と有美ちゃんは言いました。
時は3月1日、名古屋ウィメンズマラソン9日前。
「僕たち夫婦は、今年は名古屋の応援に行けない」
と彼女に伝えた時です。
実は彼女とは、3月3日に行われる篠山ABCマラソンも一緒に応援に行こう、と誘い合わせていました。でも彼女はそのとき風邪気味で。
彼女は去年、初めて応援に行った名古屋ウィメンズマラソンの魅力に取り憑かれていて、何としてでも名古屋の応援は外せない!!と強い決意をしていたのでした。
▼去年の名古屋ウィメンズの応援風景。左:れいちゃん 中:有美ちゃん 右:お方さま
だから3/3の篠山は、風邪の悪化を防ぐため、彼女がキャンセル。
逆に、僕は名古屋の応援をキャンセルする旨、伝えると、彼女が冒頭のごとく驚いたのでした。
そんなたいそうな(⌒-⌒; )
僕としても心残り
われわれ夫婦としても、5年連続で応援に行っている名古屋ウィメンズは、日本各地から集まってくるラン友たちと会える絶好の機会、なんとか行きたかったのですが…。
今年はどうしても都合がつかず断念。
上の写真を見ても分かる通り、有美ちゃん&れいちゃんのコンビは、応援する際に着ぐるみは着ないタイプ。
意志を継ぐ有美ちゃん
でも、われわれ夫婦が行かないことを知った有美ちゃんは、逆に使命感を強く持ったようで…。
へんなおじさん、とは…。
もちろんこのかた。
▼名古屋ウィメンズ2017時、僕が撮った写真です。
2017年の名古屋ウィメンズでわれわれのエイドに寄ってくださり、あまりに面白い仮装のためブログにも登場いただいた女性ランナー。
その彼女と、去年、2018年に、同じ名古屋ウィメンズで再会を果たしたのでした!!
▼翌2018年。彼女と再会した時の写真。(撮影:有美ちゃん)
再会を記したブログがこれ。
この、2019年でピースサインをしている写真を撮ってくれたのが、他ならぬ有美ちゃん。
いつも大きなカメラをぶら下げて、いい写真を撮ってくれるのです。
そしてこの写真を撮っているので、有美ちゃんは僕がへんなおじさんとの再会を心待ちにしていることを察し。
自分がへんなおじさんと会わなければ!
と心に誓ってくれたようでした。
仮装の決意
そのためには、へんなおじさんに、自分たちがガチャピンとムックの代理である、と知らしめなくてはなりません。
自分たちも仮装をする必要がある!!
ついに、彼女たちは決意しました。
これまで、仮装で応援したことはなかったが…。
着ぐるみを着て、名古屋の沿道に立とう!!
と。
ちょうど、れいちゃんのご友人が、パジャマがわりに使っているクッキーモンスターとエルモの着ぐるみを持っているらっしゃったので…。
それを借りることで、急なこの状況の変化に対応したのでした!!
