2012年3月24日。FB投稿分です。
結論から申しますと、妻は最後の試験に合格します。なんと、首席で。
自分の妻を、誇りに思った物語です。
妻は高校を卒業後、すぐに今の職場に就職しました。もう20年以上、同じ仕事についています。
いつもはスチャラカ奥さんの妻ですが、職場にはいると一転します。
その仕事では、クレームを言ってくるお客様にはメッポウ弱い職場です。男性社員でさえ、明らかに理不尽なクレームでも受けざるをえないような職場。
でも妻は、理不尽客に対してはキッパリと「できません」と言い放つ、職場内で唯一の人間です。そのため、怒った客に襟首を掴まれ、振り回された経験もあります。それでも職場を守るために主張を曲げません。大したヤツです。
数年前、妻の職場であるポストが新設されました。いわゆる、バイヤーの補助的なポストです。
キャリアでも、職業的知識でも、保有してる資格でも、そして仕事に対する情熱でも、妻を置いて他に適任者はいないポストです。
妻は毎日、
「4日後に発表やねん」
「あと3日したら発表やねん」
と話題にしていました。僕が、
「お前は選ばれたいのか?」
と聞くと、
「絶対イヤや!あんな仕事させられたら、仕事ばっかり増えてしまうやん!」
と言っていました。
でも僕の目には明らかでした。
妻が、その仕事をやってみたいことは。
そして発表の日。帰宅した妻は僕の目を見ずにこう言いました。
「…A子が選ばれたわ」
「そうか。あの子は大学でてるからな」
「うん…あのな…」
「ん?」
「ホンマはな…やってみたかってん…」
「うん…。分かってたよ」
「…そっか。…ヒロシは何でもお見通しやな!」と言って、妻は力なく笑いました。
その夜は、とっておきのおもしろ話をたくさん言って、妻を笑わせました。
この半年間、妻は仕事上の資格のうち、かなり高度な資格の取得に挑んでいました。その資格があれば、講演などを行う人もいるくらいの資格です。
半年間で三度、一週間の東京講習を受けました。講師の実演を、スマホで動画撮影してる受講者を見て、機械オンチだけどiPhoneに変えました。
大量に出される論文やレポート、実技なども必死でこなしていました。府立中央図書館に朝から晩まで入り浸り、参考文献を読みあさり、借りてきて家でも夜遅くまで勉強していました。
ワードやエクセルが苦手なので使い方をレクチャーしてあげたこともありますが、計測した数値は細かく、僕なんかにはチンプンカンプン。論文も、経験豊かな人間の視点と細かいデータでとても説得力のあるものでした。
昨夜の9時の新幹線で、最後の東京講習から帰ってきました。本当はクルマで迎えにいきたかったんですが、夜の8:30まで仕事だったので、地下鉄で新大阪まで行きました。
向こうのホテルで少し体調を崩したと言っていたので心配したのですが、妻はとても晴れやかな顔をしていました。
提出したレポート類は、80点のものもあれば満点を貰ったものもあったそうです。でも50点のもありました。
結果が分かるのはまだ少し先。「半分は落ちるねん。でも追試もあるねん」
重いトランクを持ってやると、妻は
「迎えにきてくれて、ありがとう」
と言いました。
僕は「いいよ」と言いました。
家に帰り着くまで、妻は何度も、迎えにきてくれてありがとう、と僕に言いました。
そのたび僕は、いいよ、と言いました。