子供の頃、2年に1度の楽しみだったスターウォーズシリーズが…。
スターウォーズの版権がディズニーに渡って、レイの3部作が作られていますが、さらにその間にスピンオフも作る、と言う流れに。
これで2年に1度と言う流れは、1年に1度、と言う流れに変わりました。
商業主義だとか、質の劣化だとかいろいろ言われていますが。
イヤなら見なければいい。
あの世界観を共有する物語をみることは、ファンにとってはこの上なく嬉しいことです。
SF映画のガンマン
さて、スピンオフの第2弾はハン・ソロが主人公。
当代イチの人気キャラで、なぜ彼の物語が第1弾ではなかったのだ、と思わずにはいられない、魅力溢れる主人公です。
宇宙の物語なのに、西部劇のガンマンのカッコウ。
自分だけを信じて生きてきたアウトローで、
ニヒルで自己中心的な顔を見せながら
男気に溢れ、愛を貫く人格。
驚くべき、名前の由来
ハン・ソロという名前。それはジョン・スミス的な名前ではなく。
「マドンナ」とか「プリンス」みたいに、「ハン」しか名前がなかった彼が。
帝国軍に就職する際に、苗字部分がないと登録できないので、
「ハン・天涯孤独」
という意味で即興でつけられた
「ハン・ソロ」
という名前だった、という事実。
ハリソン=ハンの復活は、ハンの最期でもあった
ハリソン・フォードは後年、ハン・ソロ役を毛嫌いしていたのは有名な話で。
彼にハン・ソロのフィギュアを渡そうとしたファンに露骨にイヤな顔をしたので、横にいたキャリスタ・フロックハートが必死にフォローした、と言うエピソードが世界中を駆け巡ったことがあり。
だから彼が「フォースの覚醒」に参加したと言う話を聞いたときはとても驚きましたが。
でもそれは、ハン・ソロの死で終わる物語。なんか、納得したものでした。
蘇るハン・ソロ
本作は若き日のハン・ソロを描いた物語。
1度、死んだ主人公の若かりし頃を描き、彼が蘇ったかのような印象をファンに与えてくれる、というレトリックは古くからあって。
「明日に向かって撃て!」のラストで死んだ、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドは…。
「新・明日に向かって撃て!」で、その若かりし頃を描いたことで、あたかも彼らが蘇ったかのように思えたものでした。
本作も、ファンにとっては、「フォースの覚醒」で死んだハンが蘇ったかのような錯覚を覚えさせてくれる、嬉しい物語です。
全米での評価はイマイチだった、と言うネガティブな話しか聞こえてこない本作。
早速自分の目で、蘇ったハンソロの物語を見にいきました。
最大の感想=主役が弱い!!
主役が…。ハリソン・フォードに比べて、弱いかなあ…。
本作の評価が分かれてしまう最大の要因はやはりハン・ソロ役にオールデン・エアエンライクという俳優を起用したことでしょう。
彼は「ヘイル、シーザー!」で田舎弁丸出しの西部劇俳優を演じたときはとても軽妙で、才能を感じさせてくれましたが。
ハン・ソロではないかなあ…。
どうしても、その思いが頭から離れることができませんでした。
改めて、偉大すぎるハリソン・フォード
「インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの伝説」で、インディの息子役は当時超売れっ子だったシャイヤ・ラブーフが演じました。
彼の、ちょっとぶっ飛んだ感じは確かにハリソンと渡り合っていましたが…。
その後の問題児ぶりで、もはや映画界を追われる存在になってしまい…。
若手で、かつてハリソン・フォードが演じた役を演じられる俳優がいないのでしょうか…。
改めて、彼の偉大さを感じずに入られません。
その部分にさえ目をつぶれば、スターウォーズのDNA
そのほか、いくつかの「?」な部分もありましたが。
総じて、本作は反乱軍が組織される前の、帝国軍の圧政によるダークな世の中で、
ハッタリだけで世の中を渡ろうとする、愚かだけど愛すべきキャラクターの成長物語です。
物語の流れは…。
・分かれた恋人との再会を夢見て、帝国軍の歩兵部隊で地獄を見ながら、
・ワルを見分ける選球眼で、同類のベケットの部下になり。
・チューイと出会い、
・ヤバい仕事に手を染め、
・ランドと出会い、ファルコン号と出会い、
・激ヤバな仕事に手を染め、
・ハッタリ、サギ、裏切りが横行する世界の中で、出しぬき、出し抜かれ、を繰り返しながら、
あの愛すべき悪党はいかにして生まれたのか、が丁寧に描かれています。
既知のもの
銃
ハン・ソロ愛用の、特徴ある形の銃ですが。
あれを初めてハンが手にするシーンが描かれています。
ベケットが所有するライフルのパーツを少しずつ取り払い、携帯できる大きさにしたのがあの銃で、それをハンに渡す場面です。
