわの磯辺揚げ、チーズ、そしてアゲパン。

 

カレーが大好きな甘利田は、カレーパンとして食べるイメージトレーニングまで行い、その時を待っていた。

 

ところが、悲劇が起きる。

 

配膳室から1年1組の教室へ給食を運んでいた当番が、台車と足が絡まり台車が転倒、

 

カレーシチューが入っていた大鍋が廊下に落下し、

 

鍋の中のカレーが全て、廊下にぶちまけられてしまった。

 

1組生徒は全員が廊下に出て、大パニック。泣き叫ぶ生徒もいる。

 

いちばん大声で悲鳴をあげていたのは、他ならぬ甘利田先生であった。

 

そんな中、神野は、その阿鼻叫喚の地獄絵図の如き現場から、足早に何処かへと立ち去るのだった。

 

メインのオカズがなくなった1組の、給食前の校歌斉唱はまるでお通夜のようだ。しかし甘利田は、

 

「当番を恨むことのないように」

 

とクラスに注意する。御園先生は、

 

「プロセスチーズは余ったので1人3個まで食べていいです」

 

というが、反応は薄い。

 

アゲパンとちくわの磯辺揚げだけの給食。

 

給食という文化は世界にあるが、配膳から片付けまでを生徒にやらせるのは、日本独自のものだ。となればこういう事態も致し方ない

 

アゲパンを豪快に牛乳で流し込み、給食を終える甘利田。

 

神野の席に目をやると、彼は信じられない行動に出ていた。

 

理科室からアルコールランプ一式を持ってきて、ランプでチーズを溶かし、チーズホンデュでアゲパンを食べていたのだ。

 

教室で火を使うとは、さすがに看過できん!

 

しかし甘利田は、カレーがなくなり、方策が潰えても、なおかつプランBを発動させ、そうまでして給食を食べようとする神野の姿をアッパレと思ってしまう。

 

私はカレーがなくなった時点で諦めていた。だがヤツは諦めていなかった。私は恥ずかしい。私にヤツを注意する資格なんてない

 

放課後の3者面談。藤井さんと母親、甘利田、御園先生の面談が終わると、廊下で待っている次の番は神野だ。

 

しかし神野の隣に保護者の姿はない。

 

藤井さんは神野に近づき、

 

「もうパンはプレゼントしない。あんなことするなんて、食べ物で遊んでるとしか思えない」

 

御園先生は神野の保護者がいない理由がわからない。神野はただ、

 

「働いています」

 

とだけ言う。

 

「今日はもう終わりにしましょう」

 

甘利田はそう言うと、神野に、

 

「お前、今日は、頑張ったな。よくやった!」

 

甘利田は初めて、神野を褒める。

 

そして産休補助があと2週間となった御園先生に、

 

「1年延長です」

 

と当然のように告げる。

 

「イヤですか?」

 

と問う甘利田に、御園先生は戸惑いながらも

 

「いいえ」

 

と答える。

 

最終話「2人だけのカレーライス」

 

実に素晴らしい最終回。

 

常節中学、初めて米飯給食の日。

 

体育館での全体朝礼を抜け出し、神野は教室に戻り、校庭を眺めている。給食を乗せたトラックが来るのを待っているのだ。

 

神野の後を追ってきた藤井さん。神野がご飯の給食を心待ちにしていることを知り、

 

「じゃあ、もう本当に…。パンはいらないんだね」

 

と悲しく言うシーンがとても切ない。

 

神野は配膳室前でお米が本当に到着したかを確認しようとする。そこに甘利田が現れ、すぐに教室に戻るよう強く注意する。

 

しかし甘利田も、コメの到着を確認しにきたのだった。

 

ところが、大問題が発生。

 

ご飯がこない。

 

給食センターのミスで、常節中学に送るご飯が常節北中学に送られ、北中のパンが常節中学に届いていることが発覚する。

 

そのことを文枝さんから聞いた神野は猛ダッシュで校庭に飛び出すと、自転車に飛び乗り、学校を飛び出す。

 

その様子を見た甘利田も、自転車に飛び乗り、神野の後を追う。

 

北中についた神野。4時間目の最中の構内は人気がない。そこに現れたワイシャツ姿の教師は、神野が北中の生徒でないことに驚く。

 

「常節中学1年1組の神野です」

 

神野は丁寧に、ここにきた理由を説明。間違ってここに配送されたご飯を常節中学に戻してほしい。ひいては給食センターに車の手配をしてもらえませんか、と。

 

ワイシャツ教師が戸惑う中、もう一人、ジャージ姿の教師が登場する。

 

ジャージ教師は神野の言い分に耳を貸さず、神野の襟首を掴む。

 

ワイシャツ教師は神野の言い分も聞こう、とジャージ教師をなだめるが、ジャージ教師は高圧的な態度で神野を出入り口まで襟首を掴んだまま引きずって行き、そのまま引き倒す。

 

「2度とこんなバカなマネ、するんじゃないぞ!」

 

倒れている神野に吐き捨てるジャージ教師。

 

「バカなマネとはなんだ」

 

甘利田は神野の担任であることを名乗り、ワイシャツ教師とジャージ教師の前に進みでる。

 

「常節中学の教師ならこの生徒をどうにかしてくださいよ」

 

ジャージ教師の言い分に全く怯まず前に出る甘利田。

 

「神野は間違いを正しにきただけだ。あんたたちにも噛み付いただろう。だが正しいことを言っていたはずだ。なぜなら間違ったのは大人だからだ」

 

そんな甘利田に軽蔑の視線を投げるジャージ教師。

 

やにわに甘利田はジャージ教師の胸ぐらを掴むとブンブンと振り回し、床に引きずり倒す。

 

「あなた神野にこうしてましたね、どうですか気分は?」

 

警察を呼ぶぞ、と息巻くジャージ教師。彼に馬なりになり、甘利田はさらに言う。

 

「これは罪人に対する行為だ。神野は罪人じゃない。間違いを正しにきただけだ。子供の真剣な姿に触れた時、大人は、たとえ相手が子供であっても、負けを認めなければならない

 

自転車を引きながら帰途につく神野と甘利田。そこに、最初に神野に接したワイシャツ教師があとを追って来る。

 

常節中学についた2人。

 

5時間目は体育なので教室には誰もいない。

 

2人用の給食は、御園先生が用意しておいてくれた。

 

2つの机を向かい合わせに起き、カレー、一口カツ、パン、牛乳、が置いてある。

 

2人は初めて、向かい合って席に着き、給食を食べる。

 

あのワイシャツ教師は配膳室にお願いして、2人のためにおにぎりを作ってきてくれた。

 

そのおにぎりをカレーに入れて食べる2人。

 

「そういえば今日は何を仕掛けるつもりだった?どうせ何か思いついていたんだろう?」

 

と問う甘利田に神野が答える。

 

「今日はノープランでした。カレーは、カレーですよ」

 

2人で仲良く給食を食べるシーンは、最終回のラストシーンにふさわしい、とても美しいシーンでした。

 

物語はこの後、秋になり、劇場版へと引き継がれます。

 

劇場版は隠れた名作と呼んでいい、素晴らしい作品です。

 

それについてはまた別の記事で書こうと思います。