こちらの記事でもご紹介した、10/27公開の新作映画「ブレードランナー2049」に至る3つのショートムービー。
ブレードランナー2049の予告を見ていると、
「当時の記録は大停電で損なわれましたが」
と登場人物が口にしています。
このショートムービーを見ておかないと、
「大停電」ってなんのこと?
ってなってしまいます。
いつ、なぜ大停電が起きたのか。
それを描いたのがこの「ブラックアウト2022」です。
3本のショートムービー
35年前に公開された映画「ブレードランナー」の舞台が2019年、その30年後を描いた作品が10/27公開の「ブレードランナー2049」です。
その30年の間に、人間とレプリカントを取り巻く環境には、大きな変化があったようです。
それが10分程度の3本のショートムービーにまとめられてYouTubeにアップされています。
第1話「ブレードランナー ブラックアウト2022」上映時間15:44
第2話「2036:ネクサス ドーン(ネクサスの夜明け)」上映時間 8:00
第3話「2048:ノーウェア トゥ ラン(逃亡不可)」 上映時間7:17
順を追って見ていきたいと思います。
2本目「2036:ネクサス・ドーン」解説はこちら。
3本目「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」解説はこちら。
ブレードランナー ブラックアウト2022
その3本の中でも、最も重要なエピソードを描いているのがこの「ブラックアウト2022」です。
「ブレードランナー」のDNAを汲みつつ、新作映画への橋渡しをするための新しい世界は、アニメでしか表現できないほど、複雑で、壮大で、緻密な世界観。
注意深く見ると…
前作「ブレードランナー」の時代設定は2019年なので、この「ブラックアウト」はそのわずか3年後が舞台です。
そのため、前作にも登場したブレードランナーで、杖をつきながら歩き、折り紙が上手なガフが、アニメになっても登場しています。
ガフが最後に呟くセリフ、
「あの時、逃すんじゃなかったな。デッカードを」
このセリフは何を意味しているのでしょうか。
デッカードはレイチェルとともに逃げました。レイチェルはレプリカントで、粛清の対象であり、ラストシーンでガフが彼女を見張っていたことを示す折り紙が残っていました。
しかしガフはレイチェルを見逃し、デッカードは彼女とともに逃亡しました。
ガフはなぜ、2人を見逃したのか。
そしてガフが作った最後の折り紙は「ユニコーン」でした。ユニコーンは、デッカードが見た夢に出てきた生き物。
ガフはデッカードの夢を知っていたのか。
とすれば、デッカードはやはり、レプリカントなのか。
「あの時、逃すんじゃなかったな。デッカードを…」
ただ、腕のいいブレードランナーが惚れてしまったレプリカントと逃げるのを見逃した、という意味なのか。
それとも、ブレードランナーであるレプリカント、という特別の存在であったデッカードなら、今回の事件も解決できるのに、という意味なのか…。
ちなみに、ガフと話している男も、デッカードの上司・ブライアントです。
また数が合わない?!
前作「ブレードランナー」を巡る有名な話として、脱走したレプリカントと生き残っているレプリカントの数が合わない、という初歩的なミスがありました。
当初、ブライアントはデッカードに「レプリが6匹、脱走し、1匹が死んだ」と言っているので、残りは5体のはずなのに、ロイ、リオン、ソーラ、プリス、と4体しか残っていないという矛盾がありました。これは単純ミスだったようで、のちのバージョンで訂正されています。
まさか、それを意図して、ではないでしょうが…。
この「ブラックアウト」でもブライアントのセリフでは、
「これが惑星カランサから脱走した5人のネクサス8のデータだ」
と、5人とはっきり言っています。
それに対し、後半でイギーは
「オレたちの同士が同時に6箇所で花火をあげる(データバンクを破壊する)」と言っています。
脱走したレプリカントは5人。
破壊する箇所は6箇所。
イギーが助けたトリクシーはイギーと行動をともにしています。
では、あと1人は誰なのか??
もしかしたら…??!!
この部分、ブレードランナーの初期のミスに擬態させた、「2049」本編への最大の謎の1つだと思います!!
「ノーウェア トゥ ラン」及び映画本編にも登場する『サッパー』
一瞬、脱走したレプリカントを表示している画面に、第3話「ノーウェア トゥ ラン」と、映画本編にも出てくる『サッパー』なるレプリカントが映ります。
(「2048:ノーウェア トゥ ラン」より)
演じるのはデイヴ・バチスタと言って、元プロレスラー。ドゥエイン・ジョンソンと似た経歴ですね。「007 スペクター」で、ボンドをローマで執拗に追い詰める悪役をやった人物です。
右眼を摘出したイギーも、本編には出てくるのでしょうか?
