ここ数ヶ月、仕事がメチャクチャ忙しかったお方さまは、月に30kmも走れていない状態がもう半年も続いていました。
それでも、なんとなく、本人からは自信めいたオーラを感じていました。
お方さまのフルマラソンは3度目です。初めてのさが桜マラソンでは、20km地点でトイレに入って足が攣り、その後、ずっと攣った状態で6時間20分で走破。
2度目、今年の京都マラソン、手術明けの僕のペーサーとして走ってくれた際は、僕自身が30km手前でリタイアしましたが、お方さまは足も攣らず、完全にペース内で走れていました。僕のリタイアに付き合ってお方さまもリタイアしましたが、そのまま走り続けていたら、制限時間6時間以内でゴールできたと思います。
この、2度目の経験で、お方さまはかなり自信をつけていたようで。
「ゆっくり走れば、フルマラソンくらいサクッと」
と考えていたみたいです。
スタート前
ものすごく完成度の高い、スーパーマンとバットマンが歩いてらっしゃったので、記念撮影をお願いすると、とても丁寧に応じてくれました。
スーパーマンとバットマンの師匠的な立ち位置になりました…(^_^;)
神戸からわざわざ応援に来てくれたアンディ。ご主人は東京単身赴任中、帰省してまで応援に付き合ってくださっています!!ありがとう!!
たくさんの友人が応援に来てくれてパワーをもらったスタート地点。
ざっくりした作戦
まず最初のハーフまでは、キロ7:30程度。
お方さまにとって、この速度は練習でも楽に出せる速度で、ちょっと遅いくらいです。
しかし練習不足であることをかんがみ、これより早いペースで走らないようにしよう、と思っていました。
そのあとの10kmはキロ8:30。
最後の10kmはキロ9:30。このくらいだと早歩き程度に感じるでしょう。
それでも6時間を切るタイムでのゴールになり、お方さまはPBを更新することになります。
距離 | 平均ペース | 所要時間 | |
ハーフ | 21.0975 | 0:07:30 | 2:38:14 |
クォーター | 10.54875 | 0:08:30 | 1:29:40 |
クォーター | 10.54875 | 0:09:30 | 1:40:13 |
フル | 42.195 | 5:48:07 |
スタート〜18km
キロ7:30の旅、初めは極めて順調でした。
途中、キロ9分とか10分とかかかっている箇所は、エイドの箇所です。
この淀川市民マラソン、パンフレットには給水箇所は8箇所、と書かれていましたが、実はすべて往復コースなので、その倍の16箇所にエイドがあったのでした。
ほぼ全てのエイドにバナナとみかんがありました。最初のうちは、次にありつけるかわからないので、バナナがあればたらふく食べていました。
やがて、このエイドストップがけっこうタイムを圧迫していることに気づき、不要なエイドは飛ばそう、と作戦を変更します。
15kmあたりを超えると、われわれがいた場所はもうほとんどのランナーが歩いていました。
足を見ても、ランナーの筋肉がついてない人ばかり。
「キロ7:30で走ってても、もう誰からも抜かれへん!!ごぼう抜きや!!」
とお方さまと喋りながら走っていました。
しかし、この幸福な時間は、あっという間に過ぎ去るのでした…
18kmすぎの悪夢
妻:ちょっとまって。
お方さまのストップがかかりました。
振り返ると…。
右の膝の外側あたりをさすっています…。
「さが桜」の悪夢が蘇りました…。
妻:大丈夫や!!まだ、佐賀のときみたいに攣ってない!!攣ったら痛いけど、まだ攣ってないから!!ゆっくり行けば大丈夫や!!
と、自分に言い聞かせるようにお方さまは叫んでいました…。
18km〜21.0975km
右足は、佐賀のときほど極端ではないにせよ、引きずった状態。8:30さえ出せなくなっていました。
ハーフに約3時間もかかっています。2時間40分の予定でした。
22〜24km ハーフ地点はお祭り騒ぎ
ハーフ地点がちょうどスタート地点に戻ることになります。スタートを見送ってくれたアンディご夫婦が、まだ僕らを待ってくれていました!!
