36km地点でランナーの到着を待っていた時。
スマホのテレビで状況を確認していたさとじゅんが、
「30kmを通過して…。キルワ選手と…。日本の108番が、競り合っているみたい」
と報告をくれた。
「108番って誰?」
と聞くと、
「安藤選手…とか、言ってます」
「誰??」
と、36km地点は一時騒然となった。
屋外の騒音の中では、スマホテレビの音声などうまく聞き取れない。フェイスブックの書き込み等を見ていると、この選手はどうやら今回が初マラソンらしい、との情報が漏れ伝わってきた。
初フルの日本人が、オリンピック銀メダリストと、30kmを超えてなお競り合っている?!
これは楽しみだ!
36km地点にたどり着いたトップ選手はキルワ選手だった。彼女は一人でやってきた。
▼iPhoneの写真情報によれば、このシャッターは11:10:27に押している。
しかし!わずかに後方に、黄色いウエアは見えていた!その人影はグングン大きくなる!すごい速さだ、キルワ選手に負けてない!
▼同じく、このシャッターは11:10:36に押している。36km地点でわずか9秒差だった。
すごい、もしかしたら逆転もあるかも?!
というタイム差であったが…
タイム差のことなんかよりもわれわれが驚いたのが…
安藤選手の走り方だった!
黄色のウエアが、どんどん近づいてくるにつれ…
彼女が両腕をだらんとたらしているように見えた。まるで、「あしたのジョー」の力石徹の「ノーガード戦法」の構えのように。
僕がとっさに思ったことは、
「腕なのか、上半身なのかわからないが、どこかを痛めたのではないか?」
ということだった。
しかしすぐに思い直した。そんなはずはあるまい。世界最高の走りに食らいついて走っているのに、どこかを痛めて食らいつけるはずがない。
あれが、彼女の走り方なのだ!
撮った写真を、拡大などせず、そのまま貼り付けてみよう。
2016年大阪国際女子マラソン、36km地点の福士選手
2017年、ほぼ同じ地点の重友選手
同じく、吉田選手
写真では判別しづらいかもしれないが、やはり腕の使い方がまったく他の選手とは異なっていた。
後から聞いたところでは、似た走り方の選手は、どうやら他にもいらっしゃるらしい。(このすぐ後に来た、清田選手も、実は少し似ていた)しかし、安藤選手の走法はとにかく極端だった。
さて、あの走り方を、ドクはどう見たのか…
僕はそれが気になって仕方がなかった。
最近は、本職の、研究所での研究が忙しすぎて、ほとんど外界と没交渉状態にあるドクに昨日、メールを入れた。
ぜんぜん関係ない話ですが、名古屋ウィメンズはご覧になられました?
日本人一位だった安藤選手のあの独特な走り方を、ドクはどう見られたのかが知りたくて知りたくて!!
お時間あるときでいいので、ぜひ教えてください!
という僕のメールに対して、帰って来た返事は…
すみません。みてないでつ・・
ええーー!!(^◇^;)今日本中で話題になってるのに…
よっぽど研究がお忙しいんだ…
と思って諦めかけていたところ、8分後に再びメールが来ました。
いまYoutubeでみました。あれはあれで良いフォームですよ。推進力は体幹から得ていますし・・・。
独特に見えるのは腕振りでしょうけど、彼女のフォカスは流れた脚を素早く戻して体軸下に接地することなので腕を曲げると腸腰筋の反動を得にくいからだと思います。
基本は体軸下の接地とショートストライド・ハイケーデンスに充実して上下の揺れを最小限に抑えています。スネから膝付近の負荷は高そうなので筋力補強は不可欠でしょう。
恐らく彼女は踵〜つま先のロールでリズムを取っている印象をうけました。
このような運びですと確かに膝辺りの負荷は高まりますけど、足首や脹脛の負荷は弱まります。
相反する走りといえば吉田選手と思います。彼女は足首の負荷が高い走りです。それぞれ一長一短があることですので一概には言えません。
安藤選手の双方はとにかくショートストライド・ハイケーデンスに尽きる走り方です。
と、8分の間に分析・文章化してくれました。
ショートストライド・ハイケーデンス。
すなわち、小股で、歩数が多い走り方。
スネから膝にかけて負荷が高く、足首やふくらはぎの負荷は弱まる走り方だそうです。確かにそうですね。
彼女の4枚目の写真なんかを見ると、けっこう歩幅も大きいようにも見えるけど、他の選手と比べれば圧倒的に短いんでしょうね。