予告に一瞬だけ映る、謎の黒人。
真に生きるために反乱を起こさなければならなかったレプリカントの、悲しくも壮絶な反乱の記録。
それが「ブラックアウト2022」です。
STORY
ネクサス8型と人間至上主義
前作「ブレードランナー」では、わずか4年の寿命しかなかった、人間そっくりの人造人間(レプリカント)「ネクサス6型」は、2021年をもって全ての個体が死に絶えた。
そして新たに製造された「ネクサス8型」は人間と同じ寿命を持つ体に進化。
そして各地で人間至上主義運動が勃発し、登録データからレプリカントであると認められた者たちは、次々と殺されていった…
トリクシー
道端で倒れている少女を、3人のチンピラが取り囲んでいる。少女はレプリカントのようだ。
少女の名は「トリクシー」。別のレプリカントがウェアラブル型コンピュータで確認している。
その黒人レプリカントはトリクシーを囲んでいた3人のチンピラを一瞬で排除し、トリクシーを救出する。
トラック強奪
高速道路を走る、一台の巨大トラック。
そいつに空から接近するスピナー(空飛ぶ乗用車)。
スピナーからトリクシーがトラックに飛び乗り、運転手を外に放り出し、トラックを奪う。
ブレードランナー本部
前作「ブレードランナー」にも登場した、デッカードの上司・ブライアントと、足の悪いブレードランナー・ガフが再登場している。
ネクサス8型の5人が惑星カランサから脱走。ガフは、レプリカントの中でも「軍人」のカテゴリーに属す5人を探すのは、軍の仕事だろう、と意見する。
ブライアントは軍にレプリカントを相手にする部署が存在しない、という。
舌打ちしながらガフがつぶやく。
「あの時、逃すんじゃなかったな。デッカードを…」
トリクシーとレン
黒人レプリカント・イギーに助けられたトリクシーは、レンという人間と暮らしている。レンは裏切ったりしない、純粋な心を持つレプリカントという存在を愛していた。
レンは軍隊で核ミサイルを扱う部署で働いている。レプリカントの反乱に加担するつもりなのだ。
「あたしたち、人間になれるの?」
トラックを運転するのはイギー。トリクシーは助手席にいる。イギーの口から、5人のレプリカントが脱走した目的が告げられる。
イギー:偽のコードで核ミサイルを発射し、高い高度でレンがそれを爆破させる。その電磁パルスで電子機器が破壊される。同時にレプリカントが世界の6箇所で保管されている電子データのバックアップを破壊する。あらゆる登録データがこの世から消え去る。
トリクシー:あたしたち、人間になれるの?
イギー:このいまいましい右目以外は。
惑星カランサ
砂漠の惑星カランサ、戦場で兵士として戦うイギー。
爆発、爆発、銃撃、銃撃…
地獄絵図の中、ただ1人生き抜いたイギー。よろめきながら、死んだ敵の兵士のマスクを取り、兵士の右目の下を確認すると、製造番号が記されている。
イギーの決意
レプリカント同士を戦わせる戦争。ネクサス8型は6型よりも長い寿命を得たが、本当に生きてなどいない。真の生を得るには、自分たちがレプリカントだというデータを破壊しなければならない。
ミサイル発射
軍では突然、核ミサイルが発射された。しかもコントロールが効かない。ロサンジェルス上空に向かっているミサイル。
トリクシーの最期
イギーとトリクシーのトラックは目的の場所に突入する。護衛兵から激しい銃撃を受ける。
イギーは銃で反撃、トリクシーは上空を舞うように跳び、兵士たちに肉弾戦で対抗する。
イギーは再度、運転席に戻り、トラックをさらなる深部へと進める。
トリクシーの戦い方は、デッカードと戦ったプリスにそっくりだ。激しい銃撃の中、くるくると背後に回転し、両足を使って敵を倒している。
弾丸をかわし背後にジャンプしたトリクシーの目に…。
白い鳩が見える。
白い鳩はレプリカントにとって死のメタファーなのか。
ロイが死んだ時も、白い鳩が飛んでいた。
次の瞬間、トリクシーは全身に弾丸を浴びる。
運転席からそれを見るイギー。悔恨、悲しみ、憎悪の念が彼を襲う。
「もう手遅れだよ」
核ミサイルの操作盤を操るレンの頭に銃が突きつけられる。彼のやったことがバレたのだ。
レンは両手を上げながら、つぶやく。
レン:もう手遅れだよ…
大停電
核ミサイルはロサンゼルスのはるか上空で爆発する。
それにより発生した電磁パルスで、スピナーをはじめ、すべての飛行物体が落下し、すべての電気が消え、地上は大混乱に陥る。
イギーは最終目的の場所にトラックを到着させた。荷台から大量の重油が路上に流れ出ている。
そして、トラックは大爆発を起こす。
世界の6箇所で同じことが起こり、すべての登録データは消失した。
激しい炎の中を、イギーは歩いていた。
唯一、彼がレプリカントであることを示す右目を摘出し、眼帯で覆った姿で。