今回のdele(ディーリー)は、掟破りといいますか…。
テレビ番組としてのミステリとしては、ありえないような着地の仕方をして…。
本で言えば最悪の読後感を残す作品となりました。
逆に言えば、強く印象に残る物語でした。
STORY
死刑囚は無実なのか
真柴佑太郎が、ある依頼人の死亡を確認、坂上圭司が彼から依頼されたファイルを削除しようとしたところ…。
偶然、その場に居合わせた圭司の姉で弁護士の舞は、依頼人の名前に聞き覚えが。
8年前に発生した夏祭りでの毒物混入事件。その犯人とされ、死刑が確定している犯人・笹本の息子の名前、隆でした。
死刑囚の息子が自殺し、死後に削除を依頼していたファイル。舞は弁護士としての職務上、ファイルの閲覧を主張。圭司がファイルを開けると…。
ファイルは動画ファイルで。
犯行があった夏祭り、青酸カリが混入されたウォータークーラーに、謎の粉末を混入する人物の映像が映っていました。
その人物は死刑囚・笹本とは別人。
笹本は8年間、ずっと無実を主張しています。
これは死刑囚の無実を示す証拠なのでは?!
洋食屋
真柴佑太郎がすぐに現地へ飛び、聞き込みを開始。
最初に入った洋食店で、動画に映った人物の顔を見せると…。
養殖店のオーナー・上野はその人物を、市議会議員の宮川だと佑太郎に説明。
佑太郎が宮川に会いにいくと、宮川は留守。
食料品店
次に入った食料品店の店主は、温厚そうな人物でしたが、認知症の老婆が店の商品を勝手に開けようとすると、キレて老婆を大声で怒鳴りつけます。
見かねた佑太郎が老婆を家まで送り届けると…。
その家は、最初の洋食屋。
老婆は佑太郎を、自分の孫だと勘違いしていたのですが、その孫は毒物混入事件で死亡していたのでした。
市議会議員
洋食屋のオーナーの上野は、市議会議員・宮川についてきになる話を始めます。
宮川が、地元の建設業社長から脅されている現場を目撃。毒物事件でその社長は死んだ…。
一方、動画を解析していた圭司は宮川に接触。ストレートに、あなたが粉末をウォータークーラーに入れている動画がある、と迫りますが…。
宮川はそれを、ジュースの粉末だと釈明。
議員の娘
圭司が帰ろうとすると、宮川の娘が圭司に接触。
宮川の娘は、8年前、自分の父親が、洋食店オーナーの上野の妻との不倫現場を目撃。
上野の娘はその事件で死亡している…。
もしかしたら犯人は、上野に嫉妬した父?
それとも、娘が邪魔になった母親?
宮川の娘は、ずっと悩んでいたのでした。
洋食屋の妻
圭司はハッカーとしての腕を駆使し、上野のスマホに侵入。
上野は、妻と宮川の不倫に気づいていました。
死刑囚の息子
佑太郎が自殺した笹本死刑囚の息子・隆について調べていくと…。
彼が唯一、心を開いていた孤児院時代の同級生に出会い。
隆が彼女に送っていたメッセージを入手します。
そこには、犯罪者の肉親として、近隣住民から受け続ける不当な差別の実態が映されていて。
さらに、隆自身が何かの粉末の薬を手にしている動画もあり。
真犯人は隆?自分の人生を破壊した父を殺そうとした?あるいは犯罪者の息子として差別する住民たちを憎んでの犯行?
死刑囚
舞は拘置所の笹本と面会。息子が自殺したことを伝えます。
しかし、息子が薬品入りの瓶を持っていた、真犯人は息子では?と問い詰める舞に対し笹本は、
息子が持っていた薬品は医者から処方されていた薬。犯人はあの街にいる!!
と舞に叫びます。
溢れ出る容疑者たち
隆が友人に送っていた数多くの動画を見ると…。
宮川の娘が、売人からドラッグを買っている場面が。売人は例の毒物で死んでいた…。
さらに、認知症の老婆を怒鳴りつけたあの食料品店の店主。
彼は佑太郎に、事件現場には行っていないと証言していたのに、当日の動画には映っていて。
彼が自分の親にDVを働いている動画もありました。
そして彼の親も、毒物で死んでいる。
・宮川議員→土木業社長に脅迫を受けていた・不倫中の女性の夫への嫉妬?
・宮川の娘→ドラッグに手を染めていて、売人から脅されていた?
・上野→妻の不倫に気づき、宮川を殺そうとした?
・上野の妻→宮川との関係の清算?夫の殺害?
・食料品店店主→浪費する親が邪魔になった?
・笹本の息子・隆→犯罪者の息子として差別し続けた世間への恨み?父親の殺害?
調べるほどに容疑者が増え続けますが…。
死刑執行
笹本の死刑が執行。
真相は誰にもわからないまま、終わってしまいます。
社会は人に一つの人格を望む。だから人は表向きの自分を演じ、はみ出る部分を隠したがる。隠してきた部分を消せば一貫した人生になる。暴けばいろんなものが壊れる。
だから俺はいつも中を見ずに消してきた。責任が取れないからだ。
この街も暴かれることを望んでいない。あの削除依頼を消せば、今まで通り笹本が犯人でこの件は終わる。
俺だって責任は取れない。でも消すことだって同じくらい恐ろしいことなんじゃないの?
どこにでもありそうな、一見、平和に見える住宅街に、2人の会話が虚しく消えて行きました…。
掟破りの展開
死刑を目前に控えた死刑囚に、無罪の可能性が出てきた…。
通常の推理ものなら、探偵が駆けずり回って真実を見つけ、
死刑執行10秒前に
待った!!
と叫ぶパターンですが。
そんなやり尽くされたパターンではありませんでした。
新たな容疑者が溢れ出てきて、残り時間が10分を切った状況で…。
あ。これは、真犯人が誰だかは判明しないパターンかも
と危惧し、その通りになってしまいました。
実に後味の悪いパターンですが…。
同時に、そこはかとない後味が残る作品。
その後味は苦くて、できれば味わいたくない種類のものですが
あまりに御都合主義な、ハッピーエンドの物語に慣れてしまった身としては、
逆に新鮮でした。
タッカー・コウのミステリに、同じような結末の物語があったかと思います。かなり昔に読んで、主人公の名前さえ、もう覚えていない小説ですが、
この結末だけはよく覚えていて。
それほど、強く印象に残った物語だったのだと思います。
本作もきっと、長く僕の印象に残ることでしょう。
9/14までTVerで視聴可能です!!