走れダイエットランナー!

ポンコツ夫とポンコツ嫁はん。ランニングで健康維持しつつ映画やテレビ見ながら言いあらそうブログです。

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奈良マラソン2021外伝2:『76』

コールドスプレー

 

12/12(日)に開催された奈良マラソン2021に我々は応援に行ったわけですが、

 

www.rundietrunner.com

 

こちらの記事にも書いた通り、

 

34km地点ではコールドスプレーを使って、ランナーの痛めた筋肉のクールダウンに手を貸していました。

 

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スプレーのタイミング

 

このコールドスプレーですが、出すタイミングというものがあります。

 

フルマラソンを、サブ3やサブ4で走る、快速ランナーの足は鍛え抜かれていて、

 

42kmを走り切ってもコールドスプレーなど必要としません。

 

ところが…。

 

30km過ぎの地点で応援していると、

 

完走予想タイム4時間半を越えるランナーが通りかかると…。

 

そんなランナーは、すでに30km地点で、かなりの割合で、足を引きずっています。

 

・練習不足だったランナー

 

・そもそも5〜10kmランを楽しむタイプで、フルマラソンに参加したランナー

 

・快速タイプだけど、膝やふくらはぎなんかを痛めたランナー

 

こんな人たちが30km地点を通り過ぎるころは、足のどこかが強く痛んで、

 

歩いたり、足を引きずったりしています。

 

そんなランナーに対し、

 

「命のスプレーあるよ!!」

 

と声をかければ、

 

ワラワラ、ワラワラと、

 

足を痛めたランナーが集まってきます。

 

奈良マラソン2021でも、34km地点で我々はコールドスプレーを取り出し、

 

ゴール予想が4時間半を越えるランナーが現れたころ、

 

「コールドスプレーあるよ!!命のスプレーだよ!!」

 

ソンビ化しつつあるランナーたちにそう呼びかけました。

 

「ありがたや。ありがたや」

 

多くのランナーたちが我々の前にたち、

 

「ふくらはぎお願いします!!」

 

「フトモモの裏を冷やして!!」

 

「足首が痛くてぇ…」

 

皆が自分の痛めた場所を訴えてきます。

 

中には、

 

「脚、全部にスプレーして下さい!!」

 

という猛者もいます。

 

我々はランナーとのソーシャルディスタンスを保ちつつ、

 

希望の箇所にスプレーをしていました。

 

『76』

 

そのランナーが現れたのは、完走予想なら約5時間のランナーが走っているゾーン。

 

1人の男性が、スプレーをしている僕の前で立ち止まりました。

 

「腰が…。腰が痛いねん…」

 

その男性ランナーはそう言うと、Tシャツをまくりながら僕に背を向け、

 

痛めている腰を僕の方に突き出しました。

 

「腰ですね!!了解です!!」

 

僕はその男性ランナーの腰にコールドスプレーを吹きかけました。

 

男性は給水ボトルのベルトを腰に巻いているので、

 

ベルトの上、

 

ベルトの下、

 

腰を満遍なく網羅できるよう気をつけて、スプレーを噴射しました。

 

「お父さん!!頑張ってるね、ゴールまでもうちょっとやで!!」

 

スプレーしながら話しかけました。

 

「うん」

 

「お父さん、おいくつですか?!」

 

「…76」

 

「なっ…」

 

僕は二の句が継げませんでした。

 

そのランナーがお年を召されていることは一目でわかりました。

 

会話の流れで何気なく聞いたその数字。

 

僕より約20歳も年上。

 

その方が、激坂で有名な奈良マラソンを走り、

 

5時間で完走できるグループで走っている。

 

「腰が痛い」とおっしゃっているものの、

 

両足はしっかりとしていて、決してふらつくことはない。

 

ここはコース最大の難所・白川峠を越えた場所です。

 

このランナーさんは、あの急坂を登りきって、

 

下りきって、なお、

 

両足は震えずに地面を捉え、しっかりと立って、僕に腰の痛みを訴えているのです。

 

〝なんて脚力だ…〟

 

〝齢76にして、毎日ランニングしているんだろうな…〟

 

〝そうしないとこの場所に、こんな時間にたどり着けるわけがない…〟

 

僕はいろいろなことを考えながら、その男性ランナーにスプレーをかけていました。

 

男性のふくらはぎにスプレーをします。

 

その部分は贅肉が皆無、とても細く、

 

しかし、筋肉がしっかりとついた、理想的なふくらはぎでした。

 

「腰を…。腰を、もう一回、お願い」

 

その男性ランナーさんがそう言ったので、

 

「はい!!」

 

僕はその缶の残りを使い切るまで、そのランナーの腰に、スプレーを当てていました。

 

言い訳

 

僕もかつてこの大会を何度も完走しました。

 

でも心房細動を2回やってしまい、

 

もうマラソンは走らないと決めました。

 

でも1kmを10分程度で走る、ゆるゆるランなら走ることができます。

 

でも1kmを10分で走っても面白くもなく、

 

最近はいろんな言い訳を見つけてランシューを履かない日が続いています。

 

「ありがとう兄ちゃん、楽になったわ!!」

 

男性ランナーはそういうと、

 

とても76歳とは思えない身のこなしで僕の前から離脱すると、

 

完走ボタンをポンッと押して、

 

走り去って行きました。

 

その彼を見送りながら、

 

自らの怠惰な日々を思い、

 

なんだか僕は、

 

いてもたってもいられない気持ちになりました。