この「お方さま・再起動!(リブート)」シリーズは、2016年にお方さまがさが桜マラソンのフルを走るまでを描いている。
僕たち夫婦にとって、さが桜マラソンというのは、思い入れのあるマラソン大会だ。
3年前、初めてさが桜マラソン2014に参加したのは、ただ単に、応募方法が先着順だったからだ。エントリー開始と同時にクリック合戦に参加し、無事、エントリーができたから出場しただけ。
この時、お方さまは、一人で応援に回っていた。ラン友の旗を持ち、早朝から開いているホームセンターで旗をつけるポールを購入し、さが桜マラソンの目玉コース・吉野ヶ里遺跡へと移動し、そこで旗を振って応援してくれた。
とても思い出深い大会となったのは、そういった事情。
それだけではない。
翌2015年。われわれ夫婦は、「絶対に」さが桜マラソンへ参加しなければいけなかった。
それは、Lさんと交わした約束のためだ。
関西の素人ランナーの中では、とても有名人のLさん。
ちょっと強面だが優しい人柄で、親分肌で、信頼の厚い人物。
僕はそれほど深い交流があったわけではない。
が、2013年の京都マラソンで、超がつくほどの方向音痴の僕がラン友の応援団長に任命された時、Lさんも応援に参加してくれた。
僕は事前に下見をして、応援団を導いてはいたが、Lさんにしてみれば、方向音痴が導く応援経路には、少なからず「物申したい」部分もあったと思う。
しかし、彼は一言も文句を言わず、最後まで僕についてきてくれた。
それだけではない。
2014年の京都マラソンは、僕は当選したのでランナーとして走った。その年、やはり応援団に参加してくれたLさんは、
「去年、団長してくれた博っさんが作ってくれた応援コースや。今年もその通りに移動しよう!」
と、最初に宣言してくれた、とお方さまから聞いた。
ランナーとして走る僕をおもんばかってくれて、僕が作った通りの応援ルートで、応援団を率いてくれたそうだ。
何気ない思いやり。男気。
彼が関西ランナーの間でなぜそれほど信頼が厚いのか、とてもよく理解できた。
それが2014年3月の話。
その一ヶ月後、僕たちはランナー同士でさが桜マラソンで再開する。
そして…
それが、最後となる。
Lさんはその4ヶ月後、帰らぬ人となった。
佐賀で、その時、彼と交わした約束。
いや、約束と言えるかさえわからないけど、ずっとずっと、僕の頭を悩ませていた、最後に交わしたあの言葉を、どうしても実現させたかった。
以下は、2015年のさが桜マラソンを走り終えた時に、FBに綴った僕の思いです。
「ほんだら、また!」とLさんが言った。
「うん、ほんだらまたね!」と僕はいった。
去年。2014年4月6日。さが桜マラソンを走り終え、ゴールゲートの前で記念撮影を終えた後の会話だ。
どこにでもある、社交辞令。深い意味などありはしない。
でも、それが、僕とLさんとの、最後の会話になってしまった。
もし、最後になるって知ってたら、男同士でも構うもんか、強くハグでもしてたろう。
もし、もう2度と会えないと知ってたら、もっともっと、色々、話をしただろう。
なんの意味もない、社交辞令が最後の会話になってしまった。
この一年、ずっと、この会話がアタマにこびりついて離れなかった。
たとえ社交辞令でも、Lさんと僕との最後の会話。最後の約束だ。
「ほんだら、また」
また、なんなのだろう?また、会おう、に決まってる。でももう会うことはかなわない。
僕はアホやから、あの言葉の意味を見つけることができない。
Lさんに、そんなことで悩んでいるなどと知れたら、「めんどくさいヤツやなあ!」と怒られるだろうな。
だから、僕はここに来た。
「ほんだら、また!」この言葉のしめすたった一つの意味は、「また、さが桜マラソンで会おう」しか、僕には考えられなかった。
怪我のため、京都マラソンをDNS*1した。上半期最大の目標、サロマに向けて万全に怪我を治したい、というのが表向きの理由だったが、本当の理由は、「さが桜マラソンに出ないわけにはいかない」からだ。
Lさんとの最後の約束を果たしたかったからだ。
ランそのものは、とても褒められたランじゃなかった。25km過ぎたらもう脚が売り切れ、4時間50分もかかってしまった。
そもそも、今日の降水確率は直前まで100%やったんやで?それが、一滴もふらなかったばかりか、太陽に照らされてめっちゃ日焼けしてしもた!
Lさん、アンタが天気、晴れにしてくれてんやろ?そやないと、雨100%の予報が快晴になんか、なるわけないやん!
ほんだらさ、湿度とかもさ、エエ感じに調整してーや!(^^;;湿度90%やで、気温23度て、サウナかっ?!ちゅーくらい汗かいたっちゅーねん!
めっちゃ、ホンマ、めっちゃしんどかったけど、DNF*2なんて選択肢はなかった、這ってでもゴールしやなアカン、最後の方、もう、メタメタなフォームやったけど、ゴールしたで!
…。そして、脚を引きずりながら、更衣室にもどった時…。
去年、記念撮影をした、あのゴールゲートがあった。まったく同じものが。
涙があふれた。
更衣室で、涙を拭きながら着替えた。
タイムは、メタメタやった。
けど、Lさんは確かにここにいた。
約束、果たしたで。^_^