去年、まだ15kmしか走ったことがなかったお方さまを鍛えるために走った、ひらかたハーフマラソン。
とても楽しい大会だったので今年もエントリーしたのは、去年の9月20日。
心臓カテーテル手術を受けた、ちょうど一週間後。
まだ、ランニング練習の再開すらしていなかった頃。
でもきっと、1月9日にはハーフくらい走れるようになってるはずだ!
と思ってエントリーした。
もちろんお方さまと二人でエントリーしたが、お方さまはどうしても外せない用事ができたため、今回はDNS*1
スタートは10:30。9:30到着のはずが…
スタート地点の最寄駅が京阪電車の「枚方公園駅」。なのに、なぜか枚方公園の次の駅「枚方市駅」だと思い込み、乗り過ごし。慌てて逆方向の電車で戻る、という失態を犯す。
1時間前到着で予定を立てておいて助かった。結局、9:45くらいに現場に到着。
まず大会本部へ行き、今回DNSとなったお方さまのゼッケンを返却。計測チップがついているので、全員、チップは返却しなければいけないのだ。
心臓にトラブルを抱えているため、心拍計は必須だ。あと、給水ボトルを腰に下げる。少しでも心臓への負担を減らすべく、水はこまめに補給しなければならない。
天気は曇り、気温は10度。走りやすい天候。
準備が整った頃、「枚方キング」の異名を持つ福島さんからメッセージが来る。
この御仁、親分肌で、毎週土曜日は近所の子供達を公民館に集めて映画を上映したり、教室を開いたりするイベントの世話役をはじめ、様々な世話役を買って出ている人で、みんなからの信頼が厚いのだ。
僕が入院した時でさえ、お見舞いに来てくれた。
福島さんはエントリーはしていないが、家が近所なので応援に来てくれているのだ。去年も来てくれた。
さらに!遠い南の島で、船に乗っているはずの清純兄さんまで、決して大きいとは言えないこの大会で再会できた!嬉しい!
▼清純兄さんと福島さん
いよいよスタート時間が近づいて来た。
福島さんがそわそわし始めた。
「オレも走ろうかな…」
最初は冗談かな、と思っていたが、福島さんのいでたちを見たら、完全に戦闘モード。いつでも走れる服装で応援に来ていた。
CW-Xのタイツ。背負っているリュックもよく見たらトレラン用リュックだ。上着も、ボディメーカーのウインドブレーカー。完全に、走るスタイルだ。
ひらかたハーフマラソンは、淀川の河川敷を走るマラソン大会なので、特に交通規制などはない。
だから参加者の横に、ゼッケンをつけていないランナーが走っていても問題はない。計測されないだけだ。
スタートと同時に、福島さんも走り始めた。
スタート〜5km
▼大好きな森脇さんが、スタート地点で檄を入れてくれる。
心拍数は110bpm〜115bpmあたりを目安に。
▼スタート直後、1km経過。僕の背後。ほぼ最後尾。
その心拍数だと、今までの経験では、調子が良い状態でキロ7:10、悪いとキロ8:00を超えてしまう。
制限時間3時間のこの大会、キロ8:30で制限時間のギリギリゴールになる計算だ。
ところがスタート直後は、信じられないくらい調子が良い。110bpmでキロ7:00ジャストだ。
だが調子が良いからといって、飛ばしすぎるといろんな意味で危険だ。
・まずそんな速度で21kmを走り通す脚ができているとは思えない。ずっとキロ7:30〜8:00のペースで、4kmを走る練習しかして来ていないのだ。
・もう一つは心臓への負担。心拍数が110bpmなので心配ないかもしれないが、何かあってからでは遅いのだ。
僕は用心して進んだ。ほぼ最後尾だが、そのことは気にするまい。
福島さんがいつのまにか並走していた。「調子、どうですか?」
「ちょっと良すぎなんです」
「良いですやんか」
「いや、慎重に進みますわ〜」
5km〜10km
心拍状態は依然して良好。他のランナーはというと、この辺りからがくんとスピードが落ち始めるランナーが散見される。
あんなに前を走っていた、紫のウエアを着た美女ガーも、いつのまにか歩いていた。
ジーパンで走っている兄ちゃん。去年もジーパンランナーはいたが、今年の兄ちゃんは、尻のポケットに大きな今風の財布まで入れている。
いくら何でも、そのスタイルは、ハーフマラソンを甘く身過ぎてませんか?(^_^;)
そのジーパン兄ちゃんは、10kmを前にへばっていた。僕が抜き去ると、しばらくして背後からダァ〜っと加速して抜き返し、3mほど前に出るとあっさりスピードダウンし。大きく肩で息をしながら減速。再び僕が抜く。
それを何度か繰り返すと、もう背後からくることもなくなってしまった。
その間、なぜか福島さんはなぜかずっと僕に並走してくれていた。二人でとりとめもないことを喋りながら、ずっと走っていた。
福島さんも、ダイエットで苦しんでいること。糖質の摂取に気をつけていること。
にもかかわらず、福知山マラソンではサブ4を達成したこと。
沖縄では12月で28度という凄まじい状況の中でマラソンをしたこと。etc。
「あれ!〇〇(関西で有名な某企業)の社長ですわ!」
ええっ?!確かに!関西人なら誰でも知ってる、有名な即席うどんの名前が入ったTシャツを着た大柄な男性が前方を走っていた。
福島さんがスピードを上げ、社長と並走し、何か言葉をかけていた。
社長さんはマイペースで走っている。我々は社長さんを後にした。
▼ずっと伴走してくれる福島さん
徐々に、ペースは落ちてきた。心拍数110bpmを維持するためには、キロ7:30くらいになってきた。でもまだまだ好調の部類だ。
10km〜15km
折り返して着たさとじゅんが声をかけてくれた。「博っさん!頑張って!」
「おお!さとじゅんサンキュー!!」
さとじゅんはかなり調子が良さそうだ。
僕の方は、心拍数を維持するには、キロ7:40くらいのペースになってきた。
脚はぜんぜん残っている。あとは無理せず、慎重にいこう。
「ここで待ってますわ!」
突然、福島さんが止まった。
え?どうしたん?
