妻:日本のデブ業界にはさあ。
夫:そんな業界はないで。
妻:スキマ産業があるで。
夫:ほう!なになに?
妻:それは、「エレガント・デブ」や。
夫:エレガント・デブ…
妻:デブはスーツが体に合わへんやろ?そやしエレガントなデブがいてない。
夫:なるほど。
妻:ギリで葉加瀬太郎くらいや。
夫:確かに。
妻:アメリカや、イタリアにはいてる。デブでも、スーツをビシッときこなしたエレガントなデブが。エルキュール・ポアロなんかその代表や。ポアロはベルギー人やけど。
夫:確かに。デブでスーツは難しいねん!腹周りに合わせたら、腕の長さと丈の長さが異様に長くなる。ある程度、修正は可能やけど、修正にも限度があって。やっぱり修正したスーツって、遠くから見ると、チンチクリン感が否めない。
妻:そやろ!!
夫:そもそも、ワイシャツからしてそう。首がきっちり閉まってないワイシャツほどしまりのないイメージはないけど、デブは首が太いから、ちゃんと閉まるワイシャツがない。だからスーツどころか、ワイシャツの時点でエレガント感が出されへん。
妻:首がしまれへんワイシャツを、ネクタイでごまかしても、ぜったいわかるもんな。だらしな具合が。
夫:首に合わせると、今度は腕がめっちゃ長くなる。指まで隠れるワイシャツや。そんなん、漫画の登場人物しか着ぃひん!!
妻:つまり、あつらえるしかないわけや!!
夫:そう!!すると、値段が高くなるやろ?!
妻:ウンウン。
夫:ところが!!デブにとって、ワイシャツは消耗品やねん!!
妻:「数」がいる、っちゅーことやね?
夫:そう。ワイシャツは寒い日でも、デブ特有の高温な体温から、熱と汗がにじみ出るやろ。汗をワイシャツはベッチャリと吸収する。でもスーツやさかい、ジャケット着とかなあかん。吸収した汗を放出することができず、こもる。
妻:うわぁ〜。
夫:こうしてワイシャツはどんどんベチャベチャになっていく。気がついたら、セクシー女優の「濡れたTシャツ」状態で、裸がスケスケになってるねん。ジャケットの下で。
妻:この世で最も見たくないものやなあ…
夫:だからオレはカバンの中に替えのワイシャツ1枚、夏場は2枚と、会社のロッカーにも替えのワイシャツを置いて、ほぼ毎日、使い切ってた。デブのワイシャツ消費量は、普通の人間の三倍や。
妻:それはきついな。
夫:つまり、ワイシャツにお金をかけてられへんねん。首がきっちり合わなかろうが、適当な値段で妥協するしかないねん。
妻:なるほど。
夫:結果的に、エレガントなデブは街では見かけない、という結論やな。
妻:痩せなはれ。