彼は以来、ずっとその銃を使っているわけですね…。
チューバッカとの出会い
チューイとの出会いは衝撃的で。
脱走兵として捕まったハンが、ちょうどエピソード6でルークが怪物の餌にされそうになったシーンを彷彿とさせるような地下牢に入れられ、チューイの餌にされるはずだったのでした。
片言ながらチューイの言葉を話せたハンが、手を組んでこの牢から脱出しよう、とチューイに共闘を呼びかけ、脱出するのですが。
あの牢にはいくつかの死体があって。
つまり、チューイはハンより先に入れられた何人かは殺していたわけで…。
少し、チューイのキャラクターとは違うかな、と「?」に思った場面でした。
でも「最後のジェダイ」ではあの鳥みたいなやつを食べてたシーンもあったし、そういう一面もあるのかなあ。
ランドとファルコン号
激ヤバ仕事を成功させるために必要な速い宇宙船を求めて入った、ヤバそうな賭博場にランドはいました。
彼の所有する船を入手するため、ポーカーみたいなゲームをしますが、ランドのイカサマで負けてしまうハン。
しかしランドもカネが必要としていたので、この仕事に一口乗ることになり、ファルコン号が初めて登場します。
最初は少しだけ形が違っていましたが。
徐々に、見慣れた形になっていく過程が見ものです。
初見のもの
幼なじみ・キーラ
共に生まれ育った劣悪な環境から脱することを目指していたのに、脱走時の手違いでキーラだけが取り残されてしまいます。
ハンは彼女を救うことだけを考えて命がけの世界に身を投じますが。
激ヤバの犯罪組織の長・ドライデン・ヴォスの副官となっていた彼女と再会し。
狂ったヴォスの手から彼女を奪還すべく策を弄しますが。
意外な結末が待っていました。
ベケット
騙し、騙されのハンの世界の師匠とでもいうべき人物で。
最近こんな役ばかりのウッディ・ハレルソンが安定の味を出しています。
西部劇のような大列車強盗を計画し。
敵対するギャング団の妨害を受け、愛する女性を含めた仲間を殺され。
狂った犯罪組織が絡んだ仕事だったので、ハンには逃げるよう説得するのに…。
なぜ、あのラストになるのだろう…。
この辺りの整合性も、やや「?」ではありました。
ドライデン・ヴォス
狂った犯罪組織クリムゾン・ドーンのボス。全身から狂気のオーラを醸し出す、恐怖の人格。
際立ったキャラなので、もっと出演場面が多ければ、さらに緊張感が増したのでは、と、登場シーンの少なさが残念だったキャラクター。
L3-37
スターウォーズの世界観に不可欠な、その作品特有のロボット。
「ローグワン」ではK-2SOでした。自信に満ち、人間を見下すような態度は他の作品にはなかったロボットで、「ローグワン」の世界をテンポよく味付けしていました。
L3は女性型のロボットで、なんとランドは彼女を愛しています。
ヒトに似せたロボットを愛するならわかるのですが。
L3-37はどう見ても、スターウォーズ世界の中のドロイド。
機械のカタマリです。
そんなL3を愛する、という、理解しがたいランドの人格が、物語に深みを与えます。
L3もそのことに気づいていて、ファルコン号の操縦席でL3がキーラと女子トークをする場面は最高に笑わせます。
ロボットの権利を強く主張する彼女はウーマンリブの闘士のよう。
彼女が撃たれた時、命がけで助けに行くランド、それを援護するハン。
そして、まるで人間が死ぬように、ランドの腕の中で息絶えるL3。
悲しくも美しいシーンでした。
L3こそ、もっと登場して欲しかったキャラクターでした。
クラウド・ライダーズ
ベケットが恋人のヴァルやハンと共に大列車強盗を企てた際、お宝の横取りを目指して登場する盗賊団、クラウド・ライダーズ。
結果、ヴァルを始め、ベケットの仲間は死んでしまい。
さらにはファルコン号に追跡装置を仕掛け、ハンたちが命がけで手に入れたお宝を、さらに強奪すべく現れる、憎っくき憎っくき存在。
しかしながら、その正体は…。
あっと驚くものでした。
ネタバレとして、ダース・モールが登場することは記しておきますが。
ダース・モールの登場などよりも、僕としてはこのクラウド・ライダーズの正体の方が驚くべきものでした。
映画の細かい描写
ハンがベルトに手をかけ、ドアにもたれかかって立ってる姿や、
銃撃戦でハンが銃を撃っている場面など、
いずれも、スターウォーズで見たことがあるシーンが使われていて。
最初は少し、形が違うファルコン号が、先端の脱出ポッドを吐き出してお馴染みの姿になったり、チューバッカとの友情の育まれ方だったり、
死んだはずのハン・ソロが戻ってきてくれたことは、純粋にファンにとっては嬉しいことで。
あー、だからこそ。
もう少し、ハリソン・フォードの演じたハンの面影がある俳優がよかったなあ!!