去年の9月16日、心臓手術を終えて3日たった僕の病室にお見舞いに来てくれたF島さんが持ってきてくれたのが、出版されたばかりの「陸王」でした。
ありがとう!!F島さん。もう3回くらい読みました。
僕はその日のうちに読んでしまったことを覚えています。
池井戸作品に多い、企業と銀行の関係や買収などの物語の中に、ランニングのノウハウやミッドフット、フォアフットなどランナーとして興味ある切り口も多く、あっという間に読んでしまいました!!
初回2時間で放送された昨日の第1話を見て感じたことをレビューしていきたいと思います。
貫禄の役所広司
役所広司が主役って、なんてすごいキャスティングだろう、と真っ先に思いましたが、やはり流石の安定感。
滑舌もものすごくハッキリして聞き取りやすく、芝居も濃すぎず薄すぎず。
改めてすごい役者だなあ、と思いました。
ただ、スーツを着て、オールバックにして、銀行で融資を頼む場面は、ちょっとカッコ良すぎというか、零細企業の社長というより、大手の部長というオーラがあったかなあ。それほど堂々たる存在感でした。
役所広司が主役でいるだけで、半分はもうこのドラマは面白いって決まったようなもんです。
憎たらしかった馬場徹
第1話で印象に残ったのが、悪役の銀行員・大橋役の馬場徹。取引先の前で部下を罵り、逆に役所広司から喝破されるさまは、第1話の一番の見所というか、スッキリ!!とするところでした。
大橋が憎たらしければ憎たらしいだけ、そのカタルシスのスッキリ度は大きいのですが、そういう意味では本当に憎たらしかったです。
意外にイイ!!阿川佐和子
阿川佐和子ってゼッタイ芝居なんて経験ないやん!!と思っていましたが、自然に溶け込んでらっしゃってビックリでした。というか、うまいなあ!!って思いました。
阿川佐和子の演じるあけみさんという役は、それほど出番はないはずなんですが、女っ気のない話なんで、もしかしたら出番は増やされているのかもしれません。
マジで痛そうだった肉離れのシーン
マラソン大会の場面で、ゴール手前で肉離れになるシーン。「ビシャッ!!」っていう、なんとも言えない、湿ったような、靭帯がちぎれる音とともに選手が倒れるシーンは印象的でした!!本当に痛そうな音と、倒れっぷりでした。
気になった点
第1話は、あまりに「零細企業VS銀行」のパターンを前面に出していたなぁ、という印象でした。
確かに、悪い銀行員・大橋が宮沢社長に喝破されるシーンはスッキリするんですが、「『下町ロケット』でも見たなぁ〜」感が否めないシーンでもありました。
あの場面は明らかにテレビ用に作られたシーンです。原作にはありません。「半沢直樹」や「下町ロケット」で、イヤミな銀行員がやっつけられるシーンが視聴者に好評なので、見せ場として加えられたと思います。
テレビドラマとしてのあのシーンは、やはり見応えがあり、良いシーンだと思いました。
ただあのパターンを多用するのは危険かな、と思います。
補足的説明
ビブラムファイブフィンガーズ
「かかとの分厚い靴がかかと着地を生む」「ミッドフット着地はホモ・サピエンスの走り」「ソールが薄い靴で走れば自然にミッドフットになる」
劇中に、そんな説明が出てきましたが、これらの考え方はおそらく以下の本にインスパイアされた発想であると思います。
劇中、宮沢社長がスニーカーを買いに行く場面で、五本指のシューズを目にして、そこから足袋をランニングシューズにする、という発想を得ますが、あの五本指のシューズは実際に存在する「ビブラムファイブフィンガーズ」という履き物です。「Vibram Five Fingers」、略してVFFと呼ぶ時もあります。
このVFFを世界で初めて紹介したのもこの「BORN TO RUN」でした。
裸足の方がシューズを履いた時より怪我をしにくいことに気づいたランナーが、「砂利や割れたガラスから」足の裏を保護するために選んだのがこの履き物。
これはもともと、ヨットレース用のデッキシューズとして開発された履き物で、ランニングシューズではありません。
滑りやすい甲板でのグリップ力を強めつつ、素足の感覚を保てる履物。指が五本、独立して動くので、とっさの際に「つかみ効果」も有効な履き物です。
無名な裸足ランナーがこの履物で走っていることを紹介したこの本が世界的に売れ、VFFはランニングシューズとしてにわかに脚光をあびることになりました。
「走ることが生きること」とは?
劇中、光石研演じるスポーツ店のインストラクターが説明していた、「裸足で走っていたホモ・サピエンスが我々の祖先となった」、という部分ですが、「ヒトは地上で最も長い時間走ることができる動物である」という説明を加えていた方がわかりやすいと思います。
人間より早く走る動物はたくさんいますが、長い時間、走ることができません。
人間は汗をかけるので体温を冷やすことができ、筋肉や腱も長距離走に適して進化しました。
弓矢も槍も発明していない時代、ヒトは3〜4人が1チームを組み、狙いを定めた草食動物を延々と追いかけて走り続け、その動物が群れに逃げ込んでも追い出し、休ませず、走り続けました。
すると草食動物は、2時間〜5時間、走り続けると体温が上昇しすぎて走れなくなり、死んでしまいます。これを持久狩猟と言います。
この持久狩猟こそ、人類が最も古くから行ってきた狩猟方なのではないか、という説に基づいた考え方です。
なんとこの番組、来週はお休み!!たぶん選挙特番があるからでしょう。
第2話の放送は10/29です、今から楽しみですね。