joyful joyfulさんによる写真ACからの写真
7/27の「すべらない話」における粗品の話がとても素晴らしく心に残りました。
粗品の番が来るまでは、松っちゃんが2回連続、下ネタの話をしたり、大輔も下ネタ。
正直なところ、場が荒れてるなあ〜って感じでした。
そんな中、神田松之丞の話芸はさすがだな、と思わせるものがありました。関西人なのであまり彼の芸を見る機会はないんですが、今回、さすがだな!!と思わせるものがありました。
その中で粗品の目が出て、彼が話した物語は…。
それまで、ややもすれば荒れていた場を、明らかに洗い流した、美しい話でした。
絶対音感
僕、2歳の時からピアノを習ってて。こう見えて絶対音感があるんです。
これ、僕、母親ゆずりで。母ちゃんも絶対音感があるんです。母子(おやこ)で(絶対音感が)あって。父ちゃんだけ音楽は全然できない。まあ普通ですよね。という3人家族やったんですけど。
うちけっこう、僕が子供の頃から父ちゃんが体調悪くて。まあ言うたら病気、いっぱいしてたんですよね。入院、退院、入院、退院を繰り返してて。
とある12月、MAXくらい体が弱ってると。父ちゃんの。すごい時期があったんです。自宅療法しましょうって言うことで、奥の寝室で父ちゃんがずっと寝てる、みたいな期間があったんですね。
その時に医者から一つだけ言われてたのが、
「水分を毎日、必ずこれだけの量を絶対、摂取してください。これを毎日、ノルマ(として)これは絶対、続けてください。水でも、お茶でも、ジュースでも、氷なめるでもいいから、なんでもいいです」
って言われて。
「それさえ守ったらもう大丈夫ですから」
けっこう膨大な量なんですね。父ちゃん、けっこう水飲んだりお茶飲んだりしてるんですけど。
まあ言うたら寝室で寝ながら、父ちゃんが自ら冷蔵庫の水を取りに行く、って言う行為がもうしんどすぎてできなかったんですよ。もう体力がなくて。そこまで。
かといって、
「ちょっと水ちょうだい」
って僕らに指示する、その大声を出すのすらしんどかったんです。もう大変な状態で。
でも僕と母ちゃんはリビングとか、部屋にスタンバイしてて。
ほんだら父ちゃんがずっとやってたのは、こう、(柏手を打つ)パンパン、と2発、拍手したら、僕か母ちゃんの手が空いてる方が駆けつけて、
どうしたん?
水、ちょうだい
うん、わかった
って言って冷蔵庫から水とって、それを出して
はい、どうぞ
って言うのをずっとやってたんですよ。
3日くらい経った時に父ちゃんが、
オレ、情けない
と。
正直、自分がこんな身体になって、家族を、手ぇ2回叩いて呼びつける、そんな「家来あつかい」するのは正直申し訳ない。オレ、このシステム嫌や、やめよう!!
って言い出したんですよ。
ああ、そうか
って言って僕がその足で、楽器屋に行ったんですね。で、ハンドベルを購入して帰ったんですよ。
結婚式の余興などで、“ド”、“レ”、“ミ”、“ファ”、“ソ”、“ラ”、“シ”、“ド”、ってやつなんですけど。それを買って帰って、
父ちゃん、これどうや?
と。
これ(手をパンパン)が家来感が出るんやったら、ハンドベルを鳴らしてくれ。で、
“ド”を鳴らしたら、水を持ってくるわ。
“レ”鳴らしたらお茶持ってくる
“ミ”鳴らしたらジュース持ってくる
みたいに、各音階に対応する飲み物を決めて。父ちゃんは音楽ができないですけど、ハンドベルにドレミファソラシドって書いてるんで、
じゃあそれ鳴らせばええねんな
僕ら絶対音感があるんで。僕も母ちゃんも。寝室から鳴ったベルの音が
今の、“ファ”やな
とかわかるんですよ。
でハンドベル生活が始まって、父ちゃんのとこから
“ド〜”
って聞こえてくるんですよ。
あ、“ド”や
って僕が水持って行って。
そうそう水、ありがとう。
で次、
“レ〜”
ってなって。そしたら母ちゃんが
“レ”やからお茶やお茶
ってお茶、運んで。
ありがとう、合ってるわ。
って、1回も間違えなかったんですこれ。もう絶対音感、けっこう完璧で。
このシステム、ええなあ
と。何よりこの、ハッピーじゃないですか。なんかこの、病気の暗いのがなくなって楽しい雰囲気になるから、このハンドベル、いいなあってなってたんですけど。
ある時。“ラ”と“シ”には飲み物、決めてなかったんですよ。そこまで種類がなかったんで。“ドレミファソ”までしか対応するものがなかったんですけど、
その“シ”が、
ガチャガチャガチャガチャッ!!
って鳴ったんですよ!!
その瞬間、僕、鳥肌が立って。
言うたら、何にも対応してない、非常事態やと。“シ”がめっちゃワーって鳴ってるから、父ちゃんの部屋にバッと行ったら、
父ちゃんが見てるテレビで金本がホームラン打ってて。
(喜んでハンドベルを)ワーッ!!
ってやってたんですよ。
父ちゃん、頼むわ!!マジでまぎらわしいこと、せんといてくれ
と。父ちゃんも
すまんすまん、ちょっと飲み物に対応してない(音階のベルで)応援してて。
みたいに言って。
ほんで“シ”って。縁起も悪いじゃないですか、正直。
もうやめてよ〜
みたいな感じで。でもハンドベルのおかげで楽しく、明るくなったんです。
である朝、寝てたんですけど。ハンドベルの音で起きたんですね僕。それが、
“ソ〜”
って鳴ったんです。でパッと起きて、
今、なんか鳴ったな?
続けざまに、
“ラ、ソ〜”
ってなるんですよ。で、10秒後ぐらいに
“ミ〜”
って鳴って、
“ソ、ラ、ソ、ミ”
ってなるんですよ。
“レレシ〜”
って鳴るんですよ。
「きよしこの夜」を、つたないけれど、父ちゃんが演奏してるんですよ。
めちゃくちゃヘタクソですよ、1人で演奏する楽器じゃないから「間」もメチャクチャなんですけど、音階は完全に「きよしこの夜」なんですよ。
パッとカレンダー見たらもうクリスマスやったんですね。
僕、それ聞いて感動して、父ちゃんの寝室まで走って言ったら、父ちゃんが上、見ながら泣いてるんですよ。泣きながら
すまんなあ。自分の責任でこんな身体になってしまったけど。こんな家族に迷惑かけてせっかくのクリスマスも、オレのせいで台無しやな。すまん
って言ったんですよ。僕、それ聞いて、めっちゃブワーって泣いて、
父ちゃん、そんなこと言わんといてくれ。オレ、そんなんみじんも思ってないし、家族やねんから負い目、感じんといてくれ
って僕もワーって泣いて。ほんなら父ちゃんも、
そうか…。
って言いながら泣いて。
ほんだら後ろから母ちゃんが、家じゅうの飲み物を持って走ってきたんですよ!!
いやそう言うことちゃうねん、「きよしこの夜」を演奏しててん。お茶、ジュース、お茶、みたいに注文してたんちゃうねん!!
これ、一生忘れないです。