こうして、僕はこの事実をへんなおじさん仮装のHさんにメッセージで伝え。
Hさんからも返事をいただき。
名古屋ウィメンズマラソン2019当日
こうして当日を迎えるのでした。
僕たちはもちろん、行けませんでしたが…。
昨日の名古屋は、ずっと雨。
着ぐるみを着ての応援は、なかなか辛いものがあったのでは、とお察しいたします。
有美ちゃん&れいちゃん
それでも有美ちゃん&れいちゃんの、クッキーモンスター&エルモのコンビは、
ずぶ濡れになりながら、慣れない着ぐるみを着て、ランナーさんたちを応援し続けました。
れいちゃんがスマホでアップデートを確認、「もう少しで〇〇さんが来る!」と有美ちゃんに伝え、
有美ちゃんが一眼レフカメラでそれを撮る、という連携作戦でした。
無事、へんなおじさん仮装のHさんとの再会も果たし。
それだけではなく、去年、とっさに隣にいる有美ちゃんに「あの黄色い人、撮って!」とお願いした恭ちゃん。
▼名古屋ウィメンズ2018の恭ちゃん。(撮影:有美ちゃん)
有美ちゃんは自分で撮ったこの写真のことを覚えていて、今年も彼女が来るのを待っていたのでした。
▼名古屋ウィメンズ2019の恭ちゃん。(撮影:有美ちゃん)
▼さらに、スーパーガールのひさねえのことも覚えていて、必死に声をかけて止まってもらったそうです。
▼ドロンジョ仮装の彼女は神戸のランナーなので、有美ちゃんも知ってるのですが、往路で撮ったこの写真に対し、
▼復路のこの写真は満足できてないようで。
有美ちゃんのカメラ
彼女はいつも、大事そうにカメラを持ってきます。
彼女にとってはまさに宝物のカメラ。
それが濡れて、故障してしまうリスクもあるのに、彼女はシャッターを押し続けました。
心臓の不安
彼女は、実は僕と同じく、心臓に少し不安を持っています。「肥大型心筋症」という病気です。
ただちに命の危険があるものではありませんが、激しい運動などは避けなければなりません。
だからマラソンなどはできません。
ゆっくりなら走れるけれど、心臓病ランナーのゆっくりって、普通のランナーの想像を絶するゆっくり具合。
居場所がない
そうなってしまった自分には、もう行くところがない。
そう、「これは心臓病ランナーあるある」。
正常な心臓をお持ちのランナーさんにはなかなかわかってもらえないことですが、今の僕にはよくわかります。
遺伝
彼女のお父さんは、数年前、僕と同じカテーテルアブレーション手術を受けられました。
有美ちゃんの家系は明らかに、遺伝的に心臓が強くないのです。
5年前、彼女の弟さんは、まったく何の前触れもなく、天国に旅立ちました。
前日までは普通に、何の問題もなく生活していたにも関わらず。
遺影がない
突然の別れに打ちひしがれながら…。
大人になってからあまり写真を撮らなくなっていた有美ちゃんの家には、弟さんの写真がなく。
遺影は、仕方がないので、履歴書の写真を使ったのでした。
この出来事で、有美ちゃんは写真の大切さを再認識して。
カメラを手にするようになりました。
カメラがくれた居場所
家系的に弱い心臓。弟の突然死。
だから彼女も、あまり無理はできない。
大阪マラソン1回、神戸マラソンは3回走った彼女。
福知山マラソン、関門アウトで完走が叶わなかったあと、肥大型心筋症が発覚。
ゴールができないまま、彼女のマラソンの時計は止まってしまい…。
それ以来、ランニングにどう向き合っていいのか分からなくなっていました。
もう、走りに行く場所はない。
ランニングイベントにも、マラソン大会にも、私の居場所はない。
そう思っていた時…。
有美ちゃんは自分がマラソン大会に行ってもいいんだ、と思えるようになりました。
だから昨日も、激しく降りしきる雨の中、
相棒のれいちゃんと共に、有美ちゃんはシャッターを押していました。
慣れない着ぐるみを着て、雨からカメラを守りながらも
雨粒さえ写し出すほど綺麗な写真をとってくれました。
そこはきっと、やっと見つけた彼女の居場所。
宝物のカメラだけど、濡れないように注意しながら、
友の姿をファインダーに収め続けたのでした。
こうして、走れなくなってもマラソン大会に関われる嬉しさを、写真を撮ることで最大限に表現しているのでした。
自分はもう走れない、その道を行くあなたへ
写真の中に隠しきれないほどのランナーへの愛は、そのまま彼女のランニングへの愛情。
自分はもう走れない道を走っているあなたたちへ、果たせなかった夢を託して。
自分の代わりに走ってくれているあなたたちへの感謝と愛のこもった写真です。
追伸:
僕と彼女は「心臓病ランニングクラブ」でも作ろう、と示し合わせています(笑)
週に1回。キロ10分で5キロ以上走ってはいけない、そんなクラブです。
だから、夢の全てを諦めているわけではありません。
いつかどこかの道の上で、あなたたちと会うかもしれないから。
その時は遠慮なく、追い抜いて行ってくださいね。
僕たちは後から、ゆっくりと走っていくので。