妻:小学1年の頃やけどな。
夫:またかいな!!どんだけ濃密やねん、アンタの小1って?!
妻:八尾市の渋川町ってとこに住んでてん。
夫:オレが入院してた、八尾市立病院のそばやね。
妻:うん。渋川町の4丁目のぼろアパートに住んでてん。
夫:そうなんや。
妻:そのぼろアパートに住んでた子供たちの間で大流行してた遊びがあってん。
夫:お、なになに?「はないちもんめ」とか?
妻:ちゃう。
夫:「鬼ごっこ」とか?
妻:ちゃう。
夫:「ハンカチ落とし」とか?
妻:ちゃう。
夫:降参降参。何よ?
妻:「ねごにゃん」。
夫:…。え?
妻:「ねごにゃん」。
夫:聞いたことないわっ!!
妻:知らんの?
夫:知るかっ!!
妻:さすが田舎やなあ、奈良は…
夫:奈良のせいちゃうで!大人になってからも聞いたことないって!
妻:地面にチョークで線を引くねん。2m×4mくらいの長方形。
夫:ふんふん。
妻:さらに、中を区切るように線を引く。こんな感じや。
夫:ドッジボール?テニス?それっぽいコートやな。
妻:まあそんな感じやな。
夫:ウンウン、それで?
妻:それぞれの陣地に子供たちが立って、全員がおんなじ方向を向くやろ。
夫:ウンウン。
妻:ボールを持ってる子ぉが、陣地の外から向かい合わせに立って。
夫:ここまではほぼドッジボールと同じやな。
妻:次の瞬間や。
夫:うん?どうするの?
妻:『ねーご・にゃんっ!!』って全員で叫ぶねん!!
夫:ぜ、全員で?!
妻:そう!全員で!!
夫:斬新かもっ?!
妻:その唱和を合図に、ボール係は地面にボールを転がす!!
夫:転がすんや!投げるんじゃなくて?!
妻:そう!投げたらアウト!
夫:手ぇで、転がすねんな?
妻:手ぇや!もちろん!足はアウト!
夫:で?
妻:敵は、転がってきたボールに触れた時点でアウト!
夫:触れたらアウト?
妻:そう!
夫:転がってるボールに触れるって、足だけやんなあ…
妻:…。
夫:いくら子供でも、それは避けれるんじゃないかなあ…。
妻:…。
夫:触れたらアウト、っていうことは、守備側は永遠に守備だけやん?ドッジみたいに、ボールを奪取したら攻撃に移れるわけでもなく…。
妻:そ、そう…。
夫:…その遊び、おもろいか?
妻:じ、実は…
夫:実は?
妻:アタシ、小1やったから…。
夫:やったから?
妻:「ねごにゃん」のルール、よお分かって無かってん!!
夫:…ええっ?ルール分かってない遊びに参加してたん?
妻:そうやねん!ついに告白するわ!!この事実!!
夫:オレに告白されても…。
妻:どうせアタシはいちばんチビやったから、おってもおらへんでもどっちゃでもよかってん。
夫:そんな寂しいこと言うなよ…。
妻:だからルールなんか知ってようがみんなにとってはどうでもよかってん!
夫:そんなことないって!
妻:ちなみに、小2になって、4丁目から7丁目に引っ越してん。
夫:そうなんや。
妻:7丁目では、「ねごにゃん」はまったく流行ってなかった!!
夫:たぶん、日本中で、渋川町4丁目だけで行われてた球技やってんやろな…。