我が家から徒歩5分の距離にあったデパート、八尾西武さんが2月末日をもって閉店した。
前職では商品を卸していたこともあり、感慨はひとしおだ。
担当してくれていた女性は、とても良い方で、得意先として考えた場合、このデパートは僕にとっては良い思い出しかない。
しかし客側の目線に立つ時に、本当にここにデパートが必要なのか…と言う思いはずっとあった。
そもそも、デパートとは、商品を定価で扱う場所だ。そして、他の販売チャンネルとの違いは、豊富な商品知識を有した販売員による対面販売。
客は、自らが欲しい商品に対して、販売員の専門知識からアドバイスをもらい、安心して買い物ができる、と言うのが最大のアドバンテージである販売形態だ。
もちろん、アフターサービスも、デパートの暖簾の下、責任を持って行うので、購入者は安心して長く使える。
ところが、最近の不況の中で、地方のデパートは人員削減が進み、どんどん販売員が少なくなって来ている。
僕が担当していた、山陰地方にある小さなデパートなんか、10時のオープン直後は、5階の全フロアを見回して、販売員が1名しかいない、と言う事態が常態化していた。
もちろん、10時を回ってしばらくすると、何名か他の販売員さんが出勤してくるのだが…
そんな販売員さんに、「高度な専門知識」など求めても仕方がない。あるわけがない。
デパートの存在意義である、「販売員の専門知識」が存在しないデパートに、存在する意味はあるのか…
八尾西武さんも似たような状態だった。販売員さんは少なかった。そこで働いてらっしゃる方は、みな、一生懸命働いていらっしゃるが、いかんせん、デパートが顧客に与えるべき満足を与えられるほどには、人手がなかった。
デパートが顧客に演出すべき「非日常性」もそこにはなかった。目玉になるようなビッグブランドはない。塗装は剥げ、売場の片隅、顧客の目が届く場所に什器が放置されていた。
デパートとしての大きな器を運営できる人手が、もう何年も足りていなかったと思われる。
近鉄八尾駅から直接入店できる歩道橋がついているが、その近鉄八尾駅から難波までは、途中で乗り換えを一度挟むものの、30分足らずで行くことができる。
難波に行けば、高島屋がある。心斎橋まで足を伸ばせば大丸もある。もちろん、それらのデパートも、この厳しい状況の中、かなりの人員削減をしているが、それでもまだ、デパートとしての体裁は保ててはいる。
ビッグブランドについては言うに及ばずだ。
そんな状況の中、八尾西武さんの閉店は、やむなしといったところだったのだろう。
地下一階、大好きだったインドカレーの店「ビンドゥ」さんも撤退していた。カレーうどんを毎日のように食べていた「川福」さんも、もうなかった。
▼川福さんで1日おきでカレーうどんを食べたこともあった(^_^;)
▼「八尾西武」の看板は下ろされ、「近鉄八尾駅前商業施設」なっている。
▼専門店の一部は営業を続けているが、今日も搬出を行なっている業者さんもあった。
▼閉鎖された売り場と、営業を続けている店舗。わが町で、こんな光景に出会うとは、思いもしなかった。とてつもなく寂寥感が胸に迫る。
▼現在営業中の店舗一覧。
八尾西武さん、今までありがとうございました。