いちばん良い記事
7年前、僕はマリちゃんについての記事を書きました。
たぶんこの記事は、僕が今まで書いた中で、
いちばん良い記事だと自負しています。
マラソンを通じて知り合ったマリちゃんという女性について、
彼女が送ってきた苦難の人生について書きました。
マリちゃんの苦難
詳細は上のリンクを読んでほしいのですが、
極めて粗っぽく要約すると、
①大腸がん
②コラーゲンの形成異常
③骨盤の骨折
④脊椎の先端が脳幹部に食い込む
どれ1つをとっても、人生の大事件となる病魔に、
彼女は何種類も侵されているのでした。
特に②、「コラーゲンの形成異常」により、軟骨や靭帯をはじめ、体中の組織が劣化しやすい状態であって、
そのため①のがんの手術のあとも、縫合箇所が劣化して体内で出血したりして、
何度も再手術。
④、「脊椎の先端が頭蓋骨(脳幹部)に食い込む」、に至っては、日本国内ではほぼ手の打ちようがなかったものの、
世界中でわずか2名しか執刀できる医師がいない、
という極めて特殊な手術をアメリカで受け、
長いリハビリの後、今は、一見すれば普通の人と何ら変わりないような様子で暮らしてらっしゃいます。
7年ぶりの再会
2017年、この大阪マラソンでの応援以降、われわれ夫婦とマリちゃんとは、
連絡を取り合うことがなくなってしまって。
ずっと7年間、没交渉のままでした。
ところが、お方さまが乳癌になったこの記事を書いたところ…
マリちゃんの方から、我々に連絡をくれました。
彼女は大腸がんをはじめ、様々な手術を繰り返してきた人物。
お方さまが乳癌になったことを知り、連絡をくれたのでした。
その後のマリちゃん
7年ぶりに僕たちはマリちゃんと会いました。
まず驚いたのは、
マリちゃんの外見が、7年前とまったく同じ
であったことです!!
これはお世辞などでも何でもなく、
ちょっと「怖い話」の部類に入れてもいいくらい、
1ミリも老けてない…(;・∀・)
これには僕もお方さまも、本当に驚きました!!
7年前の記事にも書いた通り、マリちゃんは骨盤がかなり割れているので、
走ることはできない代わりに、
水泳を、高校生の部活並みに激しく、練習されています。
そんなストイックな毎日が、きっと、
彼女を老けさせないんだろうな、と邪推する次第です。
日本1、骨盤にボルトが入った人物
彼女は大学で教鞭をとっているだけあって、
今年、定年される年齢だとは思えないパッションとスピードで話されます。
要はマシンガントーク。
彼女は腰と首の骨を、無数のネジで接合されているのですが、
日本で一番、カラダにネジが入っている人間
だとおっしゃっていました。
後日、僕が、
あの発言は真実ですか?誇張したものですか?
と聞いたところ、
腰だけなら真実と言えると思います
とのことでした。
それでも、論文で発表されていない、知られていないケースもあると思うので、一概には言えない
とのことでした。
ただ、
(私の腰の手術は)知る限り、誰にも行われていない手術です
!!閲覧注意!!首と腰のレントゲン写真
マリちゃんからいただいた、彼女の腰と首のレントゲン写真を貼り付けます。
すこし怖いと思われる方もいるかもしれないので、
ここから下は、閲覧注意でお願いします!!
首
首の軟骨の劣化により、脊椎の先端が延髄に食い込む、
という症状を止めるため、
頭蓋骨と脊椎を、ネジで固定する
という、世界でも2名のみ執刀できる極めてレアな手術によるネジたち
骨盤
前
横
彼女の生きがいだったランニングをやめざるを得なくなった、骨盤の骨折を止めるネジたち
ネジ、折れる
ある日ベッドで横になっていると、突然体内から
!!バコン!!
と音がして。
立ち上がると、
ギィ~…
と音がして。
彼女はとっさに、
(あっ…。これはネジが折れたな)
と悟ったといいます。
ところが彼女の主治医は、
「あのネジは人体に使う最も太いロッドだ、絶対に折れない!!」
と彼女の訴えを信じません。
MRI
本来、体内に金属が入っている患者さんは、MRIは撮ることができないとされています。
(強力な磁力が発生するので金属が動き、体内を傷つけるため)
ですが体内で固定されていれば撮影は可能。
彼女はネジが折れていることを確認すべく、MRIを撮影しました。
ですが…。
金属に、全方向からの光が反射して。
金属部分がよく見えません。
MRIでネジが折れたことは確認できませんでした。
そこで彼女は動くたびに体内で鳴る
ギィ~…
ギィ~…
音を録音してドクターに聞かせたそうです。
それでも信じないドクターに対し、
それだったら(手術で)開いて、直接確認してください!!