すぐに理由がわかった。目の前が、折り返し地点なのだ。折り返し地点には給水場と給食場がある。
福島さんは、お金を払ってエントリーしたわけではないので、給水・給食などはできない。だから手前で止まったのだ。
去年は給食には何も残っていなかったが、今年はチョコレートとアメちゃんが残っていた。
僕はアメちゃんをポケットに入れ、用意していたハニースティンガーの封を切って、口に流し込んだ。実はお腹がペコペコで、小さなチョコ程度では賄えないほどだったのだ。
ハニースティンガーの甘さを水で洗い流し、再び福島さんと合流。
もうこの人、最後までオレに伴走してくれはるつもりなんや…
そう思うと、妙に嬉しかった。
縁起でもない話だが、もし、東京マラソンの時の松村邦洋みたいに、ここで心臓発作を起こしても、大声で助けを呼んでくれる人がいるんだ、と思うと、心強かった。
周囲で、走り続けているランナーはほとんどいなくなってきた。ほぼ全員が歩いていた。
僕と福島さんは、キロ7:40という、一流ランナーからしたらジョギングにも満たないペースながら、止まらずコツコツ走り続けている。
そんな僕たちに追随するランナーが出てきた。僕たち二人の後ろにぴったりと張り付いてくるランナーが。
知り合いかな?と思って振り向いたが、ぜんぜん知らない人だった。このペースならついていける!と思い、張り付いたのだろう。
残念ながら、彼もしばらくするといなくなっていた。
15km〜ゴール
福島さんと喋りながらの、ハーフマラソンの旅。
とても楽しく、時間が経つのがあっという間だった。
気がついたら…あと4km。
この辺りは、ほんの少しだけ、心拍数が上がっている。僕のMAX値は118bpmだが、それくらいになっている。
キロ7:40で心拍数118bpmを維持していた。
それはいいのだが、ショックだったことがあった。
脚が、痛い。
脚が、残り少ない!
1年前までは、毎週土曜日は30km、日曜日は20km走っていた。毎週だ。
20kmの距離を走って足が痛いと感じたことなどなかった。
去年の8月にサロマを42kmでリタイアして以来の、20km越え。18km地点でもう脚が残っていない、と感じている。
ランナーとしての衰えを痛感した。
しかし、そんなことで気を落としてはいけない。
衰えているのはわかっている。また、休日に30km+20km走っていた頃に戻ろうと思っているわけではない。
心臓を手術して、再び走っているわけだが、以前と同じ姿に戻るべく走っているのではない。
心臓を手術したら、こんな走り方がある、という形を探しているのだ。
18kmで脚が残り少ない姿は不本意だが、まだ道は半ばだ。
あの日、手術室に入った時、この姿を想像できただろうか?
今、僕はレースを走っているのだ。確かに関門もない、制限時間3時間という決まりだけの、ゆるいレースではあるが。
志を同じくする者たちと、同じ道で汗をかくのはとても楽しい。この場に戻ってこれたのだ。
もちろん、早く走れるに越したことはないが、走ることさえできない仲間たちもいる。
走ることができる。
なんて幸せなことだろうか。
あと1km。
「ゴールシーン撮るんで、先に行きますね!」
福島さんがスピードを上げた。
去年、お方さまと、最後の1kmはスパートをかけた。
しかし、心拍計はMAX値を示している。
おまけに、脚も残り少ない。
それでも、だましだまし、速度を上げた。
さとじゅんがいた。「博っさん!あと100メートル!!」
▼絶好調だったさとじゅん。
さとじゅんはゴールして、着替えて、味噌汁飲んで、ここまで歩いてきたんや!めっちゃ調子良かったんやなあ!
ゴール手前、福島さんがいた。カメラを構え、僕を撮ってくれた。
▼ゴールの瞬間。福島さん撮影。
やはり、大会は楽しい。
同じ道を走っているランナーは愛おしい。
ぶっちぎっていくエリートランナーより、
尻に財布を入れたジーパンで走る、ダメランナーの方が、僕に近い存在みたいで、愛おしい。
そして友よ。本当にありがとう。
僕と一緒に走ってくれた友よ。
なんども僕に声をかけてくれた友よ。
遠い南の島からやってきて、久しぶりに会えた友よ。
そしてFBなどでずっと応援してくれた、たくさんの友よ。
本当にありがとう。
ダメダメランナーですが、これからもよろしくお願いします。
▼完走証
▼心拍数。後半、少しだけ上がっているが、今日の状態は出来過ぎだ。
▼3.5kmと13kmで折り返し、あとは延々と川沿いを走るだけのコース。
▼ありがとう。ひらかたハーフマラソン。
*1:Did Not Start。スタートせず棄権すること