さらに、有美さん、爺ぃ、いくちゃんと言う応援部隊が待っていてくれました!!有美さんはプロ級の腕で写真を撮ってくださり、爺ぃといくちゃんの名コンビは、来るとは聞いてなかったのでサプライズ的に嬉しい驚き!!
有美さんの撮ってくれた写真。
さらにその先にはお方さまの従姉妹(いとこ)の寿子が、両手にいっぱいの物資を持って待っていてくれました!!
さらに行くとQちゃんのハイタッチコーナーが!!
妻:Qちゃん!!あと半分ありますねん!!
夫:待っててね!!
と声をかけました。Qちゃんはこちらに振り返り、
Q:『おっと』さん、『よめはん』さん、頑張ってね!!
と声をかけてくれました。
25〜31km
お方さまの痛めた足は、どんどん悪化して来ました。
走っては歩き、走っては歩きの繰り返しになりつつありました。
30kmでこの表情…(^_^;)
32km〜ゴール
もはやこの区間になると、歩くことも困難になって来ました。
妻:もう、攣りなんかどうでもいい…。
足の攣りを越えた苦痛が、お方さまを襲っていたのでした。
妻:フルマラソン、ナメてた…。
ついにこんなことを言うようになって来ました。
京都で僕のペーサーとして、30kmまで順調に走れた記憶があったので、心のどこかで、もう自分はフルマラソンを制した、と言う思いがあったのかもしれません。
毎月30km程度しか走っていなくても、キロ7:30くらいでなら完走できる、と思っていた「おごり」があったと思われます。
この時点でお方さまが経験しているのは、もはや足の攣りではなく、「30kmの壁」でした。
かろうじて両足で立ってはいましたが、「歩く」と言うより「這う」と言った方が正しいような前進。
実はこれでも僕が手を引っ張ってこの速度なので、ほっといたらキロ14とか15とかのペースだったと思われます。
しかも、さらに事態は悪化して行きます。
妻:最悪や…。生理きた…。
と歩きながらつぶやきました(^_^;)もうムチャクチャ…
夫:もうやめるか?
と僕は聞きましたが、この問いには無言を貫いていました。
妻:トイレ行きたい…オシッコしたい…
夫:次のトイレに入ろう!!
妻:…イヤや…。しゃがんだら、足が攣る…
夫:ラスト1kmになったら走ろうな!!
妻:…。イヤや…。オシッコもれる…
夫:ホラ!!トイレ見えた、あそこ入り!!
妻:…。イヤじゃ。さっきも言うたやろボケ。
39km地点、もはや、理性ではコントロールできない、「イヤイヤ怪獣」に変身しておりました。
40km付近。背後はもはや、ゾンビ映画の様相…
そんな中、なんと41km地点でおかべさんが応援してくれていました!!
朝、応援に来てくれたおかべさん。今日は昼から一心寺で写経のイベントに行くと言っていたのに!!
「一心寺さんに行ったら写経イベント、いっぱいで入られへんかったから戻って来た!!」
おかべさん、ありがとう!!何度も淀川〜天王寺を往復してくれたんだね…
ワースト記録更新。
もうとっくに、さが桜マラソンの6時間20分の記録は超えていました。
しかし、ついに41km地点も越えました。
夕日をいっぱいに浴びながら、エイドのスタッフさんはこんなダメランナーたちにも一生懸命、声をかけてくれていました。
ゴールまであと100m。ロボットみたいにしか動けません。
そして、ボロボロになりながらも、ゴールゲートをくぐりました…。
こうして、長い、長い一日は終わりました…。
グロスタイムでは7時間を超えました。大阪マラソンでさえ、完走できないペースです(^_^;)
お方さまは、もう2度とフルマラソンはでない、と申しております。
それでも、またいつの日か引っ張り出して、この借りを返さないと、と思っています!!
さらば淀川。また会う日まで。