と直訴。
根負けしたドクターが開いてみると…。
何と、実際に折れていて。
ドクターが驚愕したらしいです。
水泳までNGに
大腸がんの手術後、劣化した組織から出血するため、
彼女は主治医からランニングを止められていましたが、
彼女はそれに従いませんでした。
ですが骨盤が複雑に割れてしまい、
(ランを続ければ骨盤がバラバラになり、立つこともできなくなる)
という現実に直面し、
彼女はランニングをやめました。
その後見つけた、水泳という生きがい。
頭蓋骨と頸椎をネジで止めているので、ドクターから、
「飛び込みは絶対にダメ!!」
と言われているのに、
水泳のレースでは、飛び込みは必須。
彼女は連日、バンバンと飛び込んでいたのでした。
この7年間、彼女はただ泳ぐのではなく、
レースに出ることを生きがいにしていて。
何度もメダルを貰って、それが生きる糧になって。
再手術
でも去年の8月6日に、再び首の手術をすることになり。
その手術をうければ、いよいよ、
飛び込みは絶対に出来なくなる。
(水泳のレースも、あきらめなくっちゃいけない…)
彼女の前に再び訪れる試練。
その手術が、いろいろな理由から、延期になりました。
神様がくれた、延長タイム
彼女はさっそく9月のレースにエントリー。
結果は…。
年代別で2位になることができました!!
首の手術の延期は、様々な理由が複雑に絡んだ延期のため、
実はまだ行われていなくて。
彼女は貪欲にレースに参加。
11月には…
今年の2月には…
残り少なくなった水泳競技者としての時間を、悔いなきよう、過ごしてらっしゃいます。
ですが近いうちに必ず訪れる、水泳レースに出られなくなる日。
更なる病魔
現在、彼女の顔の左斜め下に、小さな腫瘍があって。
耳下腺腫瘍というのですが、
この腫瘍が少し厄介なようです。
摘出したいのだけど、できない。
というのもこの腫瘍には、顔面神経が絡まっていて。
さらに彼女には脊柱管狭窄があり、全身麻酔をすれば、
姿勢によっては顔面神経どころか、
脊髄神経を損傷する可能性もあって。
腫瘍の摘出手術は相当な困難が予想され、
さらにこの腫瘍については、まだ研究が進んでいなくて。
今後、悪い細胞になっていくのか、
転移なども考えられるのか、
あまりに未知なことが多いそうです。
定年退職
そして今年の3月31日をもって、
彼女は大学を定年退職されました。
研究室に山と積まれた本をどうやって処理するのか
ブックオフの出張査定に来てほしいけど、出張査定は大学構内には入ってくれない、個人で処分できる量ではなく、ホトホト困った…
と、さも面白おかしく、彼女は語ってくれたけど。
大学で教えることも、彼女の生きがいだったはず。
それさえ失って。
水泳レースも失って。
これから彼女は、何を糧にして、生きて行くんだろう…
不死鳥
彼女は大学院の学生になるべく試験を受け、
そして合格しました。
なぜ、今から学生に戻るのか。
彼女が受けた、様々な手術。
それは普通の人なら一生に一度、受けるか受けないかの大手術。
それを彼女は繰り返し、何度も何度も受けて。
苦しいリハビリ期間を乗り越え、
やがて普通の生活に復帰して。
スポーツさえ楽しんで。
僕みたいな影響力のない人間が書くブログなので、
作り話じゃないか、と疑いたくなるような、
奇跡のような日々を送ってこられ。
そして彼女自身、誰よりも、
そのことを自覚してらっしゃるのでした。
学生に戻る理由
病院に行くと「重症」と思われるのですが、
普通に動いていて。
普通に生活できていることに、毎日感謝しています。
「軽症」だとされていても、
寝たきりのようになっている患者さんが、
たくさんいらっしゃいます。
その患者さんたちの声を、
論文という形で、
医療の世界に伝えたくて。
大学院で研究することにしました。
彼女のような方が、僕たち夫婦のことを、
「友だち」だと思ってくれることが、
とても誇らしく思います。
どうか彼女の人生が、今後、
素晴らしいものになることを、
願ってやみません。
追伸
様々な手術を受けた彼女は、
国内、国外、様々な病院で、
何人ものドクターやナースと接してきて。
病院内部を、その聡明な目で観察し、
時にはドクターと意見を戦わせてきて。
ある時、彼女に対して、
日本国内の、
某国立大学附属病院の、
病院長が…
(繰り返します、「病院長」、ですよ)
土下座をする
っていう事件もあったりするわけですけど…。
それはまた、別の話。