篠山マラソンの応援に行って感じたことは、その素朴さでした。
応援で参加しただけの印象では、かなりの山奥、田舎道を走る、という印象があります。
しかし、だからこそ逆に、エントリー代が5,800円という格安の値段で設定できるのだと思います。
僕は今回初めて応援で参加したので、全コースを走ったわけではありません。だから走ればどんな風景に出会うのかは、全くわかりません。
しかし、
「日本に来たからには、この景色を見ておかないと!」
と外国人旅行者に自慢できる風景に出会えるとは、正直なところ思えません。
先日参加した京都マラソンの、外国人参加者はなんと2,600人いたらしいです。
篠山マラソンを走っていた外国人ランナーは…
アフリカ系の男性が1名、これははっきりとわかりました。あと1名、アングロサクソン系の男性がいらっしゃったような気がします。
アジア系の方は、正直なところわかりませんでした。いらっしゃったのかもしれませんが、派手な台湾国旗をあしらった台湾ランナーのような、よく他の大会で見るランナーさんは皆無でした。
篠山マラソン外伝にも書きましたが、先導車は篠山市の備品と思しき軽トラックです。
つまり何が言いたいかというと…
それは、すべての虚飾を振り払った、真のマラソン大会であった、ということです。
大都会のど真ん中を、派手な交通規制を行なって走る大会ではありません。
山奥で、交通規制をかけても、大きな影響もないため、エントリーフィーは安く設定できる。
だから逆に、海外からわざわざ参加するほどの魅力はない。だから外国人の参加者は少ない。
そこに集まってくるのは…
本当に、走ることが好きな、ラン馬鹿たち。
制限時間5時間、これは練習を積まないと突破できる時間ではありません。
最近、どこかの有名雑誌記者が、練習なしで東京マラソンを完走したという、あまり面白くない記事を書かれていましたが、そんな生半可な態度で走破できる大会ではありません。
走ることが好きだ、それ以外のモチベーションだと、参加する気が起こらないのも当然です。
仮装率も低かったです。走ることへの真摯な態度が、このことからも伺えます。
でも、仮装して走ったランナーはふざけていたのか?
いいえ、思い出そう。制限時間は5時間なんだ。ふざけ半分で完走できる大会じゃないんだ。仮装で走った連中も、その姿で完走できる自信があったからそうしたんだ。
その証拠に、仮装してた連中に、
「カエルのやつ〜!!ガンバレーー!!」
「お猿さん〜〜!!ガンバレーー!!」
そう叫ぶ僕たち応援者に対して、仮装ランナーたちが
「ありがとう〜〜!!頑張るデェ〜!!」
と声援返しをしてくれた率は、完全に100%、仮装者は全員が声援に応えてくれました。
僕たちは、36km関門の60メートル手前にいました。
15時10分に関門が閉まります。
僕たちはカウントダウンがわりに、
「あの信号まで!あと2分!とにかくあそこを越えろ!!」
「あと1分!あの信号まで!!走れ!走れ!」
そう叫びました。その声を聞いて、走りを速めなかったランナーはいなかった。
そんなギリギリランナーは、けっこう限界に近かったはず。でもその声を聞いて、諦めようとしたランナーはいなかった。
みんなが自分にムチを入れ、最後のスピードアップをはかっていました。
でも、多くのランナーが、信号前でアウトになっていました。
あきらめずに、関門へと挑んだラン馬鹿たちを、僕は愛おしく思いました。
兵庫県の、イノシシが出るような山奥で、ひっそりと行われていたマラソン大会。
そこで見たのは、本当に走ることが好きなラン馬鹿たちでした。
関門をあきらめなかったランナーたちでした。
走ることが好きだ、素朴なランナーの思いが、そこにありました。